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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
愛憎うずまく波乱のセレ祭 準備編
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第40話 リカの理不尽な激昂

さも当たり前の様に、普通に疑問をしている様に、子供が純粋に質問している様に、何処かを嘘臭く、そして本音をごっちゃにして笑う彼女はそう言った。


『私の名前って何て言うの?』


「...っ...」


言葉に詰まると言うのはこういう事なのだろうとリカは思った。

自分は一体何を質問されているのだろうか?ふざけているのだろうか?


何を...当たり前の事を...


そんな一瞬にして動かなくなった脳を無理矢理に動かし、彼女は短い深呼吸をして言葉を吐き出した。


「あなたの名前は千秋でしょ」


『うん、私の名前は ちあき だけど、その漢字が解らないんだ。千秋なのか千晶なのか智晶なのか千彰なのか


便宜上は千秋でいるんだけど、これでいいのかな?って』


やはり、どこか作った様な本音を混ぜこんだかの様に笑う彼女は当たり前の様に言った。


それに対してリカは何かを言わなければならないと思った。この訳の解らない質問をする彼女に何か言わなければならないと思った。


「何...言ってるの?そんなの...普通...分かるでしょ?」


『教えてもらう前に離婚しちゃったから。殆ど育児放棄だったかもね』


あっけらかんと言い放つ彼女。

その言葉の意味を理解出来ない程、リカは愚かでは無かった。

育児放棄。

そんな非現実な単語が浮かびあがる。本当は育児放棄ではなく、それに近い何かである。母の薫子は愛情はキチンと存在してはいた。千秋にちゃんと育って欲しくて色々していた。


ただそれが伝わっていなかった。


寧ろ、夫ですら伝わりにくい愛情をまだ小さな子供である千秋に分かれというほうが可笑しく、最終的には傷付け無いように距離をおいた。


結果、それは育児放棄や虐待と何ら代わらない物となってしまっていた。これが薫子が離婚に至った理由である。そして、薫子を妄信的に慕い誇りに思う彼女はその事実を受け入れるのは不可能だった。


「わ...しな...い...!」


『安藤先輩?』


「お母様はそんなことしない!!!」


涙目で、リカは千秋を見据える。

水の粒で一杯になった目で頬を真っ赤にしながらテーブルを叩いた。


目の前に判断材料は沢山転がっていると言うのに。薫子の離婚歴、何かが抜け落ちている娘、周りの噂、その他にも決定打になりそうな判断材料はあるが、彼女は認めない。


自分が尊敬し、崇拝する女性はそんな事はしない。何でも出来て完璧な彼女はそんな非人道的な事はしない。もしそれが真実であろうと、リカはそんなのはどうでもいい。


目の前の現実と理想とその他を一気に、逃げずにある意味正面からぶつかっている。


いや、本当は分かっているのかも知れない。まるで毒の様に少しずつ渡された真実に犯され、苦しめられながらも彼女は激昂することで振り払う。


「お母様はそんなことしない!!お母様は正しい人だ!名前なんて......どうでもいいじゃない...何で...分かってくれないの...」


遂に目からは涙の粒が出てきて、ポロポロとまるで真珠のように落ちる。


彼女が怒っているのは余りにも理不尽な事だ。

多分いっていることも最悪だと思うし、言っている事も穴だらけで論破しようと思えば容易く出来る。


そして千秋はここで怒る権利があり、理不尽な言い分に対して腹をたてるのも許される。許されるべきた。


しかし千秋は泣いている年上の少女に腹をたてる事が出来なかった。

余りにも真っ直ぐで、余りにも純粋で、現実と理想を持ち愛する人の為なら感情を優先して理不尽に怒ることが出来る彼女が千秋にとって....「」かった


『わかりました。すみません』


素直に千秋は謝り、ハンカチをリカに渡した。

リカは無言で受け取り、目を拭く。


千秋は気まずくなった空気をどうしようかと思った。まるでサンタクロースを信じている子供に、「そんなものは無いよ」と、大人げなく言ってしまった気分だ。

年上の少女に対してその表現はどうかと思うが、心情的にはその表現が一番しっくりと来た。


なので彼女は話題をかえるために明るく言った。


『明日、ついにテレ祭当日ですね』


楽しみだと千秋は...やはりどこか嘘臭く笑った。


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