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似非ボッチの私が逆ハー女の親友になってた  作者: 黛 カンナ
彼女の問題はまだ終わってない。
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予想外の出来事

その時の事は酷く鮮明に覚えている。


当時、琴音さんと上手く折り合いを付けれずにいた私は、可愛気のない子供だったと思う。


プライドやポリシーやら何やらで、ストレスという鎖でがんじがらめにされている様な状態だった。

両手両足、両目、何もかもが鎖で絡まり、窒息死するんじゃないかと思うくらいに、いきづらかったのを覚えてる。


祖母と初対面の時、私は作り笑顔を浮かべていた。どうせ可愛気なんてないし、他人だしあっちだってそう思っているに違いないと卑屈になっていた。


そんな私を見透かしていたのか、はたまた独り言だったのか、祖母は私を抱き締めてこういった。


「貴方は可愛い私の孫よ」


お香の香りがする祖母に、初対面でありながら、意味も分からずに泣いた記憶がある。















チーン


私は祖母の前で手を合わしていた。

不躾な視線が私を襲うのは仕方がないが、ボリュームくらいは下げて欲しい。


ヒソヒソヒソ


「あの子よ....何でこの葬式に来ているのかしら?」


「血は繋がってないんでしょ?」


ヒソヒソヒソ


「でも、大女将に可愛がられてたらしいわよ」


「あの人が!?....それで財産目当てとかかしら?」


聞こえてるよバカ。


ヒソヒソヒソと、まるで何かの獣の呻き声みたいで気持ちが悪い。まるで、蛇だ。


蛇の群れにいれられて、毒に犯されているような気分だ。目の前にいるのは蛇ではなくれっきとした人間であるが、好奇や疑惑といった【よろしくない】視線はまさしく毒だった。



予想はしてたけど、やはりキツいものはキツい。

財産なんて欲しくないし、普通に祖母の最後を見送りたいって気持ちだったんだけどな~。


そう思いながら、祖母の顔を見る。


『(あぁ、なんて綺麗な死に顔なんだろう....)』


特に死体性愛なんてもってないけど、祖母の死に顔は綺麗だった。優しく、眠るように目を閉じていて、本当は生きているんじゃないかと思ってしまう。


「千秋さん、少し話したいことがあるの」


感傷に浸る私のもとに叔母がやってきた。

確か、母の兄か弟の嫁だったと思う。この人は気が強くて、何かしら私を嫌っていたと思う。


「遺産目当てなら辞めて欲しいの、貴女に残したものなんてないんだから」


『そう....』


「そうって何よ、千秋さんは一体何を望んでるの?」


『何も望んでません』


祖母にはまだ死んで欲しくなかった、まだ生きて欲しかった。まだまだ聞いて欲しいことが沢山あった。


私の妹が歩けるようになったんだよ。

親友が出来たんだよ、物凄く可愛い親友。

関西弁の可笑しい先輩もいるんだよ。

俺様のくせに何度も助けてくれた人がいるんだよ。


あのね、こんな私を愛してくれる恋人が出来たんだよ。


「それに、体面も悪いのよ?貴女はここの人間じゃないんだから少しは立場を弁えて....」


叔母が何かを言っている。

体面?立場?なんでそんな話を今言っているんだろう....


お願いだから、一人にしてよ。

しかし、そんな声の届いていない叔母は更に続ける。


多分、私は怪物と喋ってるんじゃないかという錯覚に陥る。


「大体、空気を呼んでくれる?貴女は連れ子なのよ?そこら辺の意識をちゃんと持って欲しいの。貴女は本来ここに来ては行けないのよ、誰も貴女のことなんて....」


「義姉さん」


一人の女性の声が背後から聞こえた。


その声が誰かは一瞬分からなかった。だってあり得ないから。


普段、私に何か言われても居心地悪そうにしているだけで何も言わない人で、争い事が嫌いな人の筈だった。


「私の娘にこれ以上の侮辱は許しません」


絶対に似ていないと思っていた琴音さんに祖母の面影を見た。


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