第84話 胡桃の異常な愛情
「……よかったのですか?胡桃さん」
応接室で、鳳は紅茶を入れながら胡桃に質問した。香りの強い葉をポットの中に入れ、軟水のお湯で少しエキスを出したあと、ティーカップに入れて自分と胡桃のとこに差し出す。
胡桃はそれを両手で受け取り、少し手を温もらせたあと、その質問に答えた。
「うん。満足だよ~私は鳳くんの意見がいいと思うし~」
ニッコリと、何時ものようにゆったりとした喋りで胡桃は言った。
鳳・アレンクシスを支持する。それは言い換えれば千秋と会長との敵対を意味する。
セレント学園の会長席は一つであり、それを両方狙うのであれば自然とそうなる。
「私の意見に賛同してくれるとは、ありがたいです。まだ理想段階ではあったのですが、胡桃さんが賛同してくれるならば理想だけで済まないでしょう」
鳳には、ある[計画]があった。最初思いついた時はただのエゴや自分勝手なものだと思い、ただの理想論で終わると思っていたが、最近具体的になり理想だけではなくなってきた。
「それにしても…何故賛同してくれたんですか?」
鳳は気になる事を質問した。
胡桃は、千秋を盲目的なまでに愛している。どんなに千秋が最低な事をしても、どんなに千秋が悪い噂を耳にしようとも、まるで関係ないとでも言うかのように情熱的なまでに千秋を愛している。
いくら自分の意見に賛同したと言っても、千秋と敵対してまで自分の支持者になってくれるとは思わなかった。
胡桃はその質問に対して妖艶に笑った。
「私ね…何も千秋ちゃんの事知らなかったんだぁ」
本当に甘く、ドロドロとした声が響き渡る。
「千秋ちゃんたらね、なぁんにも、なぁんにも教えてくれなかったのぉ。実母に会ったとかぁ、クリスマスの日に親に何をされたとかぁ……なぁんにも知らなかったんだぁ」
まるで泣いているかのような声、まるで自分を嘲笑しているかの様な声。
裏切られたと思う怒り。頼りにされなかった落胆。そして失望。いろいろな感情をもった笑みを浮かべている胡桃がどんな思いを持っているのかは分からないが、これだけは分かった。
千秋に対する、異常なまでの愛情。
「でもね、もぉいいんだ~。そりゃ凄く悲しいよ?ものすごく怒ってる。親友なのに何で頼ってくれないのかな?って…でもね、許してあげるんだ。だって親友だもの
こういう時こそ、許すのが親友でしょ」
落胆してもなお、怒りを感じてもなお、千秋へ異常なまでに愛情を注いでいる。
そして何より怖いのは、純粋な友愛であることだ。余りにも淀みなく、一転の曇りもなく、純粋に彼女は友愛を注いでいる。
「ならば、尚更私の支持者になるのは可笑しいのでは?」
その質問に対して、また胡桃はニコリと笑う。
「いくら親友でもね……ペナルティーは必要だと思うの。本当は今すぐにでも法的措置を取って養子にして、姉妹になりたいけど……私がなりたいのは
[姉妹]じゃなくて[親友]なの」
彼女の中で、それはキッチリと割り切っていた。余りにも淀み、あまりにも純粋な言葉であった。
「だからね、取り戻すんだ。また始めるんだ。全部壊して一から始めるの」
もしくは、元から無かったのかもしれない。親友なんてものは何も無かったのかもしれない。
親友だと思っていたのは自分だけだったのかも知れない。しかしそんな事はもう胡桃にとってどうでもよくなり、また始めるつもりであった。
「……まぁ、胡桃さんなら過程はどうあれ千秋さんを幸せにするから大丈夫でしょう」
胡桃を見て千秋への危機感を覚えたものの、最初から最後までハッピーエンドで終わる事を夢見る程、現実を見ていない訳ではないので
過程はどうあれ、最終的にハッピーに終わる事を目標にする。それは胡桃も同意見らしい。
「うん、私たちの理想の為に頑張ろ!
……待っててね、千秋ちゃん」
親友をまるで愛しい思い人のように思い浮かべて彼女は頬を赤らめて呟いた。
それはまるで、人間に恋した女神のようであったという。
ヤンデレ...に入るんですかね?
胡桃がラスボスにするのは結構前から思い描いてました。




