第88話 無駄話
これは無駄話です。
【『私と和人先輩は会長選挙に挑む!!今から立候補者だ!!』】
高らかに宣言した千秋の言葉を聞いて、俺は上手くいったなと思った。
勿論、胡桃の差別制度撤廃については予想外やったし正直あせったのもホンマや…せやけど、それ以上に千秋を表舞台に出せることが嬉しかった。
[よろしゅう頼むわ]
俺は千秋の宣言のあとにマイクでおおきく言った。その瞬間、烏合の衆らはパニック状態になり混乱している。それは見ていて面白いものではあった。
応接室
『はぁ~…』
千秋は高級そうなソファーで上を見上げながら大きくため息をついていた。
「よかったやん、まさかあんなに大きく宣言するとは思わへんかったけどな」
そんな千秋の為にハニーココアを入れて渡す。すると千秋はポケットから小さな練乳を取り出して入れまくってた。
見ているだけで吐きそうやわ…
『これからが憂鬱だよ…』
甘ったるい匂いを放つ飲料をゴクゴク飲みながらそういった。まぁ、角砂糖と練乳とかよりかはマシやから別にええねんけどな。
「めっちゃ目立ってたで」
からかう様にいうと、千秋は睨んだ後ガックリと項垂れた。
『目立っていいことなんて…何もないですよ』
千秋は…目立つのが大嫌いな子や。それは過去の仕打ちから来ているんやろなと俺は思う。
「小学校のときに目立ちすぎてイジメにあったんよなぁ?」
愉快そうに笑えば無言で千秋に蹴りを入れられた。分かっとる、そんな簡単な問題や無かったんやろ。
千秋はまず最初に身長が大きかった。3年生の段階で6年生位の身長をもっていた千秋はその時点で目立つ存在やった。まぁ今でも170近いけどな。
次に千秋は容姿が結構いい方であるために身長と合わさって日常では可笑しな存在になっていた。
千秋自身は目立とうとはしていない、せやけど様々な不可抗力の理由で千秋は無理やり好奇な存在にされた。
嫉妬、羨望、好奇、哀れみ、色々なものが混じりあい、そして歪んだ好意や悪意にさらされた。
「確か…高嶺の花扱いされて周りから距離を置かれたり、靴を盗まれた後に新しい靴置かれてたり…そういえば当時の人気者に告白されとったな」
『よく覚えてますね』
「そりゃそうやろ!あんときに、神埼 千秋って言うたら誰もが知ってる有名人やったねんもん」
千秋は転校生として和人が通っていた小学校に現れた。
『あぁ、確かあの時から先輩は凄く鬱陶しい存在でしたね』
「だって面白かったねんもん、身長高いし顔は綺麗やし、それやのに目は腐ってて何もかもを拒絶しとったから」
多分、俺はうらやましかったんやと思う。胡桃とはまた違った彼女に対して、素直に賞賛や羨望を送ってた。
「正直に言うわ…俺、途中から劣等感もっててん。というか…へんな理想って言うんかな?」
『……』
私はどう返していいのか分からず、黙まる。
「俺には出来へんこと簡単に出来たりするくせに、何で逃げるんかな~って……今思えば子供の考えやったと思う……せやけど
今もその考えやねん」
『つまり先輩は、自分勝手な劣等感のケジメと理想を叶える為にこんな事を?』
「いや、胡桃のことはホンマに計算外やってん。言い訳にしか聞こえへんかもやけど……胡桃も千秋も放っておけれへんかった」
結局、先輩は様々な理由があるのだろう。本当はこんな騒動放っておいてもどうせ卒業するから関係ないのに、それが出来ないのだろう。
いつものように高見の見物でニヤニヤと笑うことだって出来るのに
『……先輩ってさ、器用なくせに不器用ですよね』
「自分も変わへんやろ」
『変わりますよ……私は逃げることしか考えなかったですけど、先輩はにげなかった。だから先輩は嫌いなんですよ……
最後の最後で先輩を嫌えないんですから』
善人ではない。むしろ悪人に近い。というか悪人になりたがっている節がある。だから私は先輩を嫌う。
けれど、たまに…本当にごくまれに…こういう先輩の変な部分で不器用で曲がらないところが…
「結構好きですよ」
「おおきに」
私の本音に先輩はそういってくれた。
『さて、本腰いれて進みますか』
「何か勝算はあるんか?」
『ええ、ちょっとだけある作戦があるんですけど…』
私はニヤッとした顔でそういった。
私の作戦を全て話し終えたあと「お前、ホンマ性格悪いな」
と言われてしまった。
学校設定の補足です。
千秋は最初、普通の学校に通ってましたが身長が延び始めたのと容姿とか意識する年頃だった為に目立ち始め、女子から無視されたり色々されます。 (イジメではありません)
それに気づいた父が再婚をきに無理矢理転校させ、和人がいた小学校へいきます。因みに胡桃は別の学校です。
しかしそこでは本格的なイジメになり、また父は転校をさせようとしますが、千秋が嫌がったので小学校はそのまま。
中学の時は遠いとこへ入学ってな感じです。千秋は必死で世渡りを学んだんです。




