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☆みかんな盗み聞き☆

 みかんを見守る龍輝の瞳にあるものが入り込んでくる。

龍輝「おい大河。アレ、見てみろ。・・・なんか、怪しくないか?」

 龍輝に言われるまま、その視線の先を確認する大河。

大河「うん、そうね。チラチラ見てるし、コソコソ話してる感じだし、絶対的に怪しいわね。

   いかにもって感じで、絶対に無関係じゃないわね」

 2人の視線は堤防の上に向いていた。その木陰に3人程の人影があるのだ。マントのようなものを羽織っていて、フードを深々と被っている。性別すら確認できない、というか、確認させないような格好で、とても普通ではないのだ。いくらこの世界が普通ではないとはいえ、こんなにも怪しい奴は、そうはいない。本当にいたら、本当に怪しい奴で間違いないのだ。

 そして、その怪しい者達は、みかんや岩鉄のいる方を怪しく窺っているのだ。

大河「岩鉄の知り合いかな?」

 大河なりに考えてはいるが、その答えは龍輝にもわからない。

龍輝「さぁな。まぁ間違いなく、みかんの知り合いって事はないだろうな」

大河「うん、そうね。危険な人じゃなければいいんだけど・・・」

 考えても答えがでないこの状況で、龍輝が行動に出る。

龍輝「よし、決めた」

大河「なにをよ?」

龍輝「お前はこのままみかんを見守っててくれ。くれぐれも、よっぽどの事がない限り、飛び

   出すんじゃないぞ!そして、万が一にでもみかんを助けないといけないような状況にな

   ったら、できる限り、ちゃんと連絡してくれよな!」

大河「え、あ、うん。わかった、わ・・・」

 急に指示を出し始めた龍輝に、大河は意見する暇もなく了解してしまった。が、その場を去ろうとする龍輝に、ギリギリのタイミングで疑問を投げかける事に成功。

大河「あ、あんたはどうするつもりなのよ?どこに行く気なの?」

龍輝「あぁ、俺はあの怪しい奴らを調べてくる。まぁ、会話でも盗み聞ければいいけどな」

大河「ちょっと!もしも危険な人達だったらどうするのよ!?」

龍輝「心配すんなって。無理はしないからよ。それに、今を逃したら次はないかもしれないだ

   ろ。もし本当に悪い奴らなら、早めになにか知っとかないと、今後先手を打たれると、

   それこそ危険だからな」

 これが龍輝の性格の一面なのだ。なにかが気になれば、もしもと考えれば、行動したい気持ちが強くなる事がある。そうしないと、とても気持ちが悪くなる事がある。

 例えば夜中にふと気がつく。飼っている鯰に餌やりしただろうか、と思ってしまう。そして、あげていない事を思い出す。普通なら、そのまま睡魔に任せて眠る事も多いだろう。だって、毎日餌をあげる必要はない生き物だからだ。でも、龍輝は思ってしまう。もしも普段の餌が足りてなくて、今あげないと死んでしまったら、と。今餌をあげれば、大丈夫かもしれない、と。その結果、もちろん言うまでもなく、面倒臭くてもきちんとその身を起こし、餌をあげるのだ。その不安を打ち消すように、少し多めにあげるのだ。そんな心配性な性格は、祖父譲りなのだ。

 そして、そんな提案をする龍輝を大河は止めたいが、龍輝の言う事を理解もできるので。

大河「それはそうだけど・・・・・・じ、じゃあ、くれぐれも、あんたこそ本当に、無理はダ

   メだからねっ!」

 と、眉を寄せ、とても心配そうに、でも無理矢理力強く、送り出してやるのだ。

龍輝「おう!お互い慎重にいこうな!(・・・くれぐれも大河が無茶しませんように・・・)」

大河「うん!約束だからね!(・・・くれぐれも龍輝がドジりませんように・・・)」

 ある意味、相性は良いコンビなのかもしれないという事実は、まだ誰も知らないのだ。


 ★龍輝サイド

 龍輝は少し遠回りをして、限界まで、その怪しい者達の背後に近付いていた。

龍輝「俺は人見知り故に、引っ込み思案故に、飲み会でも影を隠してきた。ある時には、絶を

   使っているとも言われた。それくらい姿を隠すのは得意なんだ。身につけた才能なんだ」

 そんな悲しい事実を自信有り気に自身へ言い聞かせ、龍輝は緊張したその身を慎重につつじの影へ隠す。

 この日は、河川敷にしては珍しく風も弱く、静かな日だった。おかげで近付くのには苦労したが、話し声はなんとか聞こえるのだ。

?①「・・・岩鉄もよくやるよな」

?②「あぁ・・・あれ・・・何人目だ?」

?①「さぁな・・・でも・・・今回のは上玉だな」

?③「お前、ロリコンかよ!?はっはっはっ!」

?①「バカ言うな!俺は熟女派だ!てかそれはどうでもいいんだよ!てめぇらも知ってるだ

   ろ?ああいう小中学生の女のガキの方が、この商売では稼げるんだよ!」

?③「そりゃそうだったな。てっきりお前のロリコン発言かと思ったぜ!ハハハ!」

?①「ダ・マ・レ。それよりも見てみろよ、あのギルドの新入り共の数をよ!これから自分達

   がどうなるのかも知らねぇでよぉ!必死こいて励んでやがる!」

?②「・・・おい、お前達・・・声がデカいぞ・・・誰かに聞かれ・・・したらどうするんだ?」

 よかった、まだバレてない。龍輝がそう思った瞬間・・・・・・。

ブゥゥゥゥゥゥゥン ブゥゥゥゥゥゥゥン

龍輝「っ!?!」

 龍輝のMy PHONEだ。運良くマナーモードにしていたが・・・・・・。

?②「・・・おい、今、なにか聞こえなかったか・・・?」

?③「お前はビビリ過ぎだよ。ここは別に無人島ってわけじゃないんだ。たまに物音くらいす

   るし、人も通りかかるだろ。その為に顔がバレないようにこんな格好してるんだろ」

 龍輝の首の皮は、なんとか無事に繋がっていた。

龍輝「(こんなタイミングで携帯を鳴らしてくれる奴がいるなんて、とんだ迷惑野郎だぜ)」

 と龍輝は、慌てる心臓を感じつつ、呼吸を無理やり落ち着け、一応携帯を確認する。その犯人を確認して、少しでも落ち着こうとも思ったのだ。こんな迷惑野郎は確認しないと、気持ちが落ち着かないのだ。そんな落ち着く為の作業のはずが・・・・・・。

龍輝「・・・!?!」

 言葉なく限界まで驚くはめになった。瞼は捲れ上がる程上へ上へ引っ張られ、顎は引きちぎれる程下へ下へ引っ張らっれる。唇も切れてしまいそうだ。

龍輝「(・・・ウ・・・ソ・・・だろ・・・!?・・・落ち着けっ!大河!早まるなっ!大河!)」

 心の中で、叫び、願う。その原因は、もちろん、MY PHONEに届いた、一通のメールだった。言うまでもなく、大河からのものである。というかそもそも、このイデアリアでは、大河としか連絡先の交換はしていないのだった。

 だがそんな事を思い出す間もなく、龍輝は駆け出した。怪しい奴らからそ~っと離れ、駆け出した。大河の元へ、駆け出した。

?②「・・・うん・・・?・・・やはり、気のせい・・・か?」


 差出人:真白大河愛

 宛先:龍輝

 タイトル:無題

 本文:どうしよう

    私、我慢できないよ

    もう

    見てらんない

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