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☆第1クォーター 意外な裏切り☆

岩鉄「なんかお前達はあっ!?!」

 岩鉄の怒号が、その眼前に立ちはだかった龍輝と大河の鼓膜を激しく揺らす。

大河「友達よ!」

 大河もまた、お得意の咆哮で言い返す。今の大河は獰猛な猛獣だ。

岩鉄「友達ってやぁ!?やけんなんかぁ!?そげな奴は関係なかったい!しゃしゃり出てくん

   な!」

大河「はぁ!?なに言ってんの?方言ばっかでわかんないわよ!」

龍輝「出しゃばりまくりのおっさんが、お前に出しゃばるなって言ってんだよ」

 大河に説明してあげるように、岩鉄を小馬鹿にする龍輝。大河もそれに合わせる。

大河「あぁね!自分の事が見えない可哀想なおじ様って事ね!」

岩鉄「なんか貴様らはぁっ!関係なかくせにバカにしよっとかあっ!」

 面白い具合に挑発に乗ってくる。人を見下し、偉そうにふんぞり返っている奴にはよくある事だ。

大河「だから友達って言ってるでしょ!関係ないわけないじゃない!あんたバカなの!?」

 大河もまた熱くなり、いつ暴走し出すかわからないくらいなのだが、龍輝は止めない。頭に血がのぼり、思わずトラベリングやオフェンスチャージングをしてしまう勢いだが、龍輝は止めない。寧ろ、その逆だ。

龍輝「あぁ、バカだな!絶対、関係ないわけないんだ!なんせ俺達は!友達にあると同時に!

   みかんの新しいギルドマスターとギルドメンバーなんだからな!!さぁ、暴れていいん

   だぜ、大河!!」

岩鉄「なんば言いよっとかあっ!!」

 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・。

龍輝「・・・・・・ん?」

 龍輝のサプライズ心満載の発言に、大河とみかんは一瞬驚いていた。

 そして、最初に口を開いたのはみかん。

蜜柑「え・・・?・・・い、いいんですか?・・・だったら私、喜んで・・・」

 が、大河が口を開く。みかんの事なんて、というか、周りの事なんて、なにも見えていない。

大河「わ、私、メンバーなの!?そ、そそんなの聞いてないわよ!」

 と、気のないリアクションをとり、

大河「・・・で、でも、あんたがどうしてもって言うんなら、べ、別に、仕方なくだけど、入

   ってあげなくもない、かな。あんたのギルドに入る人なんて、入ってあげるお人好しな

   んて、どうせ、わ、わわ私くらいしか・・・・・・いないんだからね!」

 デレる。そんな大河にすかさず、

蜜柑「大河さん!私もいますよ!」

 と、元気を取り戻すようにツッこむみかん。

大河「あ、そ、そうね。じゃあ、私達くらいしか!しぃか!いないんだからね!!」

蜜柑「えぇ!そういう事です!!」

龍輝「い、いや、そんなに言わなくても。みかんも、大河に付き合わなくていいんだぞ・・・」

 半ば呆れつつも本当は嬉しい龍輝が、苦笑いを浮かべつつそう言うと、大河は

大河「ふんっ」

 と顎を上げ、右上へ顔を向け、みかんは

蜜柑「てへ」

 と、首を傾げて笑ってみせた。

龍輝「まぁ、Thanksな!よろしく頼むぜ!」

大河「まぁ仕方ないし、よろしく頼まれてあげる」

蜜柑「はい!です!」

 ――こんな状況下で、万事屋ギルド RADIANT☆FAIRYは、ぼっちギルドから、少数ギルドへ昇格した。


岩鉄「ええいっ!ごちゃごちゃやかましかあっ!」

 その空気を激しく揺らす怒号に龍輝が振り返ると岩鉄は、

岩鉄「まぁもうどげんでんよかたい!じゃあお前達も一緒に来んか!」

 と、自身の背後へ親指を向けた。

龍輝「誰が行くかよ。だってその先、フィールドだろ」

 龍輝はすぐに察しがつく。

龍輝「フィールドに出れば、殺すぞ、という脅しが本格的に意味を持ち出すもんな。街エリア

   では殺しても、再生エリアで復活する。だがフィールドだと、復活、しないもんな。そ

   の後の生死も不明だ」

大河「龍輝の言う通りよ!そんな危険な所にわざわざあんた達と行くバカなんているはずない

   でしょ?そのくらいの事もわからないの?これだから九州男児は」

龍輝「おい。一言余計だ。偏見にも程があるぞ」

大河「ふん」

 すると、

岩鉄「あぁ腹ん立つ!おい!作戦開始たい!」

 岩鉄がなにやら指示を出した。だが、誰に出したのか、わからない指示だ。だって、傍らの幹部3人は動きもしないのだから。

蜜柑「きゃあ!!」

 その悲鳴は龍輝達の背後から。

龍輝「みかんっ!!」

大河「どうしたのっ!?」

 龍輝と大河は揃って振り返る。良くない事が起きてしまった。そんな不安を振り払うように、振り返る。だが、その予感は・・・・・・当たってしまった。

龍輝「しまっ!!」

大河「えっ!?」

 振り返る龍輝と大河の、そのすぐ傍を抜かれた。振り返っている最中に、抜かれた。

 そいつらはフードを被っていた。そう。松森の仲間だ。その2人組は、1人がみかんを担いで、もう1人が龍輝と大河に急接近して、その視線を奪うように攪乱し、抜いていった。

蜜柑「離してくださぁあああい!!」

 ジタバタ、ポコポコ、暴れるみかんだが、力が弱い。

龍輝「クソッ!追うぞ大河!」

 龍輝が大河へ視線を落とし呼びかけると、大河はいなかった。

大河「遅いわよ!なにしてんのよ!」

 大河はすでに先にいた。小柄で軽いが故の瞬発力と野生の反射神経で、瞬間的に龍輝よりも早く、追いかけていた。

龍輝「お、おう!」

 龍輝も全力で駆け出すが・・・・・・間に合わず。――橋を渡られた。

龍輝「ちくしょう、あいつら、みかんをフィールドに連れて行きやがった」

大河「あんたがもたついてるからでしょ」

龍輝「いや、どっちにしてもスタートが違ったし、あいつら速かったし、間に合ってねぇよ。

   現にお前も追いつけなかっただろ」

大河「私は女の子なの。だからいいの」

龍輝「・・・ズル」

大河「うるさい」

 そして2人はしばらく立ち尽くす。とは言っても、それは数秒。

龍輝「よし。行くぞ、大河」

 行くか?とは訊かない。

大河「うん。早くしましょ、龍輝」

 だって、いくらこの先が命の保障がないエリアだとしても、ここで友達を見捨てるような人間は、龍輝の友達にも、大河の友達にも、いないのだから。


 2人が橋を渡り、その坂を下ると、まだ見えた。岩鉄達は、その先の方にいる。百メートル程先だが、まだいる。が、なにやら様子がおかしい。

龍輝「なんだ?まぁとにかくまだ追いつけるな。急ぐぞ、大河!」

 龍輝はそう言いつつ、大河へ視線を落とし、駆け出そうとするが、

大河「ほら!なにしてるのよ?早く来なさいよ!」

龍輝「・・・デジャヴ??」

 また、大河は先にいた。目の前で岩鉄達の様子がおかしいのなんて気にしないのだろう。気にして一瞬足を止めた龍輝。フィールドに入り、辺りを少しでも警戒した龍輝。それは、大河には理解できないのだろう。まぁだからこそ、龍輝は大河の分も気にしてもいいのかもしれない。これでこそ、気にする龍輝と気にしない大河のプラスマイナスゼロのコンビ効果なのだ。

 ――なんて事を、龍輝は自分に説明しつつ、

龍輝「あんまり離れんなよ!」

 と、駆け出す。

大河「じゃあ急ぎなさいよ!」

 と、言い返されたのは、ごく自然の事だった。


 ――龍輝と大河が岩鉄達の近くまで行くと、やっとなにが起きているのか、わかったが、でもやはり、よくわからない。

 1人の男が、暴れるように剣を振るっているのだ。

??「このおっ!みかんちゃんに近付くな獣がぁ!!」

 それは、

龍輝「・・・おい、大河。あれ」

大河「うん。確か宇治って言ったわね」

龍輝「あぁ、でも、これ、どうなってんだ?」

大河「・・・さぁね」

 先日のみかんのストーカー・宇治だった。

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