第66話食事とカメラ
「美味しい?千秋ちゃん」
『...美味しいよ、胡桃ちゃん』
周りの目と声が無かったらね。
胡桃に昼食を奢ってもらい、私は特別校舎御用達の学食を食べていた。周りの目が痛い。
「何で普通校舎の人間が..?」「また奢って貰ってるよ...」「プライドって無いのかな?」「無いんじゃない?普通校舎の人間だし」
多分これが普通校舎と特別校舎との溝が深まる要員なんじゃないのだろうか?
まぁ皆のアイドルであり、天使である胡桃ちゃんに奢られている私はどう見てもダメ人間や、いたいけな美少女を騙す最低人間だろう。
「なぁにか言ったぁ~みんなぁー?」
「「「「... ...」」」」
ホンワカ陛下の一声により、一瞬で皆だまりだした。優しくフワフワとした声はまるで天使の様に可愛らしく... ...
天国へのお迎えみたいだった。...アレ?これは悪魔だっけ?
その代わり、今度は視線が強くなってきた。主に殺気だ。
しかしながら、こちらもこちらで事情があるのでその視線を無視して味のよくわからない料理を食べる。
「横の席、いいですか?」
と、鳳くんが来た。
疑問文にはしているが、何故か答えを聞かず私の隣に座りだした。
「あ、口が汚れてますよ?」
『え?...あぁ、そうだね教えてくれてありが..ムグ!?』
いきなり鳳くんは、私の口にハンカチを押し付けてそのまま強く拭き始めた。
『え!?ちょっ...ウムム!!ムー!』
「暴れないで下さい、ご飯を食べることはいいことですが、一心不乱に食べること無いんですよ?ちゃんと噛んで食べなさいよ。いくら貧乏人とはいえ、ご飯は逃げませんから...」
『プハっ...分かった!分かったから!!』
口を拭きなげら説教する鳳くんの手を無理矢理剥がす。なんだか最近、鳳が鬱陶しいくらいだ。
「鳳くん、まるでお母さんみたいだね」
ホンワカ様がそう言った。
私の実母の継母はこんなのじゃないが...普通の母はこんな風に世話をやいてくれるのだろうか?
もし、琴音さんと完全に和解が出来たらこんな風に世話をやいてくれるのかな?...ちょっとだけ想像してみる...
「どぉしたの?千秋ちゃん、ちょっと笑ってるよぉ?」
『えっ!?...あ、いや...うん、なんでもないよ胡桃』
ヤバイ、想像だけでニヤケてしまった。
くそっ!不覚だ!恥ずかしい!!
「そっかぁ~可愛かったよ~」
ホンワカ様がニコニコしながらそう言ってきた。
本当に勘弁して欲しい。
『さっきのは、忘れて...』
家庭を想像してニヤケたなんて恥ずかしい。
絶対に気持ち悪いよ...カシャッ
... ...ん?
「あぁ...タイミングを逃してしまった...」
横から聞こえる声の方向へ顔を向かせる。
『...鳳くん?』
そこには、カメラをもっている鳳の姿があった。
「はい、なんですか?」
しかし、鳳くんは慌てる様子もなく真顔でそう言ってきた。
『何でカメラもってるの?』
「私がカメラもってたら何か悪いのですか?」
『いや、悪くはないけど...』
確かに悪くはない。カメラをもつのは人の自由であり、それ事態は悪くない。カメラと鳳くんだけならば、写真を撮るのが好きな爽やかなイケメンだろう。
しかし、ここに周りの環境を設定しよう。ここは学食で食事をするところであり、更には鳳くんはさっき私にたいしてカメラを向けていた...
ん?あれ?
なんだろ、すごい違和感。と言うかカメラは一体どこから出してきたんだろ?
なんで食事の時にカメラをだすんだろ?
可笑しいよね?
『ってか、私の写真とって「すみません、私はこれで失礼します」ちょっ!鳳くん!?』
鳳くんは優雅に超速いスピードで何処かへいった。
カシャッ
ん?
『胡桃?なにし「ツーショットだよぉ~」...うん、ツーショットだね~』
私の肩に寄りかかって携帯で一緒に撮った。
なんだろー...間延びした可愛くて甘ぁ~い声聞いたら違和感とか色々ぶっとんだよ。
アレだね。
パンダは獰猛な熊の仲間で実は肉食動物だけど、愛くるしくて可愛らしい姿を見てたらそんなのどうでもよくなるのと同じだね。
そして食いちぎられて殺される。
「早くだべよ~冷めちゃうよ~」
『...そうだね、食べようか』
多分、千秋がニヤケていたと思うのは、心から笑った本当に可愛い笑顔だったのかもしれませんね。
鳳くんは尽くすタイプだと思います。千秋に何かと面倒見てます。
千秋は胡桃といるときはちょっとだけ可笑しく、ふざけてます。時々真面目にもなりますが、基本的にふざけた思考をしてます。




