第22話 生徒会室 若干鳳視点
鳳アレンクシスにとって、天崎千秋とは奇妙で虚妙、掴み所がなく、距離感が図れない・・・まるで幽霊みたいだな人間というのが印象だ。
常に飄々とした笑みを崩さず、怒る時もどこか冗談っぽく、表情をコロコロ変える胡桃とは違い、表情は変えるものの、全てが嘘っぽい千秋を鳳は苦手であった。
教室内での千秋は、根倉で一人ぼっちに見えそうながら意外と交遊関係を持っていて、人の顔色を伺って機嫌を取るのも得意な様で、クラスの中心のすぐ横にいる、引き立て役を進んでしている。
しかしながら、それに疲れている様でもあり基本的には単独行動を好んでいる。本当にこの女は何がしたいのか、そしてこんな女を何故胡桃が好きなのかも判らない。
優しい人ではあると思う。しかし千秋の優しさはどこか義務付けられてる様な人工的な物であり、対価の様に感じる優しさだ。
鳳の推測は間違っておらず、されども正解ではない。
彼女が引き立て役をするのは、自分の身を守る為であり、過去にそれで色々あって嫌になってるので、矛盾した行動はそれに伴っている。
そもそも千秋は優しくしてるのではなく、単に長年の癖で人の顔色を伺ってしまうだけなのだ。だからそこに彼女の思惑があるわけでもなく、見返りを求めてる訳ではない。あるとすれば、その場限りの関係で終わりたいと言う願いだろう。
彼女はやはり、軽薄で無責任で身勝手で矛盾した人だ。
とまぁ、こんな風に千秋への印象は概ねアレな感じだ。
だからだろうか、最早女とか以前に未知の生物の様に思っていた千秋が・・・
『あー・・えーと・・か、帰る』
「ええやん、もうちょっとおろうや」
『いや・・あの・・』
こんな風に目を泳がせて完璧に困った姿など、考えられなかった。
あの飄々として屁理屈をこねまくってのらりくらりと、かわすのが得意な千秋がそれを出来ていない。
『いや・・大丈夫ですよ!』
「ええやん、な?な?お菓子たべろや」
と、盆のなかに会長がよく食べる和菓子を押し付け、千秋は目をキョロキョロさせて嫌がっている。
はっきり言うと、千秋は和人が大の苦手なのだ。
天敵と言っても過言ではない。パーティーでダンスを踊ったのは、あくまでも一時のテンションであり、普通の精神だったら、何がなんでも逃げてた。
しかし、そんなの和人には関係ない。
「これ美味しいねんでー・・あ、お茶も飲むか?美味しい日本茶が・・」
まるで大阪のおばちゃんの如く、構い出す。
会長が千秋を高く評価し、気に入っているのは知っているが・・・これは小さい孫を溺愛する祖父さんみたいた。
「ほら、和菓子って美味しいで~甘いもん好きやろ?」
確かに自分は甘党ではあるが、甘さの種類が違う。
例えるなら、ケーキが好き孫にボケた老人がどっちも同じと饅頭をわたすようかな感じだ。
そしてボケた老人に困り果てた孫が思い付いたように
『あ・・あー!!そう言えば、鳳くんが困ってたんですよー・・ね!!』
いきなりこっちへ話をバトンタッチされた、千秋らしからぬ、不自然極まりない行動だ。
「なんや?困ったことって」
会長は、そう言われて視線を向けるが饅頭を未だに千秋の方へ押し付けている。
「えー・・と、千秋さんが胡桃さんと遊ぶ日が私と胡桃さんがやっと遊べる日で困ってたんです」
千秋は、少し安心したような顔もちをしたが、和人は未だに饅頭が嫌ならと、団子を押し付けている。
なんなのだろうか、何でそこまで食べさせたがるんだよ。
しかし、大事な生徒会役員の悩みなのでしばし、考える体をしながら、梅練りを千秋に渡して千秋はそれを机に置く。
「思ったんやけど・・無理やろ」
とてもシンプルで非常でどうしようもない事を言った。
「なんとか、なりませんか?」
「いや、無理やって。あの子の両親過保護やから家に出すのをめっちゃ嫌がってるし」
「・・・千秋さんのせいですよ」
『いや、何で私?』
「貴方が私の折角のチャンスを潰したんです」
物凄い勢いで千秋を睨み付ける。
しかし、千秋は視線をそっちに向けていないので、判らない。
何故ならば、諦めて御手洗団子を食べているからだ。
しかし、声は聞こえている
『だったら・・・君もいこうよ』
もぐもぐと、言った。あ、意外と美味しい。




