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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
彼女の問題はまだ終わってない。
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彼氏と彼女 前編

感想欄で、恋人恋人している話が欲しいとあったので、書きました。

「ちーあーきーちゃーん」


誰も来ない開かずの図書室で本を読みふけっていた筈なのに、何故か妖怪メガネキツネが現れたと思った。


「何のようですか?和人先輩」


目を向けると、自分の先輩である、和人がいた。


和人は、千秋の先輩であり、セレント学園の元会長である。

ニヤニヤとした笑みが標準装備な掴み所のない男である。


故に、千秋にとっては余り好ましくない人物なのだが、和人はそんな千秋の心情を理解した上で、ニヤニヤと喋りかけた。


「鳳がなんや、告白で呼び出されてたから教えにきたんや」


鳳とは、千秋の恋人である。

年上好きで、男とっかえひっかえな千秋をどういう訳か愛してしまい、千秋もまた、自分の男関係を全部清算してまで、それに応えた。


千秋の『』が取れた最大の理由でもあり、二人の仲は良好である。


「なあなあ、どないする?」


別に二人の間を引き裂きたい訳ではないのだが、快楽主義の面白主義、しかも生徒会の仕事も鳳に引き継いで、ぶっちゃけ凄く暇な暇人である和人は、単純に千秋の反応を見てみたいのである。


しかし、千秋の表情は、何も変わらなかった。


「どうもしませんよ」


ゆったりと、何時も通りの表情で、千秋は続ける。


「私だって、昔は沢山の男と付き合っていたから文句を言える立場じゃない、何より鳳くんは魅力的だ。だから、彼女だろうと、どうこう言う権利は私にはないですよ」


彼女として、恋人として100点満点の回答と、表情だった。


「ええ言葉やなぁ……でも、汗で本がクッシャクシャやで」


手汗で本を湿らせ、辞書程に分厚い本を握力で握りつぶし、その手が尋常じゃないほど震えてさえいなければ…本当に100点満点だった。


「わわ!い、いや、違うよ?これはあの…アレだから!」


気が付いた千秋は本を放り投げ、慌てたように手をふる。

さっきまでポーカーフェイスだった顔は、年相応に慌て、目もグルグルと回っている。


早い話、動揺しているのである。


面白いと、和人の暇人魂に火をつけた


「そんなに気になるんやったら見にいこうや!」


丁度、呼び出しの時間だし、見に行こうと千秋の腕を引っ張りだした。

しかし、千秋が決死の抵抗を見せる。


「嫌だ!絶対にフラれる!可愛い女の子とかだったら絶対に私フラれる!」


「は?なにいうてんねん?」


いきなりそんな事を言い出した千秋に、和人が疑問を現せば、千秋は机にプッツンして、涙声で呪詛のような言葉を吐き出した。


「だって私、処女じゃないし、年上好きだったし、彼氏大量にいたし、全員本気だったし、目は腐ってるし、胸もないし、身長はやたらデカイし、隈は酷いし、いらない資格しか持ってないし、血縁関係面倒臭いし、何よりスッピンだと凄い不細工でゾンビみたいだから…」


プツプツと、自分の悪いところをスラスラ言い出す千秋。

否定して欲しいことを前提とした構ってちゃんな言葉ではなく、本気で自分をそう評価している。


千秋はこんなにコンプレックスが大きかったのかと和人は少し驚いた。


「(これも…千秋の本音やったんやろな…)」


千秋は基本的にヘラヘラと笑っていたが、実はコンプレックスが大きいほうである。


大人の男性が好きで、資格を取ったり、特技を極めたり、会話術を磨いていたのは、その実、自分の外面や内面に自信が持てなかったからである。


そして、そのコンプレックスを家族は勿論、友人や恋人にも言うことも出来ず、嫌われたくないと、常に笑っていた。


「(ちゃんと曝け出せるようになったんわ、ええ傾向やねんけど…)」


しかしながら、それとこれとは別であり、何より和人には許せない部分があった。


『不細工』この部分である。


ガシリと、千秋の両肩を掴んで、目を合わせて言った。


「ええか、千秋。甘えは可愛い」


突然そんな事を言い出した和人に、キョトンと千秋は頭に「?」を浮かべたが、それに構うことなく、和人は勢いに任せて言った。


「ええか!?お前はめっちゃ美人や!すっごい可愛い!めっちゃ魅力的や!だれより魅力的やし、胡桃を抜けば世界で一番綺麗で可愛い!俺が断言したる」


ちゃっかりと胡桃を除外したものの、千秋を本気で美人だと、綺麗だと、可愛いと言っている言葉は本音そのものであり、その本音は、千秋に響いた。


「和人…先輩」


思わず、涙を流しそうになる千秋。

そんな千秋を和人が腕を広げて抱きしめた


「よし、やから行こか☆」


ヒョイッと、千秋を上手い具合に持ち上げ、そのままダッシュした。


「嫌だぁぁぁああ!」


騙されたと叫び、抵抗しようとするが、何か関節技的なものを決め込まれて上手く出来ず、揺れる気持ち悪さから、途中でグッタリと動かなくなった千秋を大笑いで和人は運んだ。


「うぅ…フラれる…嫌われる」


うわ言のように、そう漏らしている千秋の言葉を聴きながら、和人は思った。


「(まぁ、問題はないと思うねんけどなぁ…)」


鳳は、千秋を物凄く溺愛している。

それはもう、感じの通り『溺れさせる程愛している』だ。


千秋が卒業したら結婚することを考えているのは勿論、家まで何個か購入している。


千秋からの電話は録音して保存しているし、メールが来たら重要な会議中だろうがなんだろうが大声で喜びを表している。


「和人さん……監禁っては何処まで監禁ですかね?合法な監禁ってありますか?」


「副作用のない薬が欲しいです。惚れ薬的なものってありますかね?」


「千秋さんのお父さんの会社を買収して……」


最近、若干ヤバイに思考が行ってる。目が少しイッてる。


本気で溺死させようとするくらいに、鳳の愛は余りにも大きすぎる。しかも、厄介な事に、未だに増幅中である。


本当に心配するべきなのは、鳳にフラれることよりも、あのデカすぎる愛をどうやって受け止めるべきかなのでは?


と、和人は考えたが、言わない方がなんか面白そうなので、言わないことにした。



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そして、出来ればオススメも押してください!。

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