第30話 可愛い?と合流
若干鳳がデレます
「それにしても・・・千秋さんはあの人達に怨まれることでもしたのですか?」
その質問に対して千秋は肩をすくめながら
『してないよ、あの子は奈美と言ってあだ名はなっちん、団地にいた時の・・・まぁ知り合いかな?仲はそこそこに良かったよ』
さりげなく、友達と言わないところを見ると千秋はさっきの女、奈美に良い感情を抱いていない事が分かる。しかし、仲が良かったと言っている辺り団地に住んでた時はある程度の友好関係があったらしい。
奈美は千秋が引っ越した後も立場が強く、結構出来の良い子であった。
そこそこ頭の良い中学に進学したのはいいが、彼女は平均について行くのがやっとであり余り成績が良くは無かったらしい。そして学校でも少しずつ立場を失ってきた彼女に親は聖セレント学園を進めた。
言わずと知れた名門中の名門であり、特別校舎は無理でも普通校舎ならまだ望みがある。だから奈美は受験した。しかし入学希望者が後を絶たない、日本一人気のある学園は勿論普通校舎も難関であり、奈美は受験に失敗した。憧れの可愛い制服と綺麗な校舎、なによりセレント学園と言うブランドがつく。そんな夢ははかなく消えた。
因みに千秋は実は試験を受けていない。履歴書の〔特技・資格の欄〕にビッシリと今まで取った資格と免許を書きまくり、入賞と優勝したのも書きまくり、最終的に異例の23枚分追加してかいた書類を送った次の日の朝に合格通知が送られてきたのだった。
聖セレントは世間体を気にはするが、スポーツでも芸術でも優れた人間は優先して入学させる。これが数多くの有名人と偉人を出してきた理由だろう。
『なっちんは団地の中じゃ一番可愛くてリーダーっぽい女の子だったんだ』
「井の中の蛙で社交儀礼を真に受けて偉そうにしてたんですね」
千秋が良い様に表現した奈美への評価を一瞬にして最悪へと変えた鳳の毒舌はある意味才能なんじゃないかなと千秋は思った。大体あってはいるが、それが逆に怖い
「それに、貴方がいるんだからあの女が一番可愛い訳ないじゃないですか」
『・・・え?鳳くんって私を可愛いと思ってるの?』
一瞬、何をいってるんだと鳳は思ったが、さっき無意識に出た言葉の意味を理解し
「?・・・あ、いや・・ち、違います!!えー・・と・・アレです!貴方が化粧してる時は、胡桃さんの引き立て役になる程度にはそこそこ綺麗ですから、あんな女よりはマシってレベルですよ!?これは一般的な見解であり、私の私情は一切入ってないですからね!?それでも胡桃さんには敵いませんから」
一気にまくしたてて、真っ赤になりながら反論する鳳だが最初に言った言葉を否定せずに言っていた。
さっきの笑顔を見てから少し変になっていると鳳は考える。普段表情を作っている女の子が不意打ちで素の笑顔を見せているから、驚愕しただけだと。あの女は年上好きで男癖悪くて18歳以下の奴はお断りだと言っている女だ。
『大丈夫?そんなに言わなくても判ってるよ』
千秋は至って冷静に、鳳のいつもの罵倒と受け取った。長い罵倒は聞かない主義な為に遠まわしに、千秋は綺麗だという言葉を言っていることに気が付かなかった。
「おーい、大丈夫やったんか?二人とも」
手をヒラヒラさせて来たのは関西弁の男と、その男と一緒にいる小さな少女だった。
『どういう事だですか?アホ会長殿』
若干日本語が可笑しくなっている千秋は、和人に詰め寄った
「たまたま、二人を見つけてそろそろ合流しようかと思ってたら、変な奴等と喋ってたからどうしたんかな?って思って様子を見ててん」
『そういう時は助けろ』
「千秋ちゃん、あの子たちに迷惑かけられてたの?」
「胡桃ももれなく付いてくるで」
『前言撤回、ありがとう会長。ううん、全然迷惑かけられてなかったよ胡桃』
と笑いながら胡桃のフワフワの頭を撫でた。キャッキャと胡桃は嬉しがっている。可愛い可愛い。
話を聞くとどうやら、千秋が渡していたヘッドフォンを付けられていたらしく、会話が聞こえなかったらしい。有り難う会長。
ポン
どこからか行き成り現れた和人が鳳の肩に手をおいた。
「仲良くなったみたいやね」
「仲良くなんかなってません!」
振り払うようにした否定した。
「怖い怖い・・・でも千秋を守ってくれて有り難うな」
「別に・・守った訳じゃありませんよ」
「判った判った」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらまたポンポンと鳳の肩をたたいた。
『二人ともー!何しゃべってるの?』
千秋は胡桃を抱きしめながらひょっこり現れた。
「ん?なんでもないで」
『あやしいなー・・』
とブーブー言っていたが
「千秋ちゃん!もう時間無いよ!早く遊ぼう!」
グイグイと胡桃に引っ張られて、千秋は一緒にアトラクションへと行った。
鳳が抱く感情ってまだ決めてないですね・・・胡桃のことも本気ですきだと思いますし・・




