第44話 セレ祭当日③
映画が終わり、私はシアタールームから出る事にした。正直な話、周りの目が気になったのも理由の1つだったりする。
「胡桃ちゃん可愛いかったよ!!」「本当最高!!」「キャー!!天使!!」
「そんなことないよ~」
外に出ると、胡桃は賞賛する人達に囲まれていた。先輩後輩異性同性問わず囲まれており、胡桃はニコやかに対応している。
可愛いな~......と思うと同時にちょっと、うすら寒く感じてしまった。まぁこれは私の嫉妬なのだろう。もしくは周りの溺愛っぷりが恐かったのかもしれない。
「あー!!千秋ちゃん!!」
私は胡桃に背を向けて移動しようとしたら、背中に衝撃が走った。どうやら抱きつかれたみたいだ。
「千秋ちゃん!!みにきてくれたの~?」
エヘヘと、周りに花が咲いたようなホンワカとしてフンワリとした笑みを私に向ける。あらやだ可愛い。
『あー...うん、そんなところだ』
曖昧に返事する私は、正直な話ちょっと周りの目が気になっていた。そりゃそうだろう、平等に慈悲や愛をくれる女神さまがこんな女に全部渡しているんだから。
「嬉しいな~やっぱり私達は親友だね!」
可愛らしく、ニッコリと効果音が付きそうな笑みは何故か有無を言わさない迫力があった。
『うん、そうだね』
正直な話、私は会長にチケットを渡されなかったら行ってなかったと思うし、それさえ胡桃が会長に頼んでいたから親友云々は関係無いような気がしたが、それを言うのは藪蛇だろう。
「そういえば......」
と、そこで区切り静かに笑みを浮かべて首を傾げながらこちらだけに聞こえる声で言った。
「あの子はどうしたの~?」
その声はとても優しく綿菓子のようにフワフワとしていながら、そのなかには針が入っているような感じがした。
甘くて柔らかいお菓子に釣られて食べてみたら、中にあった針で怪我をする感覚。
『あの子って誰かな?』
と、私はすっとぼけてみた
「ほら、同じレプラの女の子だよ~」
まがりなりにも1つ年上の先輩をあの子呼ばわりとは......しかも名前すらも呼ばないところがちょっと怖い。
『安藤さんとは現在別行動でこのあとに合流するんだ。』
「へ~あの子と行動か~」
私はさりげなく、名前をだしてあげたが胡桃は一貫としてあの子呼ばわりをする。
胡桃は性格が悪い訳ではない。むしろ優しくていい子の部類に入る女の子だ。純粋だし、綺麗な心だと思う。しかし、それは全ての我儘を言っても大丈夫な環境や、周りに愛されるからだ。
彼女が世界滅亡を本気で望めば5時間後にはその願いが叶えられるだろう。
全ての我儘を叶えられ、全ての願いをかなえる環境にいる彼女は結果的に優しく純粋に育ったのだ。
『あのさ、もう行くね。合流しなきゃだし』
「え~行っちゃうの~?」
ほよほよと、悲しげに上目遣いにそう言う胡桃。もし私が女もいける両刀使いだったら大変な事になってただろう。
やだな~...と裾をひっぱる可愛らしい行動をする胡桃とは対照的に周りの反応はさっさとどっか行って欲しそうだった。
さっさと行けばいいのに...。胡桃ちゃんの腰巾着。どっか行けよ。
私の被害妄想でなければ、そんな事を考えていそうな人達が沢山いる。
『ほら、私は仮にもレプラだしね』
「む~...」
それでも納得出来ないと胡桃は頬を膨らませる。その姿はとても可愛らしく、キューンとする。私が男だったら大変な事になってただろう。
すると、なにか思い付いたように
「そうだ!!私もいく!!」
と宣言した。周りの目がすごく怖いし、表情も露骨になってきてる。
『いや、あのね...』
「いいでしょ!視察なんだし!邪魔はしないよ!」
テコでも動かない強い瞳を見て、説得するのはもう諦めた。




