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第96話 抱きしめあう

「ありがとう、胡桃ちゃん」


幻聴か否か、千秋はその言葉を口にした。さっきまで苛立ち、ムカつき、怒りの化身だった筈の千秋は素直にそういった。


「うぅ…グズッ…ヒック…千秋ちゃ…」


「そして……やっぱふざけんな!!」


今度はビンタではなく純粋に恐喝しだした……ってぇえ~?もうやめたれや。


「はい、もうそこまでや。これ以上やったらホンマに修復不可能やぞ」


俺は潮時やと思い、千秋を羽交い絞めにした。気持ちは分からなくもないし、多分千秋は怒って当たり前やとは思うけど、こいつもたいがいやで。


「なに言ってんの?胡桃から絶交したんだから元々修復も何もないじゃん」


「いや、確かにそうやけんど……ってか大分本音だしてきとるな」


うそ臭くて何処か演技かかっていた『』喋りをやめ、千秋は普通に対話をしている。


怒りで我を忘れて本音をぶつけて、実はそんなに怖いものでもないと分かったんやろう。


「ってか元々私、胡桃みたいなタイプが嫌いだし」


「おぉ……意外というか…いや、普通に考えればそうなるんかな?」


照れ隠しでも冗談でもなく、ホンマに千秋は胡桃みたいなタイプが嫌いなんやろう……うん、まぁ確かに普通に考えればそうなるんかもな……


素の千秋はそもそも胡桃の愛されオーラなんかどうでもよく、周りが皆そうやから合わせていたにすぎへん。そしてその本音を今暴露しだした。


「ふぇぇん……!…グズン!」


それを聞いた胡桃はやはり泣いている。まぁ、胡桃は千秋大好きで、今まで面とむかって嫌いと言われたことが無いから仕方あらへんけどな……


「皆に守られているくせに恩を感じてないし、それに対して不満ばっかりいう、ただの隠し事一つでグダグダいうし……皆に守られて凄く羨ましい」


羽交い絞めにされながらも千秋はそういった。羨ましいっちゅーんは実は俺も同意見。せやけど胡桃はちゃうみたい。


「どこがよ!!皆みんな嘘ばっかり!!どんなに綺麗に作られてても私は人間なんだから!もう嘘なんてやだ!」


それは胡桃が出した本音やった。普段いい子で優しくて、皆から愛されて守られてたお姫様はいつのまにかそれが嘘やと気が付いた。


皆が胡桃を愛し、守ろうとするが故に嘘だらけとなり、純粋無垢だからという理想という鎖でがんじ絡めになっとった。その本音はとても悲しく、多分前から悩んでたことなんやろう。


「……で、嘘付いた私もいやになったと?」


千秋は本質をついた。確かに千秋はうそつきやった。自分に起こったことを何も言わなかったのだから。


それに対して胡桃は狼狽する。そうじゃないんだと。


「ち、ちが…ううん!そ、そうだよ!」


最後のなけなしの勇気を振り絞って……というか完全に意地だけで言うとる。もう後には引けないとでもいうかのように。


「あっそ。じゃあ帰りましょう先輩」


「ぇえ!?ええんか?千秋……」


驚きの余り、拘束を解除してしまった。


「はい、もう言いたいことはあらかた言い終わりましたから」


本当に素でいっているのか、それとも意地悪でいっているのか……『』を無くしたんやのに…いや、無くしたからこそ、より分からんようになった。


そして、クルリと胡桃の方をむき千秋は言い放った。


「もう一回いうと、私は本来胡桃みたいな女の子は大嫌いなんだよね…でも胡桃のことは嫌いじゃなかった。というか大好きだった。多分、今絶交したら完璧に胡桃との接点はなくなる…というか私が接点をなくすと思う。そう思うくらいには本当に今の関係と私が胡桃を大好きなのは奇跡に近いと思うけど?」


それでも絶交する?


「(うわぁ~…意地の悪い言い方やわ)」


でもそもそも人間の関係は奇跡なんやろう。相性が合いそうでも実は合わへんかったり、かと思えば相性最悪そうな奴らが実はとてつもなくいい。


千秋は胡桃みたいなタイプは嫌いやけど、胡桃は好きや。


絶交したら、ホンマに千秋は……


「だから……絶交はやめて」


多分泣くんやろうなぁ……

千秋はきっと後悔するやろうな、性悪気取っても、『』があろうが無かろうが千秋は千秋やから……優しい女の子で意外と友達思いやから、多分後悔するんやろうな。


だから千秋は意地を張らずに本音をいう。友達でありたいと、君が好きなんだと、まるで告白をするように。


それは胡桃が何よりも聞きたかった言葉。


「ごぉぉめぇえんんあざぁあいい!!私も絶交やだぁあ!!」


やっと言ってもらった言葉を受け、胡桃は壊れたかのように大泣きし、目からはまるで雨の如くボタボタと涙が零れ落ちている。


顔はクシャクシャで、制服は流した涙でビショビショ。そんな姿を俺は初めて見た。


「私もごめん」


千秋は服が汚れるのも気にせず、胡桃を抱きしめた。強く優しく……もう中途半端なものはいらないとばかりに。


胡桃も離すもんかというように、必死で抱きしめる。


その二人の姿は…とても綺麗やった。


仲直りは意外にも…いや、当たり前に出来た。

やっと解決しましたよー!!多少強引でしたけどwそろそろ最終回...ですね。


鳳くんと早く会話させたい。

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