第21話 鳳の呼び出し
「おはよう!鳳君!」
「おはようございます・・一体これはどうしたのですか?」
と、鳳アレンクシスはギャラリーを見渡し、最後に千秋の方を見ながら言い出した。
最早千秋が悪いのは前提条件の様だ。
千秋もドロドロした腐った目を向けてヘラりと笑いながら
『んー?なんでもないよ、単に今度遊園地に遊ぼうって話をしてただけ』
と、千秋は左の手をヒラヒラさせながら言い、右手で胡桃の頭を撫でた。
胡桃は千秋の腰にしがみ付いており、千秋の無い胸に顔を埋めている。幸せそうだ
「へー・・そうですか、それは楽しそうですね。」
鳳は優しそうに笑っているが、目は本当に冷たくなっている。
「ところで何時行くのですか?」
『えー・・と、今週の日曜しか空いてないね』
それ以外は殆ど年上男とのデートだ
「うん!それでいいよ!ごめんね、鳳くん」
何故そこで鳳の名前が出るのか?そんな疑問を千秋は抱いた
「ええ、大丈夫ですよ・・・ちょっと千秋さん、お話があるので来てくれませんか?」
ニッコリと笑ってはいるが、殺気が立ち上っている
「私も行く!」
胡桃はただをこねるが、千秋はやんわりと胡桃を引き離した
『大丈夫だよ』
元々顔の形は整っている美人千秋の笑顔は胡桃を黙らせるのには充分で
諦めた胡桃は頬を膨らませらも、承諾した
『えー・・と何の様かな?鳳くん』
生徒会室の中で千秋は疑問をぶつける。相変わらずキラキラしている部屋だがまた模様替えしたらしい。
この間は和室風で今回は中世ヨーロッパ風か・・・
本来は生徒会役員しか入ってはダメなのだが、胡桃と千秋は許されている。
胡桃は生徒会長の親戚+愛されている為なのでいつでも入って来ていいのだが、千秋の場合は許可されていると言うよりかは、半強制的に呼び出されているだけだ。誰もが憧れる生徒会室だが千秋にとってはどうでも良く、正直言って帰りたいし関わりたくもない。
「取り合えず、紅茶でも飲んで話しましょう」
鳳はガラスのティーポットを取り出し、レモンティーを入れる。
レモンの香りが引き立ち葉もいい物を使ってるだろう。
『いただきます』
ピリッ・・
千秋は紅茶をテーブルに置いて一瞬だけ引きつった笑みをした
「どうしたんですか?口に合いませんでしたか?」
首をかしげて、どうしたの?と言うようなポーズをとる。
見た目麗しく、ロシア人外見な鳳の姿はそれだけで騙されそうになるだろうが内面を知っている千秋は騙されない。
ニッコリと千秋は笑いながら
『スパイシーな紅茶だね(毒を盛ったな似非紳士)』
多分、蜂を使った神経毒だろうと推測する。
舌の痺れ具合から、毒に耐性の無い人間が飲めば高熱及び身体の不自由をともなうだろう
しかも厄介な事に致死量は入れてなく、もし私がカップ一杯飲んでいたら、インフルエンザか何かだと判断されて終わりだろう。
薬剤師の元彼に教えて貰ったのが幸いだった。
とは言っても、まだ口の中の感覚が麻痺して何も感じない為、今の段階で毒を忍ばせられたら気づけないだろう
「驚きましたね、貴方は本当に何者なのかが疑問になります」
『私的には君の行動が疑問に思う』
苦笑しながら千秋は言った
鳳アレンクシスは、見た目の爽やかさに反して物凄く陰湿な男である。
陰湿・・・と言えば語弊があるが、単に性格が悪い。
「日曜日は私と胡桃が遊ぶ日だったんです」
鳳は千秋の質問にそう答えた。
『他の日にすればいいじゃん』
パーカーの内ポケットに常備してある茶の葉を新しいポットに入れ、ハーブティーを作りながら言った。
因みに茶を入れた理由は、解毒成分が高いハーブで、ある程度の回復を見込んだのとリラックス効果を狙った為である。因みに胡桃も千秋の入れた茶が大好きだ。
「そんな事出来ませんよ、胡桃さんと遊べる日なんて殆ど無いんです」
『え?そうなの?私が指定した日は必ず空いてるけど』
千秋は椅子に戻り、ハーブティーを飲みながら話した。
胡桃は千秋が遊べる日は絶対に空いている。なので基本的に胡桃は暇だと思っていた。
その事を話すと、鳳は苛立った様な顔をした。
認めたくない気持ちと、それが現実だと一応理解している様だ。
「それは千秋さんだからです、胡桃さんは基本的に出不精な一面を持っていて休みの日は殆ど家から出ないんですよ」
『嫌々、服とか靴とか色々買う為に出るでしょ』
「そんな物は仕立て屋事、屋敷に呼び出されて作らせているんです」
『散歩する時とか』
「屋敷内に凄く綺麗な庭があるので、いいらしいです」
そして、鳳は語りだす
「そもそも伊集院家は胡桃さんに対して過保護で溺愛しているんです。屋敷の外では何があるか分からないし、胡桃さんのお父様は気難しく怖い人だ、自分の愛娘に変な虫が付か無いように気が立ってるし、屋敷の中にすら入れてもらえるのにどんだけの時間が・・・」
ガチャ
話の途中でドアが開いた
「ん?どないしたんや、アレンに千秋」
アレンとは、アレンクシスを略した名前だ
千秋は現れた関西弁の男を見た瞬間に無言で反対側のドアから逃げようとしたが、腕を捕まえられた。




