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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
愛憎うずまく波乱のセレ祭 当日編
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第45話 セレ祭当日④

「なんで...この子がいるの?」


安藤さんは忌まわしげに此方を見た。胡桃はニコニコと笑っており、展覧会の写真をキョロキョロと見ている。


私の袖をギュッと離さないので、体温が直に当たっていることに胡桃は気付いているのだろうか?めっちゃ体温高いな胡桃。


なんて現実逃避をしていても結果は変わらない。取り合えずは安藤さんに説明しなくては。


『えー...とですね、一緒に行きたいと胡桃が望んでいたので...』


「こんにちわ~」


説明の途中で、フンワリと可愛らしい声が聞こえる。首をコテンと傾げてニコニコしている。

安藤さんは、その笑みにちょっと遅れをとりながらも対応する。


「こんにちは胡桃さん。すまないのだけれど、今から仕事をするから、出来れば外してくれるかしら?」


と、大人の対応とも呼べる態度で接した。前に自分のプライドを壊されたと思っているからだろうか?


「えー...と、何藤さんだっけ?いいや、なんとか藤さん、そこをどうにか出来ないかな?」


胡桃はニッコリと安藤さんの苗字を覚えていないかのようにいった。しかもタメ口だ。本当に胡桃は恐ろしい。現に、安藤さんは顔を真っ赤にしている。


「いいかげんにして!部外者は出ていってよ!」


若干素の言葉に戻って安藤さんはそう言う。...安藤さんはやっぱり幼いというか、やはり年相応の女の子なんだな~と思ってしまう。


努力が実らなかった事をばらされれば恥ずかしく思うし、自分を忘れられたら怒る。自意識とネガティブが合わさった思春期特有の普通の女の子だ。


こういう正直な所が私は好きだ。きっとさらけ出しても大丈夫な環境で育ったのだろう。...ちょっといいな


『胡桃、やっぱり戻ったほうがいいよ。クラスの子達も望んでいると思うし、まだ仕事あるでしょ?』


まぁ実際はクラスの子達が勝手に胡桃の仕事をするだらうと思うから、これは口実だ。

胡桃はちょっと悩む様子で...多分フリだな。


元気にニコニコと、いつもと同じ...いや、いつもより気合いの入った様子で言った。


「うん、分かった!物凄く残念だけど我慢する!!これ以上は本当に迷惑になりそうだし...」


と、そこで言葉を区切り安藤さんを一瞬だけチラっと見て


「それに...あの子が可哀想だしね」


優しく易しく、フンワリと慈愛の満ちた哀れみにも似た綿菓子の様な笑みでそう言った。嘲り笑う、文字道理の嘲笑。その目に安藤さんが写っているようで写っていない。


「じゃあね、千秋ちゃん」


と、すぐにいつもの胡桃に戻って最後まで安藤さんの名前を言わず小走りで立ち去って行った。


どうやら女神様は見限ったのかも知れない。こんなものかとその他大勢認定をしてしまったのかも知れない。私が関与しているからあのような態度で接し、彼女は


自分が認識してないと相手に認識させた。


これは天性の愛され少女だから出来る芸当であり、無条件で特別視される者の特権ともいえよう。


と、分析するのはそこまでにしといて、私は安藤さんの方へ寄った。安藤さんからすればトバッチリ以外の何物でもないだろう。


『あの...すみません。なにか』


私は悪くないのに何故か謝らなければならないように思う。


「別に...大丈夫よ」


私の手を振り払い、睨みながら立ち上がる。

少し悔しげながらも、安藤さんはまだ心が折れていない。強い精神...というよりかは、違うものに対しての信仰の方がつよい感じがした。


そう、キリスト教のマリア様に見捨てられても仏教の観音様を信仰してるからまだ大丈夫と言う感じに近い気が...


「あら、リカじゃない」


後ろから声がした。冷たいような声でどこか懐かしく、出来ればもう聞きたくなかったような声が聞こえた。


私はまだ安藤さんの方を向いて振り返らない。安藤さんはそんな私の心境に気付いているのかいないのかは知らないが、定まっていない目を見据えて言った。


「私には...お母様がいる」






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