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第65話 胡桃

さて、いつもどおりの日常になっているものの、いつもどおりに行くわけには行かなくなっている。


『いい物件ないかな…』


スマホで賃貸物件のホームページを流し読みしながら、私は頭をかかえた。琴音さんとの一件以来、私はついに部屋を借りる事にしたのだ。


琴音さんとは完全に和解は出来なかったものの、一応ちょっとずつ歩み寄ろうと思っている。しかしながら、すぐに家には戻れない。


と、言うよりかは誤魔化すのに限界が来た。


彼氏の家をはしごしているなんてとてもじゃないが言えないに決まっている。ネトカフェ生活でほぼホームレスなんです。も言える訳が無いのだ。


とにかく格安でも狭くてもいいから部屋を借りて親に大丈夫だと証明しなきゃならない。


『何でみんな高いんだよ…』


「どうしたの~千秋ちゃぁん?」


ヒョッコリと何処からかホンワカ様、もとい胡桃ちゃんが現れた。アレレ~?可笑しいな~?ここは校舎裏の更に塀があって結構せまくて生徒は普通行かない、と言うか知らない名スポットなんだけどな~?


「ん~?どおしたの~?」


汚い私の眼に純真でキラキラ美しい天使の瞳が写りこんでくる。ヤベー超可愛い。

私はスマホを閉じてパーカーのポケットに入れた。


『えっとね…うん、長年逃げてた過去からの制裁かな?』


「よく判んないけど、かぁっこいいね!!」


ちっとも格好よくないよ、薄汚れているんだよ胡桃。本当に胡桃はビューティホーだよ


……とまぁボケるのはここまでにしといて、私は今、ちょっとだけ焦っている。


お忘れの方もいるが、伊集院の人がクリスマスの日に私が倒れた情報を何故かもっていたのである。父はそれで私の元へ駆けつけていた。


伊集院家の誰かは分からない。もしかしたら和人会長の親かも知れないし、分家のどれかかもしれない。……そして、胡桃の親かもしれない。


「どうしたのぉ?そんなに見つめて」


『いや~休み明けても胡桃は可愛いなーって』


「本当?うれしい!」


グーにした両手を豊富な胸元にギュッと揃え、可愛らしく嬉しそうにそういった。


ホンワカ様は今日も通常運転のホンワカ様でフワフワ様である。例えるならばそう、綿飴みたいだ甘くて柔らかくて、引っ付いたら離れない恐怖のお菓子だ。


「そういえば~千秋ちゃんは休み中どうしてたの?」


ホンワカ様がそういった。……つまりホンワカふわふわ様は琴音さんとの一件を知らないのだろうか?いや、もしかしたらカマを駆けているかもしれない。ここで嘘をいったら駄目なのかも知れない。


ならばここは上手い言い訳をするしかない。


『……女性を泣かせて男に迷惑かけた』


もっと他に言い方あるだろ。


「え!?女性を泣かしたの!?なんでそんなことに!?」


『えっと…一人の男性が私に構ってて女性がそれに嫉妬して、理不尽言い分に私はキレた的な?』


これじゃ只の修羅場のもつれだ。多分この言い分を聞いて親子喧嘩だと分かる人間は少ないだろう。


「そっか…じゃあ何時もどおりだね!」


と可愛らしく胡桃は言った。いや、全然可愛くないこと言ったぞ今なんていったんだこの子。


と言うか私のイメージを聞きたい。私はいったい普段どんなイメージなんだ?アレか?常日頃から修羅場ってると思っているのか?んなわけ無いだろ


……月に3,4回位だよ。


現実逃避をしている時に胡桃ホンワカ陛下が近寄って思い出したように口を開いた


「あ!!そういえばお昼はどうするの?」


上目遣いにそう言ってきた。ヤベー胸デケー


お昼ねえ…今現在、私の懐事情はそこまで良いものではない。臨時バイトの掛け持ちを大量にしているので金はそこそこ貯金しているが、まだ部屋の物件が決まっていない以上、無闇に金の流出はさけたい。


かと言って昼飯抜きももう駄目だろう。医者から早死にするとさえ言われてしまった。…なので


『胡桃、また一緒にごはん食べよう』


「うん!!」


胡桃に奢ってもらおう。

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