表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/47

☆第4クォーター 参戦☆

龍輝「あいつら・・・っ!!」

大河「アジトにでも帰ったんじゃなかったのっ!?」

 松森率いるフード3人組。そいつらは再び姿を現すと、容赦なくみかんを連れ去る為に行動を開始する。

松森「そんじゃみかんはん。ワイらと一緒に来てもらうでぇ」

 真っ直ぐ、みかんに迫る松森。

 だが、その間に迷わず割り込み、剣を構える者が1人。その剣は小刻みに震え、決して格好良くはないかもしれないが、それでもその行動は格好良い。そいつは、

宇治「み、みかんちゃんは渡さないぞ・・・!!」

 宇治だ。

 本人は必死に抑えているが、足も震えているのだ。それは服のおかげで辛うじて見えないのだが、やはり剣は丸見えだ。

松森「なんや宇治はん?あんさんも来るか?ま、ホテルやなくて戦場やけどな。それとも・・・」

 松森は剣を抜く。その剣は鎌のような形状を成していて、不気味なオーラを纏っている。

松森「・・・ここで死ぬか?」

 その鎌状の剣にじと~っと舌を這わせ、ニタァっと笑う松森。

松森「ここでも。街エリアでも死ぬんやで。――この、ダークシャドウによる闇属性の攻撃なら

   なぁ・・・!」

 その言葉に、龍輝一行は耳を疑う。絶対安全なはずの街の中。少なくとも、命の保障はされているはずの、街の中。なのに、それなのに。その、闇属性というやつは、人を殺すというのだ。街の中でさえも。

宇治「う、嘘だっ!」

 震える喉から途切れそうな言葉を投げる。

松森「ひゃひゃひゃ・・・それは、自分で体感した方が早いんとちゃうかな?」

 松森はダークシャドウを構え、宇治に接近する。


龍輝「おい、ヤバいんじゃないか・・・!?」

大河「うん。闇属性なんて初耳だし、あいつが言ってる事が本当なのかもわかんないけど、も

   し本当なら大変ね・・・宇治が、死んじゃう・・・!」

 どう見ても宇治が勝てる相手ではない。そう判断した龍輝は、宇治の加勢に向かおうとするが。

岩鉄「――おらあっ!」

 岩鉄がそうはさせてくれない。

岩鉄「俺だんを無視すっとかぁ!?お前だんは俺だんに殺されるったいっ!!」

 少しでも宇治の方へ加勢に行こうとして岩鉄らから気を逸らせば、それこそ殺られるかもしれない。岩鉄、水菜、岩溶の攻撃は、いつでも襲える、そんな状況なのだ。

 ただ、そうしないのは、松森らとの挟み撃ち作戦の為だろう。

 先に龍輝達を再生エリアに飛ばしてしまえば、みかんと宇治は自分達が逃げる事だけに集中する。最悪、自害行為をし、再生エリアに逃げるかもしれない。そこは人が多く、岩鉄達にとっては避けたい場所なのだ。

 そして、龍輝達をフィールドに引き摺り出したとしても、挟み撃ちが解けた瞬間にみかんと宇治もフィールドへ逃げるかもしれない。そうなれば、広いフィールドだ。もしかすれば見失うかもしれないし、ワープアイテムなんかを持っていた場合、勝ち目を完全に見失えば、龍輝達も一緒にワープしてしまうかもしれない。

 そんな可能性があれこれ増えてしまう。

 故に、この挟み撃ち状態をキープしているのだ。そうすれば、龍輝と大河はみかんと宇治を気にかけるし、みかんと宇治は龍輝と大河を気にかける。その結果、どちらかだけが逃げる可能性は、自ずと減るのだ。そして更に勝機を僅かでも匂わせていれば、尚更、龍輝達は逃げないのだ。

 単純に見える岩鉄だが、悪党として頭を張っているだけの事はあるし、戦闘慣れしているのだろう。まぁ、松森の作戦かもしれないが、なんのミスもなく、こなしているあたり、やはりプロの悪党だ。


宇治「う、うわぁ・・・く、来るなぁっ・・・っ!」

 後退りする宇治。が、その足はもはや宇治の足ではない。恐怖のあまり、思うように動きはしない。

松森「どないしたん?そんなとこに座り込んで・・・」

 宇治は思いっきり地面に尻を落とした。

松森「――ほな、さいなら・・・」

 ダークシャドウは不気味に黒光りしながら宇治を襲う。宇治の頭上へ、容赦なく、空を裂き。


龍輝「宇治っ・・・っ!!」

大河「そんなっ・・・っ!!」

 龍輝と大河の視線の先。

蜜柑「いやぁあああっ!!!」

 蜜柑の眼前。

 その時が訪れた。 


 宇治は目を瞑って、歯を食い縛る。

宇治「――ダメだっ――死ぬぅ――っ!!・・・・・・?」

 が。

 ――松森の凶器は、受け止められていた。

 宇治の前に割り込み、松森から守ったそいつによって。

松森「・・・なんや?」

宇治「し、師匠っ!!」

 宇治が師匠と呼ぶこの人型のもの。――どうみても人形だ。シルバーの鎧を纏った人形だ。

宇治「師匠も来て下さったんですね!ありがとうございます!」

??「まぁ、あんなに頼まれたんやけん、様子くらい見に来るやろ」

 そいつは喋った。と、龍輝と大河とみかんは一瞬思ったが、その声は別の方から。宇治の視線も、別の方を向いている。

 そこにいたのは。軽くウェーブした天パとは違うくせ毛の短髪。柔らかい輪郭をした面。シルバーに輝く防具。そして、手にはコントローラー。

龍輝「――っ!?」

剣崎「、久しぶりやん」

 龍輝の呼びかけに親しげに返す青年。龍輝を名字で呼ぶ青年。

大河「え、あんたの知り合いなの?」

龍輝「あ、あぁ、高校時代からの親友だ」

 宇治の師匠は、龍輝の親友でもあった。 

大河「・・・親友なんて・・・いたんだ・・・」

 遠く、視線を落とす大河。大河にとって、友達と呼べるのは、最近知り合った龍輝とみかんだけ。故に、親友という響きは、大河にとって羨ましくもあり、とても切ない気持ちにさせるものでもあった。

龍輝「俺も友達は少ないからな。3人の親友の内の1人だ。あ、いや、お前も入れたら4人か」

 大河の視線がぐんと戻り、その瞳に龍輝を反射する。相変わらずぽかんとしてはいるが。

大河「・・・私も、親友なの・・・?・・・友達以上、なの・・・?」

龍輝「ああ。もしかしたら、それ以上かもな!なんてな、はははっ」

大河「・・・そっか。よかった。嬉しいかも。いや別に・・・でも、急に親友って・・・」

 なにやら大河は瞳を輝かせた後、俯いてしまった。桜を散らしたような頬と唇が、小さく動いていた。


龍輝「それにしても剣崎が来るとはね。びっくりしたやん」

 龍輝は気の許せる親友に、方言で語りかける。

剣崎「それはこっちもやし。まさかイデアリアで会うとか思わんやったし」

龍輝「確かに」

 そして、

剣崎「まぁ、話は後じゃね?まずはこの場をどうにかせんと」

龍輝「そうやね。じゃあそっちは頼んでいい?剣崎」

剣崎「はぁ、仕方ない」

 剣崎は松森へ向かって構える。その得物を。


大河「ねぇ龍輝?」

龍輝「なんだ?」

大河「あんたも方言話すのね。私の前でも方言でいいのよ?」

龍輝「いや、いいんだ。方言はそんなに好きじゃないし、標準語への憧れもある。だから、大

   河とは標準語で話せて楽しいんだ」

 そう言って、大河へ笑顔を落としてやる。

大河「そうなんだ。変なの。・・・でも、相手してあげなくもないわよ」

 大河は、龍輝の笑顔を、照れながら左頬で受け取る。そして、

大河「――ていうかだけど、あのあんたのお友達、なんでコントローラー持ってるの?まさか、

   あれで戦う気なの?」

 急に切り替わった表情で思った事を素直に訊いてくるのだ。

龍輝「いや、俺もこの世界での剣崎の事は知らん。けどまぁ、さっき見た感じでは、あれがあ

   いつの能力なんじゃないか?」

大河「・・・お友達も変なのね」

龍輝「・・・おい」


 ――ズシィン・・・・・・。

 岩鉄がロックブレイカーを地面に突き刺した。

龍輝「どうしたんだ?俺達もそろそろ始めるんじゃないのか?」

 龍輝は内心ホッとしながらも、それを隠し強気に出る。

岩鉄「まぁそんな焦らんであいつらを見とけ。今にお前の友達が死ぬけんなあ!ブワッハッハ

   ッハ!来んけりゃよかったとになあ!」

 あくまでも、みかんを捕らえるまではこの戦況を崩す気はないのだ。


松森「剣崎とか言うてはったなぁ。・・・覚悟はできてるんやろ?死ぬで?」

 松森は冷徹に澄んだ熱のない瞳で剣崎を見据えると、ダークシャドウを怪しく光らせる。

剣崎「・・・・・・。まぁ、殺せるならね」

 サッと剣崎へ迫る松森。軽い得物を使うだけあり、身軽で素早い。

 そして、その松森の攻撃を受けるのは、剣崎であり剣崎ではない。そいつは、やはり先程の剣を持った人形だ。人の形をしたごくごくシンプル過ぎるくらいの人形だ。そして、剣崎とお揃いのシルバー防具を身につけているだけだ。

松森「――おかしな能力を使いますなぁ剣崎はん。それ、なんていうん?」

剣崎「ソーディア・テクニカルマスターを使っとるだけやけど」

松森「なるほどでんなぁ!おもろいやんけ!そのコントローラーでこの人形を操作して戦っと

   るんやろ!」

 その人形は剣崎が操作していた。どうやら操作系能力のソーディアマスターらしい。


大河「ねぇ、聞いた龍輝?あんたのお友達も、ソーディア使ってるって」

龍輝「あぁ、正直驚いたけど、納得もできる」

大河「え?そうなの?」

 大河は龍輝を見上げる。親友がソーディアを装備しているというのに、龍輝の顔は冷静だった。なんというか、まぁそうだろうな、という感じなのだ。

龍輝「今の戦闘スタイルからしてもわかる通り、あいつはゲーマーなんだ。ブニョブニョをや

   らせれば十連鎖なんて余裕で敵なし。パネドンをやらせても止まらない連鎖で敵なし。

   スマッシュシスターズをやらせれば、上へ飛ばされメテオで落とされ、また上へ飛ばさ

   れメテオで落とされ、まるでドラゴンキューブ状態で即撃破される。攻撃しても、ゼツ

   でかわされスマッシュでやられる。そんな感じで敵なしゲーマーなんだ」

大河「(・・・ゲーム・・・1人でしかした事ないよ・・・)」

 軽く、小さく、唇を尖らせる大河。

龍輝「まぁそんな感じでゲームは極めるタイプなんだ。だから、ソーディア使ってても当然か

   なって。それに、あの能力はあいつにピッタリだなっても思うんだ。普通に戦うより強

   いに決まってる」

大河「そうなんだ。――確かに押してるかも。動きが不規則で人とは違う感じだし、松森も苦戦

   してるって感じ」


松森「――ちょいと面倒やなぁ。動きが全然読まれへん」

 すると松森はタンっと跳ね後退する。そして、

松森「はん、はん、3人で行くで。仕事は早う済まさんとなぁ」

煌月「そうじゃな」

丸山「そうね」

 3人で剣崎を襲う。

 煌月は小太刀二刀流。

 丸山は戟のような大剣だ。

剣崎「それはないやろ・・・!」

 剣崎は明らかに押され始める。敵は3人とも近接攻撃なのだ。いくら高速にコントローラーを操っても、手数が足りない。

 特に煌月の手数は常人の数倍だ。

 丸山の攻撃は重く、人形がいちいち弾かれる。

 松森は隙あらば人形を抜け、剣崎を狙っている。


大河「――龍輝・・・」

 大河のその一言でわかる。

龍輝「――あぁ・・・」

 助けないと、剣崎が間も無く敗れるという現実が、容易に想像できる。いや、もはや想像ではない。確かな少し先の未来だ。

 が、龍輝が一歩でも踏み出そうとすると、

岩鉄「行くんなら好きにせい!そん代わり、俺だんも容赦せんけんな!後ろから総攻撃たい!」

 岩鉄に有無を言わさず止められる。

 総攻撃なんて冗談じゃない。もしかわせても、その後は間違いなく乱戦だ。みかんを守りながらなんて、到底勝てっこない。ただでさえ不利な現状なのだから。


 その時、

煌月「なんじゃ!?ぁあぁっ!」

 煌月が弾き飛ばされた。

松森「――チッ。なんや?またお友達かいな・・・?」

 そこに参上したのは。

魅音「ふん。お友達だと?馬鹿を言うな。僕は警察ギルドの客員剣士、だ」

 クールな黒髪をさらっとそよ風に靡かせ、その華奢で美形な青年は剣を構える。レイピアとダガーという組み合わせだ。

魅音「――来い。僕が相手をしてやろう」

剣崎「俺もやるけど」

魅音「ふん、好きにしろ。だが、足は引っ張るなよ」

剣崎「そっちがやがな」

 剣崎&魅音のタッグ結成の瞬間だ。

松森「なんで警察ギルドの犬が・・・」

 そう松森が漏らした言葉に、魅音は冷たい視線をギラつかせる。

魅音「警察ギルドの犬だと?勘違いするな。僕は警察ギルドの犬なんかじゃない。力を貸して

   やってるんだ。あの無能な連中にな!」

 すると魅音は突っ込んだ。華麗に流麗。一閃一閃が美しい剣術だ。

魅音「それともう1つ。ここへは僕しか来ない。安心してかかって来るんだな!」

 魅音の手数は止まない。突きを多めに取り入れたスタイルだ。そして、レイピアとダガーの攻撃バランスも実に美しい。

剣崎「飛ばしすぎやろ。あぁ怠い」

 剣崎も続く。という表現は間違っているだろう。魅音も剣崎もガンガン攻めるのだ。続くや援護は存在しない。2人が凄まじい手数で攻め込むのみなのだ。

松森「なんやこいつら・・・!スキがあらへんっ!防ぐんで精一杯や!」

 2対3。なのに、手数で押すのは、剣崎と魅音。

 剣が剣を弾く甲高い音は鳴り止まない。まるで1つの音のように繋がる。

 キキキキンッギギギギンッキキキキンッギギンッギギギギンッ!!

 そして、それが聞こえなくなった時は、勝敗が決した時にほかならないのだ。

魅音「どうだ?僕のソーディア・ローンウルフの閃きは?貴様には見切れんだろう」

松森「辛うじて見切れてるから防いでるんやろ・・・!」

魅音「ふん。これが全力だと思うなよ。僕にはまだ、上がある!」

 すると、顔を苦くした松森は、なにかを投げつけた。下へ、地面に向かって小さいものを。それは、弾けると同時に、眩いばかりの光を撒き散らす。

魅音「くっ――!!目くらましか」

 直様敵との距離をとる魅音。至近距離で受けたので、視力を一瞬失っているようだ。

剣崎「逃がさんし!」

 が、剣崎はあまり食らっていない。剣崎は人形を操作して戦っているので、敵との距離をそれなりにとっていたのだ。しかも、人形で光をそれなりに防いでいた。

 そして、見つけていた。

 閃光弾を投げ、弾けたと同時に逃げる松森の姿を。

松森「――っ!・・・おっと危ない。けど、どうやらここまでは届かんみたいやな」

 魅音が目を擦りながら前方を確認する。

魅音「――おい、どうなった?奴はどこに消えた?」

剣崎「ん~松森は逃げた」

 その言葉に眉を寄せる魅音。

魅音「なんだと?貴様は見す見す逃がしたのか!」

剣崎「仕方ないがな。こっちの能力は範囲が決められとるんやし。あそこまでは届かんがな」

魅音「ふん。使えないな」

剣崎「はぁ」

魅音「おい、溜息をつくな」


大河「・・・なんだか、絡みづらいのが入ってきたわね」

龍輝「・・・まぁ、味方寄りだから、いいんじゃないか?強いし」

大河「・・・そういう事にしましょうか」

龍輝「・・・あぁ」

 素直に心強い味方だとは思えない龍輝と大河。


蜜柑「すごいですね!これなら勝てるかもしれませんね!」

宇治「そうだね!みかんちゃん!」

 素直に心強い味方だと喜ぶ者もいた。言うまでもなく、みかんと宇治なのだが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ