第80話 休日の終わり
さて、私は和人会長の味方か否かの質問が出てきた。これはちょっとというか大分面倒臭い話になるとおもう。
最早私は会長派として見られてはいるが、ここで完全に会長派になってしまっては少々話がこじれてしまう。だからと言って会長派じゃないと言えば、私は無闇に理事会の重鎮たちを攻撃した生徒だ。
でもってお得意の八方美人をしようにもこんな長年裏の世界を渡り歩いてきた猛者達を相手にどこまで通用するかは未知数だ。所詮は小娘の戯言なのだから…
ここまで考えるのに私は10秒も掛からなかった。
(これは本格的に四方八方穴塞がりだ、下手に被害をなくすより最小限の被害で…)
『味方の定義がよく分かりませんが……それが会長の優秀さを認める行為ならば確かに私は会長の味方かもしれませんね』
嫌悪派はまともに話を聞いてくれないだろう、そして会長擁護派は場合によってはかなり厄介な存在となってしまう。
「ならば、私たちと敵対すると言うことじゃな?」
『いえ、これは一人の生徒としてです。申し訳ありませんが私は一般生徒としての意見です。もし私が教員や理事の人間だったならば結果は違っていたのかもしれません』
丁寧に断りながらも千秋は一般生徒という部分を強調した。
焼け石に水でしかないかもしれないが、千秋的にはこれが唯一の方法だった。表面上は本格的に敵対しない為に一般生徒だからというふうに理由付け、味方の定義をあやふやにする。
会長擁護派はそれを仲間だと判断し、嫌悪派は怒りの矛先を鈍らせる。
これはある意味では上出来な方であろう。
「しかしだね…」
「もうええんやないですか?」
更に何かしらの文句を言おうとした理事の初老にストップをかけたのは、全ての張本人である和人だった。和人は全てが上手くいったとばかりにニンマリと口角を上げ……
「彼女は一般生徒です。これ以上攻撃をする意味があるんですか?……仮に彼女の母親に何かしらの屈辱を受けていたとしても、それは今の話とは関係ありませんよ」
と、およそ完璧な標準語でそう、まくしてたてた。……というか会長の標準語初めて聞いた為に一瞬誰が言っているか分からなかった。
「そうですね、これからも話す機会はあるんですし意味の無い攻撃の場に成り下がるのは一旦やめて、美味しい料理に舌を楽しませましょう」
会長擁護派が少々強引ながらも、場を一旦閉会にさせてくれた。それに苦汁を飲まされた嫌悪派だが場の雰囲気を悟ったのか、それ以上何も言わずに食事を始めた。
これにて勝負あり。
と言いたい程の会長の完全勝利であった。擁護派がいるのと嫌悪派が真っ二つに分かれているのを見るとどうやら会長は何回もこういうことに勝利してきたのだろう。
まだ年若く、更には会長ということ以外何のブランドももってない人がここまでのし上がってきたと言う事実が嫌悪派をここまで露骨にさせたのであろう。
その、したたかさには私も舌打ちしたい位であった。
「いや~お疲れさん、おつかれさん」
店を出て、会長はニヤニヤと笑うように私の背中をたたき、私はそれを振り払った。
『何がお疲れさんですか、完璧に私はとばっちりですよ』
少なくとも完全に私は会長の片棒を担がされているだろう。しかしながら会長はあっけらかんと言い放った。
「別にええやん、千秋やったらなんとかなると信頼してたし」
『それは信頼じゃなくて、まるなげって言うんですよ』
しかし、信頼してくれたというのは本当かもしれない。あの状態で私が少しでも的外れな行動をしていたら、会長と一緒に駄目になっていただろう。
しかし会長は切り離し作業にいく気配もなく、私の出方を最後まで見てくれたのだから。
「あ、そうそうこれバイト料」
茶色の封筒を会長が渡してきた。私は現金が好きなのを会長は知っているらしい。
『15、16……っち、これだから金持ちわ…』
いや、文句は全然ないよ?どこからこんな金出てくるのかな?とか疑問に思っただけ。
「千秋の働きは評価しとるからな」
『どうも』
私は手短に返事をした。札を数えるのに夢中だからだ。
……それにしても最近、表にでる事が大過ぎるきがする。本来私は影や裏でひっそり…とまでは行かないが、表舞台にはあまり出ない部類だ。
それが最近崩れ始めている……本当に参ったな、これからは気をひきしめよう。
しかし、私はきづけなかった。
「そろそろ表舞台にたってもらうで……」
会長が悪い顔で不吉なことをいったのを。
そのことを知らないまま、私の休日は終わった。




