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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
生徒会総選挙。立候補編
89/120

第82話 観客席からの表舞台

何とか教室に戻り、私は席についた。いまのところ誰も話しかけないが、それはいいと思う。


いつも私は似非ボッチだし、必要最低限は喋りかけないのがデフォだ。だから何時ものようにヘッドフォンを装着して自分の世界に入ろうとしたが……


「今年の生徒会は誰が選ばれるんだろ?」「鳳くんじゃない?やっぱ」「嫌々、最近株が上がっているエレナって人も…」「胡桃ちゃんは?」「あの子はちょっとタイプ違うじゃない」「でも人気で言えば胡桃ちゃんが…」


こんな会話が聞こえた。普通校舎はのんきなものである。自分たちは関係無いと分かっている為か、選挙は一種の人気投票感覚だ。


そこまで考えて、私は射的で取った戦利品であるウサギを模ったヘッドフォンを耳に付け、音楽をききながら自分の世界に入る。


総選挙の結果は大体予想がつく、多分鳳くんが会長になるだろう。これは最早決定している。そもそもスペックが高く、生徒会の経験者、人気、どれをとっても決定付けられるだろう。


そして、浩太君もある程度の票をとって生徒会入りするだろう。しかし、生徒会見習いだった頃から嫌なものばかり見ていたので辞退する可能性もある。


(胡桃…は流石にないよね)


ホンワカ様が生徒会長になったら、周りが頑張っていい学園にはなるだろうが、鳳くんとどちらになるかと言われれば頼りになるほうの鳳だろう。


私には関係ないので観客席で見よう。時々やじを飛ばす事はあるかもしれないが、それはあくまで野次であり、舞台と関係ないのは変わらない。


『痛ったた…』


ヘッドフォンの具合が悪いのか、耳が痛くなり装着をやめる。あの屋台のおっさん、安物使ってたな…。どうするんだ、こんなの部屋に飾って時々抱きしめる事しか出来な……


『………?』


余りにもシーンとなっているのでゆっくりと辺りを見回す。


「これって本当?」「本当かも…」「え~?だって千秋だよ?」「でも千秋って意外とハイスペックじゃん?」ヒソヒソ……


敵意でもなく、好意でもなく、嘲笑でもなく、微笑みでもなく、落胆でもなく……いや、その全てが私の元へと降り注いできた。


360°グルリと囲まれ、しかし誰も直接言おうとはせず近づきもせずまるで映画の十戒みたいだとおもった。そして、余り心地いい視線ではない。


「レプラにもなったし……」「知ってる。それって確か他校のレプラより…」「うん、凄い働きだったみたいだよ」「え~見えない!」ザワザワ


ヒソヒソ話からザワザワ話へと変わり、大体の内容は分かってきたが、具体的なことは分からない。まるで小学校の時に人気者から告白されたあの時と同じような状況だ。


イジメ一歩手前、選択や断り方を間違えればすぐに悪意につつまれる。そしてその前までは好奇心や一種の羨望がでてくるあの空間……まるで見世物になったかのような記憶が蘇る。


「あ、あのさ!千秋ちゃん!」


ザワザワ軍団の中で比較的に仲のいいデコっぱちの女の子がよってきた。勇者なのかバカなのかそれとも空気を呼んであえて空気を読まない行動をしたのか……


『なに?どうしたの?』


私はさっきのヒソヒソもザワザワも何も聞こえなかったフリをして笑顔で聞いた。それに安堵したのか、デコっぱち少女は安堵したように笑った後質問の答えを話した。


「この記事なんだけど…」


と、携帯からあるホームページが開かれていた。それはセレント学園の生徒限定で見れる専用のホームページであり、学食の新メニューやらイベント行事等といった一般的なものから、先生の熱愛やら生徒の親が横領していた等のゴシップまであるホームページだ。


この学園の生徒は全員見ている人気の高いホームページで勿論私も見ていたのだが、どういうわけか最近見れなくなっていた。


そして、デコが言う部分に焦点を当てると……


『何これ…』



[一般生徒の天崎千秋、異例の推薦立候補!!支持者はなんと伊集院和人!?]


ニュース欄に大きな文字でそう書かれていた。


理解が追い付かないが


観客席から無理やり腕を引っ張られ、表舞台へと引きずり上げられたのは理解出来た。

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