第54話 家の前
『...大丈夫だよね?』
私は自分の家の前で立ち往生していた。実家に帰ろうと意気込んだ私は電話で家に帰ることを伝えることに成功した。いや、成功したのかは分からない。
電話をかけると留守電になっていた。なので私は自分の要件だけを言った。今週のクリスマスに帰ること、もし不都合が有れば連絡して欲しいこと、一緒に食事をしたいこと。
自分の家が結構気まずいのは分かっている。新しい母と上手く折り合いが付けれなかった私はずっと彼氏達の家に泊まり、時にはネトカフェやホテルで泊まり、荷物はコインロッカーに置いて生活していた。
たまに帰る時はヒッソリと帰り、自分の部屋から消耗品を補給してヒッソリ出ていくという感じだった。なんだコレ?
とにかく私は自分の家の電話機に連絡を入れ、不都合があれば連絡してほしいと告げた。その結果、連絡は来なかったので、きっと大丈夫だろうと私は意味のない自信をもって家の前にたっている。
『よし!』
ピンポーン
インターホンをならしてみる。これで出ていけと云われたら帰ろう。いや、ここが私の家なんだけど。何で私は自分の家なのにインターホンを鳴らしてるんだろ?
そんな思考に囚われてる間も誰もくる気配がない。もしかしたら、今はまだ帰ってないかもしれない。少しまってみるか。
「お前、なにしてんだ?」
天王寺は寒い夜の雪の中、体育座りをしている千秋に話しかけた。しかし、千秋は何も言わないでいる。
「おい、根倉ブス!聞こえてんのか?」
しかし、千秋に反応はなく天王寺の嫌味にもピクリとも動かなかった。それに対して可笑しいと感じた天王寺がしゃがみ千秋の顔を無理矢理自分の方へ向かせた。
「お前、顔真っ赤じゃねーか!?」
明らかに熱を出している千秋のおでこを手で確認すると、信じられない程に熱かった。普段は低温体質な千秋では考えられない。
天王寺はすぐに自分が乗っていた車にのせようと千秋を抱えて中に押し込んだ。すぐに天王寺の家に運ばれ、お抱えの医者が千秋を診断し、千秋は白いベットへと寝させられている。
「あいつ、どうなってんだ?」
天王寺の質問にお抱えの腕のいい医者がカルテを見ながら冷静に話した。
「長時間寒い場所にいた凍傷と熱が発生しています。そして過度のストレス反応も見受けられ...これは詳しく調べなければ分かりませんが、拒食症や栄養失調を引き起こしているかもしれまん」
それを聞いた天王寺は苛立った。何に対してかは分からない。けれど何故か自分の中には怒りがあった。今はそれを圧し殺し、医者に下がっていいと伝えた。
『うっ...おぇぇ...ハァ...ハァ...あれ?ここはどこ?』
何度目かの嘔吐を繰り返して、必死に呼吸をした後、千秋は意識を覚醒させた。無理な嘔吐を繰り返した為か生理的な涙を流し、目をキョロキョロさせて天王寺の姿を発見した。
「よう、起きたか?」
『えぇーと...ゴホッ!おぇっ~...どういう状況ですか?』
まだ頭は痛いらしく、千秋は顔をしかめた
「お前が自分の家の前で倒れていたんだ。何があったんだ?」
その言葉で思い出したのか、千秋はあちゃー...と手を額にあて、何かを諦めたような目をしたあと何時もの様に言った。
『家族と一緒に食事がしたいと伝えたんですが...ハハ、誰も...いませんでした』
何時もの様に嘘臭く、何時もの様に何処か冗談っぽく、何時もの様に嘘と本音が混ざりあった言葉をいいながら...
涙もながせないままに、千秋は笑った。
何で私はこういう鬱系を無性に書きたくなるんだろ?
クリスマス、終わりましたね。




