彼女の相談
抱き締められながら、千秋はいった。
「実は....問題があって...相談したいんだ」
「はい、何でも言ってください」
鳳は優しい笑顔でそういい、千秋の頭にキスをした。
「祖母が....死んだんだ」
私は屋上にあるベンチに座っていった。
こんな重い話を鳳くんは聞いてくれるのだろうかと、不安になったが、鳳くんは相槌をうってくれている。
「私の祖母...まぁ、琴音さんのお母さんなんだけど...
凄く優しい人で、血の繋がらない孫の私に優しくしてくれる人だったんだ」
本当に、凄く優しくて綺麗な人だった。
こんな私に優しくしてくれて、同情とか抜きで可愛がってくれる人だった。
「この間、その祖母が死んで....心臓が弱いことは知ってたけど、でも...その....」
「知らされ無かったんですか?」
そう言われて、頷く。
病気で心臓が弱くなり、死も近いことから私はよく祖母が入院する病院に行って、もし危篤とかになったら教えて欲しいと伝えたけど....
「私....知らされなかった」
死に目に会うことが出来なかったのだ。
琴音さんが、最後を看取ったらしい。
私には知らされなかった。
でもそれは、子供に見せたくないからという気遣いだったらしく、実際に幼い彩音は待機室にいた。
それに、私は連れ子だから仕方の無かったことかもしれない。人間、最後は他人より血の繋がった孫や娘をみたいだろう....
とか、色々と理由付けや後付けや誇示付けは出来るのに....
「それでも!!....側に居たかったんだ...例え望まれてなくても!血の繋がりとか無くても...側にいたかった...」
単純にそんな気持ちが溢れてしまう。
もう祖母はこの世にいないのに、未練たらしくそう私は言った。
「優しいんですね、千秋さんは....」
「優しくなんかないよ、未練たらしいだけ....」
そう言った私の頭に鳳は手を乗っけて撫でた。
「千秋さんはちゃんと優しい人です」
もうやだ、何この人。どんだけ優しければ気がすむのよ。初期の頃が信じられない。
もう本当に、どんだけ優しいのよ。
その優しさにかこつけて、私は自分の本当の悩みをいう。
「祖母の....葬式に出たいの」
せめて、最後は見送りたい。
「それを琴音さんに伝えてみたんだけど....余り上手くいかなくて....」
来なくて大丈夫よ。
私を気遣うフリをしながらも、そう拒絶された。
琴音さんと私は和解していない。
しかも、琴音さんも立場がある。葬式という親戚が集まる場所で、私という存在は批判の対象になる。
後妻というのは、そういう物なのだ。
だから、本当は私は行ってはダメなのかも知れないけど、それでも行きたかった。
「なんとか説得出来たけど....迷ってて....
私、行ってもいいよね?」
ぶっちゃけ、相談する相手を間違えているとは思う。
こんなのは私の個人的な話だというのも知ってるけど...でも、鳳くんに言って欲しいのだ。
「いいですよ
何も悪いことじゃないです」
その言葉が凄く嬉しかった。
「私に相談してくれて、ありがとうございます。
私だけですよね?この話を聞いたの」
「........」
「千秋さん?
私・だ・けに相談してくれたんですよね?」
「....」
「ち・あ・き・さ~ん?
ん?」
「将也くんにちょっとだけ相談を....」
「何浮気してるんですか!?千秋さん!!」
「いや、違うの。本当ちがうの
えっとね、アレはその....ちょっとアレで....」
「この浮気者!!!!」
「ち、違うんだ!信じて....ギャァァア!!!」
この後、説明するのに3時間かかった。
なんだろ....本当は胡桃との百合っぽい話とか、鳳とのバカップル話とか書きたい筈だったのに....
何でシリアスとか書いてしまうんだろう....




