第27話 千秋とアレンクシス
「・・・」
『・・・』
~♪~♪
子供の国の音楽が流れ、ゆっくりと回るメリーゴーランドの馬車の中で二人は沈黙していた。
何か喋ったらどうなんですかね・・・
私は目の前の女を一瞥しながら、苛立っていた。メリーゴーランドが動き、景色が回った瞬間に彼女は一言も喋る事なく、窓からずっとどこかを見ている。
それが私にとっては面白くありませんでした。待ち合わせの時も、このように沈黙していましたが、その時は彼女は気軽に喋りだしていた。
でしたら今度も軽く喋ると思っていたのですが・・仕方ありませんね、私が喋ってあげましょう。
「一体何の景色を見ているのですか?」
ひとまず、辺りざわりの無い話題をだす。
普通の女性ならば慌ててこっちへ視線を戻す筈なのです、しかし彼女は目線を変えないまま答えた
『20代後半ぐらいのいい男がいるんだけど・・もう帰りそうなんだよね・・・このドア壊せないかな?』
返って来た言葉は予想の斜め上でした。
狭い中で細くて長い足を出し、軽く蹴り始め。見た目だけならモデルでも出来そうな美人なだけにその行動が酷く残念だ。
「貴方、遊園地まで来て何してるんですか?そんなんだから皆に嫌われてるんですよ」
『嫌ってるのは主に君たちだけどね・・・ヤベ本当に出口に行っちゃった』
目を見開き、ガッカリした顔をしながらようやく私の方へ視線を戻した。・・・本当に何なんですか・・
「はぁ~・・何でこんな人を会長は評価してるんでしょう・・」
『まったくだよ、あの人は苦手だ』
「それはそれで気になりますね、貴方達は一体何があったんですか?」
千秋さんは会長の事となると、警戒したりタジタジになったりします。
例えるなら、やたら撫でまくってくる人間に対してシャーシャーと鳴きながら威嚇する猫の様だ。けれど彼女は本質的に嫌ってるのでは無いらしい。
『結構長くなるから省略するね』
「いいですよ」
『色々あって殴り合った』
成る程・・・意味分かりません
「省略し過ぎです」
と言うか二人とも喧嘩出来たんですね・・
私が抱くイメージや印象は、二人ともどちらかと言うと頭脳タイプの人間で、どちらともヒョロっとした体なのも喧嘩出来なさそうに見える理由でしょう。
こう言うのをやりそうなのは天王寺先輩や桜ノ宮先輩みたいな体を鍛えている如何にもな人だ。
『うん、私も会長いも最初は君たちのご想像通りの頭脳戦とか心理戦する展開だったけど・・・』
「展開だったけど?」
一体何があったのでしょうか?もし二人が対立したとしたら、結構な理由もあると思いますし、二人とも普段は基本的に他人事目線で似非平和主義を気取ってる割りに実はキレるとヤバイ人達ですから
もしかしてとんでも無い理由が・・
『もう殴った方が早いから』
「・・・」
ある意味とんでもない理由でした
『鳳くん、今私をバカだと思ったでしょ?』
「元からバカだと思ってました」
『酷くない?』
「訂正します。素晴らしい結論ですね、いや~私には想像できませんよ、何でこんなにもアレな感じの回答を導きだしたのか理解出来ませんし、理解したくも有りません。馬と鹿を一緒だと言い張ってる様な独創的な考えの持ち主ですね」
ニッコリと丁寧に言った。
『遠回しに馬鹿って言ってるよね?』
「いえ、頭はいい方だと認めてますよ」
ただちょっとの残念な部分が台無しにしてます
と、私が呆れにも似た感情を抱き初め出してたら
~♪~・・・
調度その時、音楽と動きがストップした




