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☆みかんなギルド☆

 ここは河川敷。

 現在、みかんが所属しているギルド、宝満リバーの集会が行われている。

 みかんはそこで、ギルドマスターに、ギルドを抜けたいと伝える手筈なのだ。

 龍輝と大河は、万が一の為に近くで見守っている。とはいえ、ここは河川敷。そうそう隠れる場所もないので。

大河「なんで私があんたとバドミントンなんかしなくちゃいけないのよ!」

龍輝「仕方ないだろ。これもみかんの為だ」

大河「これじゃまるで、その・・・カ、カップルみたいじゃない・・・」

龍輝「うん?なんて?ごめん、風が強くて聞こえなかった」

大河「とぅおりゃあああ!!!」

 恥ずかしさを誤魔化す為に、大河が唐突にスマッシュを放ってきた。ラリーを楽しく続けようと言っていたのにだ。

龍輝「おいっ!けど、甘いわっ!」

 さすがにスポーツ万能な龍輝。それでも、ラリーを強引に繋げるのだ。

 そんな白熱するバドミントン龍輝&大河を確認しつつ、みかんは行動に出る。


蜜柑「あの、マスター岩鉄さんに相談があります」

岩鉄「オウ!なんか、みかんちゃんやんか!どげんかしたとか!?」

 その男、大柄で、筋肉と脂肪を纏った、見るからに熱血パワー野郎といった感じだ。なにもしてないのに汗をかいている感じが、実にむさ苦しい。もう、肌寒い季節だとういうのに。方言丸出しな感じも、龍輝は嫌いだ。

蜜柑「あのです、実はその、私・・・ギルドを抜けようと思うんです!」

 岩鉄の前では、小柄なみかんはもうホントに存在が消えてしまいそうな程小さく感じられる。

岩鉄「みなそう言うけんな!やけどそれは許さんバイ!その内に楽しくなるけんなあ!」

蜜柑「いえ、その、私にはやらなければならない事がありまして、そもそも初めに聞いていた

   条件とは違いますし、こんなに鍛えたいとも思いませんし、ですから・・・」

岩鉄「ええいっ!黙らんか!まだ子供のくせん偉そうな事ば言っとらんで、言う通りにせんか

   っさい!あぁ腹ん立つ!」

 こんな大男が方言丸出しで怒鳴り散らしたら。ほら、案の定みかんは縮こまって、頬を濡らしている。周囲の者達にも当然その怒鳴り声は聞こえていて、その視線による注目も痛いのだ。

大河「ちょっと龍輝。助けに行った方がいいんじゃない?」

龍輝「いいやまだだ。今行っても話し合いに応じるとも思えないし、みかんまで危険に巻き込

   んじまう。それに、絶対になにかあるはずだ。あいつらの正体を暴くなにかがな」

大河「そう。あんたのその勘が当たってるかはわからないけど・・・ごめんね、みかん」

龍輝「でも、本当にヤバくなったら助けるからな。準備はしとけよな」

大河「うん!」

 そう言って、次はソフトバレーを始めていた。これはこれで、いい準備運動なのだ。既に身体はポッカポカだったりするのだが。結構エキサイティングしているのだが。


岩鉄「大体っさい!俺だんがお前をフィールドから助けてやったっちゃろうが!あんままやっ

   たらどげんなっとったか知らんとバイ!?やったら、少しくらいきつくても我慢ばせん

   か!?じゃないとくらすけんな!」

 くらす、というのは、ぶっ飛ばす的な意味だ。最近の若者では使う者も減った感はあるが、チンピラはよく使っていたりもする。あとは、大人だったり、方言が強めの人だ。

 まぁ少なくとも、いい歳こいたおっさんが十四歳の少女に怒鳴り散らす言葉ではない。

岩鉄「なかなかこげんギルドには可愛か女ん子は来んったい!やけんお前におってほしかった

   い!お前がおれば男共は頑張るし、ギルドに入る奴も増えるけんな!けど、おるだけじ

   ゃいかん!一緒に行動せんとな!その姿に興奮する奴もおるったい!」

 俯くみかんに、正面からガン見して、威圧する岩鉄。


龍輝「なんて酷い奴だ。なんて自分勝手な奴なんだ」

 龍輝も苛立ち必死に自分を抑えているのだ。

大河「ちょっと、龍輝!・・・あぁ~あ、ボール飛んでいっちゃったわよ!」

龍輝「あっ、ごめん」

 龍輝がトスしたボールは、鳥栖方面へと飛んでいってしまった。元々、大河が小さいので、コントロールがズレたら、すぐに届かなくなる、というのもあるのだけれども。

龍輝「俺が取りに行くよ」

大河「うん、じゃあお願い。それから、落ち着きなさいよ。まぁ気持ちはわかるけどね」

龍輝「あぁ、そうだな」

 そう言って、龍輝は駆け足でボールを取りに行く。でも、きちんと気持ちは落ち着けている。駆け足なのは、大河を待たせると悪い気がしたからなのだ。

 龍輝が戻ってくると、

大河「それにしても本当に許せないわよね。ここまで聞こえてくるくらいの大声で怒鳴るなん

   て。しかも言ってる事は最低だし。あんなの、みかんの事はなにも考えてないじゃない。

   ただギルドの為に利用しているだけよ!」

 なぜだか大河が熱くなりかけていた。

龍輝「まぁ、言ってる事は強ち外れてもないんだけどな」

大河「はぁ?どういう事よ?」

 不意に大河が送ってきた視線は鋭かった。

龍輝「いや、あいつの肩を持つ気はないから誤解するなよ」

大河「いいから。わかってるから。続けなさいよ」

龍輝「お、おう。えっとな、スポーツチームでも、男だけのチームよりも、そこに女性が1人

   でも入ったチームの方が成績が良くなるっていうデータがあるんだ。男とは、女性の前

   で見栄を張る生き物だからだそうだ。まぁ、その為だけに意志のないみかんを無理矢理

   いさせるのは、大間違いだけどな」

大河「うん、さすがデータ男!その通りよ」

龍輝「いや、真顔でその呼び方はやめてくれないか・・・?」

 そんな時、自体は動いた。

大河「ちょっと、あれ!」

 急に慌てるように、大河が左手で龍輝の袖を引いたのだ。大河の右手人差指とその瞳が指す先には。

龍輝「・・・マジかよ」

 岩鉄と数人の幹部らしき者の後ろをついて行く、か弱い儚げなみかんの姿があった。

大河「どっか連れて行かれるわよ!どうするの!?」

 慌てる大河。

 だからこそ、龍輝は落ち着いていないといけない。そう自分に言い聞かせる。

龍輝「おう。とりあえずこのまま跡をつけるぞ。いくらなんでもここで乗り込んでも敵の数が

   多過ぎる。恐らく、岩鉄も幹部も強いだろうけど、この数を相手にするよりはマシだろ。

   そもそも、まだ悪い事が起きるって決まったわけじゃないからな」

 額にじりじりと汗を浮かばせる龍輝は、冷静にそう語る。

大河「そ、そうね。うん、わかった。じゃあ私は、あんたについていくわね」

 その龍輝の様子に、大河もなんとか冷静を保とうと感化されるのであった。

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