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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
少年少女のセレ祭はまだ終わらない。
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第53話 胡桃

「千秋ちゃんはどこに行ったの?」


「もう帰ったで」


そう言うと胡桃はションボリとした顔をした。打ち上げから抜け出して来たらしく、さっきからキョロキョロしていた。


「...随分とリカに意地悪してたみたいやな」


冗談混じりに和人は言う。実際に胡桃のリカへの当たりは酷く、千秋からクレームが来たくらいだ。それに対して口を尖らせて胡桃は反論した。


「だって、千秋ちゃんに酷い事言うし...千秋ちゃんが自分から歩み寄ってたんだもん...」


つまりは嫉妬なのだ、千秋は少し人間との関わりをうんざりしている部分がある。なので来るもの拒まず、去るもの追わず、なのだが今回は珍しく自分から歩み寄っていたのだ。


それが胡桃にとっては苛立つ原因となるのだろう。自分が親友なのに、何であの子に構うんだと。


胡桃と千秋の関係は少し歪なもので、正直な話、千秋が器用に立ち回っているお陰でなんとかしているようなもんである。その辺の自覚が千秋にも胡桃にも無いのが可笑しな部分だと和人は思う。


「ええか?千秋は胡桃の所有物や無いし、リカはちゃんと反省しとってん。せやから......まぁ、せやからって訳では無いんやけど余り干渉したるなや、親友でもプライバシーがあるねん」


「...うん」


俯きながら返事をした胡桃。過去に千秋の家庭環境や千秋の家族関係を調べようとして、何度も和人に止められたり妨害された事がある。なので胡桃は千秋の家庭を雰囲気で察してはいるものの、詳しい事は分かっていない。


「確かに、あの子は可哀想だったね」


あの子とはリカの事だろう。胡桃は哀れんだような目をしながら笑った。


千秋は胡桃を女神だと言ったことがある。哀れな子羊に慈悲を与え、無自覚に人を見下し自分は汚い下界に舞い降り無い汚れなく美しき女神だと。


これを聞いた時、和人は的を得ていると感じた。正直な話、皮肉や嫌味も込められているのだが、すんなりと納得してしまった。


きっと千秋はその女神様が哀れむ子羊の一匹にはなりたく無いのだろう。


「人は羊とちゃうのになー...(ボソ」


「どうしたの?和人兄様」


「なんでもないで」


「そう、私もう帰る」


千秋のいなくなった学園に興味を失せたのか、胡桃はそう言った。


「気をつけて帰れや」








胡桃は胡桃なりに悩んでいた。自分は千秋を好きではあるが、千秋はどう思っているのかが皆目見当も付かないのだ。過去に友達になった人達は皆自分に心酔してたり、最後は嫌って使い物にならない者ばかりだった。


最初は普通に接してしたのに、心酔して単なる信者になった人、最初は好きだと言ったのに、嫉妬して嫌った者。違いは有れど、みんな分かりやすかった。しかし千秋は違った。


最初から最後まで自分の扱いを変わることをしない。いつまでたっても自分を明かそうとはせず、ポーっとされるがままにして、意見が無いように見えて、実は単に守るものが守れたら他はどうでも良いだけだったりする。


「どうなんだろー?」


『どうしたの?』


「あのね、千秋ちゃ...千秋ちゃん!?」


校門で手をヒラヒラさせている千秋が居た。胡桃は感激やら嬉しいやらで気分が高揚し、思わず抱きついてしまう。


「なんで?なんで!?帰ったんじゃなかったの!?」


『胡桃が寂しがると思ってさ』


「ちょー寂しかったよ!キャーっ!!」


胡桃はそのまま千秋の胸(貧乳)に顔を埋めて嬉しそうに笑った。それは心からの悦びであり、年相応の少女だった。


結構強い力で飛び付かれたが、千秋は難なく受け止め優しく頭を撫でた。


『今日は車じゃなくて、歩いて一緒に帰ろう』


「うん!いっぱいいっぱい話したいことがあるの!!」


少女たちは暗い夜道を寄り添いながら楽しげにかえった。





(あ!でも夜道はあぶないよ!?)


(大丈夫、変な人が現れたら私が叩きのめすから)


(千秋ちゃん格好いい!!)

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