★第二世界を知る★
龍輝「ここが、第二世界・・・!」
彼は、先程の卵型のBOXから足を踏み出した。目の前に広がる景色は・・・・・・。
龍輝「変わらねぇ・・・現実世界とほぼ同じじゃねぇかよ。確かに似てるとは聞い
てたが、ここまで同じじゃつまらねぇよ。」
彼の言う通り、先程の、光に包まれ消える前の景色と変わらないそれが、確かに目の前には広がっていた。
龍輝「そういえば、説明書に、まずは街の端に行ってみる事だ。とか書いてあったな。と
りあえず行ってみるか。」
龍輝はそう言うと、まずは自分の家へ向かった。正確には、家のあるはずの場所だ。
龍輝「おぉ!そのままあるとは聞いてたけど、外観も全く同じなんて、これは感動すな
ぁ!」
龍輝は喜びながら自宅に入っていった。
龍輝「・・・・・・。・・・・・・。
・・・・・・。・・・・・・。
空っぽ・・・・・・。家の中は空っぽ・・・・・・!?
そうだ、俺の部屋は!?」
急いで部屋へ向かった。
龍輝「!?無い・・・。俺の部屋も空っぽだ。そりゃ玄関も台所も何も無かったから、予想は
一瞬でできたけど・・・まさかね。」
龍輝の部屋も空だった。空き巣に遭ったわけでもない。それなのに、テレビやゲーム機はおろか、彼が集めていた無数のフィギュア、八個もあったはずの水槽、マンガ本、ポスター、コーヒーメーカー【バリカタ】、何もかもが無かった。そう、埃でさえも無かった。
落ち込んだようだ。それはそうだ。誰でも、家の中が突然空になっていれば落ち込むだろう。何も不思議な事ではない。だが、
龍輝「すごい・・・!やっぱりここは現実じゃないんだ・・・!俺は本当に来たんだ・・・!」
龍輝は落ち込んでいなかった。むしろその逆だ。
龍輝は、静かに込み上げる確かな興奮を胸に駆け出した。そして乗り込んだ。自分の愛車へと。
そして向かったのはもちろん。街の端。ではなく。
龍輝「ここからなら、わざわざ街の端に行かなくても街の端まで一望できる。」
そこは街の端どころか中央に近いとも言える場所。
【高良山】
という福岡県久留米市にある山だ。
愛車で山頂付近まで上がり、残りは階段を上がる。そこでまた1つ、異変に気付く。
龍輝「なんだよこれ。階段が異常に長い。現実の何倍あるんだよ。とても一気に上がれね
ぇよ。・・・でも、燃えるな!」
そういうと龍輝は、無謀にも全力で駆け上がり始めた。天辺が見えない階段を。3段飛ばしで駆け上がる。すると、また1つ気付く事がある。
龍輝「あれ?こんなに全力で、こんなに駆け上がってきてるのに、全然息が上がらない。まだ
まだ行ける。なら、このまま行ってやる!」
本来は不可能。そんな人間はいない。だが、それなのになぜ。本当にそのまま山頂に辿り着いてしまったのだ。
そこには【高良大社】がある。だがそれも、龍輝が知っているそれとは違っていた。
龍輝「なんだこれ!?デカ過ぎる!!こんな建造物、現実では見た事がない。まるでどっ
かのお城じゃないか。こんな事があるのか!こんな事がまだまだ待ってるのか!」
龍輝は高良大社を背に再び走り出す。駆け上がってきた階段の横から入り、街を一望できるその場所へ。
龍輝「あった。ちゃんとあった。あそこからなら・・・。」
当初の目的地に着いたのだが、龍輝は一瞬言葉が出なかった。いや、一瞬というにはあまりにも長く感じていた。・・・・・・その絶景に呑み込まれていた・・・・・・。