第33話 話し合いと千明のメリット
主人公の前母の名字判明!!
『そもそも何で私?レプラって確か複数いたと思うんですけど』
頬杖をつき、下ろした髪をいじりながら千秋は言った。
「天王寺から聞いてへんのか?今年からこの学園でのレプラは一人に決まってん」
『私を過労死させる気ですか?』
レプラの仕事はハッキリ言って多い。まずは予算整理、誰かが不正に予算を増やしたり減らしたり、自分の私財から予算を出す生徒まで現れる事がある。しかも金持ちだらけの上流階級達の金整理は莫大であり、そんな物を余裕でこなして人心掌握をこなしてたのは和人位な者である。
「アレはな、過去の歴史を見ても、レプラの中には友達とか自分のクラスとかワイロとか皆色々あって可笑しな事になってるのはもう知ってるから、いっその事最初っから俺に心酔させて独裁政治にしたから・・・案外出来てん」
『・・・・時々貴方は凄いのか凄くないのか訳がわかりません』
腐ってドロりとした目で和人を見た。この男は普段はヘラヘラして体がヒョロッとしている癖に人を従わせるのは得意であり、度胸も備わり過ぎて、神経が図太い通りこして最初っから無いんじゃね?と度々千秋が・・・・・・・過去に抱いていた感想だった。今は和人がもっと得体が知れなく、意外と普通な人間だと理解している。
「でも一々人心掌握するよりかは、一人に絞ってそいつにやらせれば話は早いって事になると思って」
『だったら複数の中で纏める人が居れば良い訳ですよね?じゃぁ胡桃はどうですか?あの子は天性の愛され少女なので上手くいけると思いますよ』
簡単な事だ、胡桃のフワフワ会話でゆっくり諭されれば大抵の人間は断れないし、嫌えない。あんな可愛い子を完全に嫌える子は余りいないのでいけるだろう。最悪はソファに座ってニコニコ笑っている胡桃を置いとけば皆不正は出来ないし、やる気も出てくるだろう。
「それやったら今度は生徒会が成り立たへんし、可愛い妹分を置けれへんわ。考えてみろや、胡桃は優しいからホンワカと一人ずつ相手して、それに嫉妬した皆(生徒会役員)が乱入して何も進まへんようになるで?」
容易に想像がついてしまった。そして原因は誰だと言う質問で会長が私の名前を出され、本格的に攻撃対象にされるだろう。そして傷付いた私は思考力をなくして、優しくしてくれる胡桃に絆されそのまま養子にされ・・・
『うわっぁぁあ!?なに!?何のイメージ?さっきのリアルな脳内映像なに!?』
頭を抱え、ガンガンとテーブルにぶつける私。ヤベーな最近変な方向へ思考が飛びまくる。アレか?久しぶりに母(今)にあったからかな?
「ちょ!何があったん?・・・ってガンガン煩いわ!!」
『あ、ごめんなさい。さっき脳内映・・いや何でもないです』
混乱した時は口を閉ざすのが一番だ。
無理矢理に顔を作って蜂蜜を飲む。冷静になれば普通におかわりすれば良かったのに蜂蜜だけ入れるって可笑しいよな、会長は気味悪そうに見てるし。
それぐらいの冷静さを蜂蜜で取り戻して本題に移る。
『とにかく、私のメリットが分かりません。というかデメリットしかないですよ?』
レプラだけが許される特権やら、箔が出るやら、各位が上がるやらは魅力的に見えるが私にはいらない、寧ろ普通校舎の私がそんな物をもっても邪魔になるだけだ。別に周りからの嘲笑も妬みもどうでもいいけど、自ら面倒事を背負い込む程のボランティア精神は無い。それは会長も理解してるらしく
「まぁレプラの特権や各位が上がるやらオプションが付くやらは千秋にとっては興味無いと思ってるし、レプラ自体にメリットが有る訳とちゃう」
『だったら・・・』
「もう一人・・・レプラがおるねん」
ニヤッと、三日月を下にしたようなちょっと怖い笑みを浮かべて言った。
『いや、レプラは一人って言ってたじゃないですか』
そう、この学園では・・・ん?
「他校からもう一人レプラが来るねん・・・」
成る程、やけに〔この〕学園と言っていたのはそう言うことだったんだ。まぎらわしいな~
『でもさ、何でもう一人レプラが来るのが私のメリットな訳?』
そこが疑問だ。レプラがもう一人来たところで私のメリットなんて無いと思う。凄く優秀な子がくるとかかも知れないが、それがプラスに成るのは私がレプラをやると決めた後で、今の私にはメリットがない。
だったらもう帰ってもいいだろうか?一旦私は頼んだショートケーキを食べようとフォークを手にした時
「その子の名前は安藤リカって言うねん」
ガシャン
手が滑ってフォークを落としてしまった・・・何を動揺しているんだ、安藤なんて有り触れた苗字だし、別に決まった訳じゃない。もしかしたら本当に単なる一緒の苗字なだけかもしれない。頭の中で否定の言葉が渦巻き始める。
・・・けれど私は落としたフォークを放っといて、次の言葉に耳を傾けていた。
会長は、ニヤッとした顔で言った。それは楽しそうな悪魔のようであり、泣きそうな子供みたいでもあった。
「千秋の母〔だった〕ひとの再婚相手の娘・・・・つまりは安藤さんの娘や」
私の母だった人は他の人の母になったらしい。




