和人と千秋の出会い
過去編です!!何度か書こうとしてやめた話です!
これはまだ、俺と千秋が小学生やったときの話。
当時の俺は結構平凡で……まぁ学級委員とかやってたな。見た目もそこそこに良かったからモテとったとは思うし、何人かに思いを寄せられているのも知っている。
とまぁ、ちょっとマセたとこのある現実主義気取りの子供やとでも分かるやろう。そんな感じや……
「見てみろよ和人!噂の転校生がいるぜ!!」
同級生に窓を指差され、なんだと思ってみたら、下にその転校生とやらがいた。
「綺麗やわ…」
その転校生を見て、出た感想がこの一言につきた。
髪の毛は凄く艶々の綺麗なロングで、肌は色素が薄いからかめっちゃ真っ白。瑞々しくスラリと長い手足はモデルでも食っていける程で……まぁホンマに綺麗やった。
「あいつの名前、天崎 千秋っていうんだって!」
「千秋…」
とまぁ、こんな感じで千秋は転校生として俺のいた小学校に入学してきた。
当時、胡桃はセレント学園の小等部におった為に一緒ではなかった。まぁ分家と本家の違いを出す為やな。
俺の学校は……なんていうか、結構お坊ちゃんとかお嬢さんとかがいる学校やけど庶民も頑張れば入れるような小学校やった。
その為か、無駄にプライド高い保護者がおってそれを見て育った脳のない子供もプライドが高かった。主に女子。
そんな小学校に千秋は突如として現れた。
俺の客観的な判断からすると、千秋自身は問題のない女子やったけど……見た目がアカンかった。
度が過ぎて綺麗、胡桃みたいに好感がもてるとか、羨ましい!!って思えるようなもんやなくて、完璧に周りが嫉妬する綺麗さやった。
しかも千秋は元々普通の小学校の生徒で、この小学校の令嬢みたいな気取ってない女子やから当然男子にモテる。
しかも複雑な事情だからか教師にえこ贔屓されとった。
その結果……当然のことながらイジメは始まった。
「な、なぁ大丈夫か?」
俺は初めて千秋に話しかけた。
出来れば初会話でポタポタと水が全身にかかってビッジョリと濡れている千秋に話しかけたくなかった。
『……えっとー…あなた誰?』
初めて会話した感想:まるで機械。
一昔前にあった音声ソフトを思い浮かばされるような喋りで……ハッキリ言ってめっちゃ不自然。
別に淡々としていい訳ではない。困っています的な驚いている的な反応ではあったけど...まるでTV越しから喋っているような感覚。
「俺の名前は和也や…水びだしになってるやん…しかも頬が赤いし…」
『あぁ、友達に叩かれたの』
「えぇっと……因みに何でや?」
『友達の好きな子が私を好きだったから』
ある程度予想していた回答が出てくる。何度か千秋の恋慕のもつれは聞いたことはあったから。
そういう千秋の声は淡々としていて、無表情ではなくある程度困ったりして普通の反応をしていたが…
俺には全てがどうでもいいと諦めたように見えた。
「先生にいうか?これってイジメやろ?」
『えぇそうね、私はともかくお父さんが嫌がるからまた転校ね』
あっけらかんと言い放つ彼女はもう全てを諦めたかのようだった。
そして草のしげみに何故か行き、また戻ってきた。
『タオル用意していてよかったわ』
「こうなるって、予想ついてたんか?」
『流石に学習するよ』
ちょっと困ったように苦笑する千秋。学習…つまりはこういう事は何度もあったんやろう。
『私……異物みたいだから』
そういってヘラりと笑う彼女に対して、何か反論してやりたかったが残念ながら酷く納得してしまった。
よくも悪くも千秋は目立つ。まだ4年生やというのに6年生男子の平均程ある身長。
綺麗過ぎて一種の畏怖さえ出てしまう外見。転校生というだけでも結構なもんやのにそれを上長させとる。
他にも異なる部分のある千秋は、まだ経験が浅く、野生と理性の間で出来ている単純な子供にとっては異物だろう。
そう素直に納得してしまった俺に不満があるのか、千秋はタオルで頭を拭きながら言った。
『これでも世渡りは上手いほうだったんだよ?』
「まぁ…そんな感じはするわ」
『おや?分かってくれるの?』
女子に嫌われていても、定期的に友達は作れているのと教師に気に入られているのがその証拠や。
上手いこと同情を引いたり、自分は底辺です。みたいな雰囲気を出したりして……普通の子供やったら十分世渡りが上手いだろう。
そう、普通であるならばだ。普通ならばネガティブキャンペーンも面白い、普通ならば気に入られて敵は出来ない。
けれど……千秋は普通じゃなかった。一言で言うならばそれや。
「いっそ……裏に引っ込めようとせんと表舞台にたったらどうや?」
そっちの方がはるかに上手くいくと思う。
というか、まだ子供やった俺は千秋が攻撃を受けているのを自業自得やと思ってたふしがあった。
ここまでどうしようも無いほどに目立っているんならばいっそ、それらしい振る舞いをした方がいい。
有名人には有名税が存在する。それを千秋は滞納してるから攻撃をうけまくっているんだと……今考えれば、完璧に理不尽やろな……
しかし、千秋はこういった
『え、やだよ』
あっけらかんと、さも当然の如く
「なんでや?その方が上手く…」
『君ってさ…』
ここで千秋は言葉を区切った。言うのを少しだけ拒むように、けれど本心ともいえるように……
どうしようもなく俺の心を見透かし、嘲笑するように、哀れむように……
2枚目のタオルで拭きながら、色素が若干薄いためか光の関係か灰色のドロりとした目で俺を見据えてこういった。
「可哀想だね」
この頃は千秋が再婚したばっかりの話です。
つづく。




