1.きっかけは喫茶店⑦
♦デートは突然…!
土曜日。
綾は休日の朝をむかえていた。
洗濯物を干し、部屋の掃除をして、コーヒーを飲もうとしていたら携帯が鳴った。
≪蓮さん≫
画面の表示を見て、緊張と恐怖で息が止まる。
不覚にも、連絡先を交換していた。
ドキドキした鼓動を抑え、携帯を手に取ろうとしたら、着信が止まる。
綾(…な・何だろう。何か用事?)
蓮からのメッセージが届く。
=今日はお休み?
=何か予定はある?
=時間ある?
綾(は、速い…)
高校生より打つのが速い気がする。
着信 ≪蓮さん≫
綾「…ひっ」
思わず言葉が漏れる。
緊張しながら、電話にでる。
蓮「こんにちは。ごめんね、何度も連絡して」
綾「…こんにちは、すみません、出られなくて…(返信が速すぎて返せなかった)」
蓮「今日はお休み?」
綾「はい」
蓮「予定はあるの?」
綾「…いえ、特には」
蓮「私に綾さんの時間をくれないかな?」
綾「時間ですか…?」
蓮「15分で迎えに行くね」
プツン。
電話が切れた。
綾は思考が追い付かずに、放心状態となった。
暫くして、蓮の15分という言葉を思い出し、我に返った。
支度を急いだ…!
綾は支度を終え、部屋を出たら、アパートの門前に車が停まっている。
前回とは違い、白の高級車だ。
綾が小走りに寄って来るのを見、
蓮が運転席より姿を現す。
慣れた動作で、助手席のドアを開ける。
蓮「乗って」
はい…と言い、ドアを押さえている蓮の前を通り助手席に座った。
緊張のあまり蓮の顔を見られない。
蓮も緊張している綾の様子を見ながら、話はせずに運転をしている。
車を降りると、あの喫茶店の通りだ。
綾「ここ…?」
不思議そうに蓮の顔を見る。
蓮はにこりと笑い、
蓮「そう、行きつけの、ね。綾さんも慣れているお店の方が過ごしやすいでしょ?」
蓮が喫茶店のドアを開け、綾を誘導する。
店内は誰もいない。亭主がカウンターで微笑んで出迎えてくれた。
2人はテーブル席に向かい合って座った。
綾「あの…、今日はお店お休みでしょうか。いつも土曜日でもお客さんがいると思うのですが」
蓮「ホットケーキ好き?」
綾「…?」
質問の回答になってない。
蓮「ホットケーキとコーヒーね」
返答を聞かずに、注文する。
蓮が視線を綾に戻し、真っすぐ綾を見る。まるで獲物を狙う獣のように。
綾の背筋に緊張が走り、姿勢が伸びるのを感じた。
ゆっくりと蓮は口を動かす。
蓮「今日はね、ここ貸切」
綾「貸切ですか…? 今日は何かのイベントでしょうか?」
くすっと蓮が鼻で笑う。
蓮「仕事帰りとは違って、休日の綾さんの服装は可愛いね」
綾「えっ…」
今日の綾は、黒のシフォンシャツにセーターを羽織り、藤色のスカートを着ている。
蓮がにこりと微笑む。
綾の心臓の鼓動が速くなる。
亭主がホットケーキ・コーヒーをテーブルに置く。
蓮「食べて…」
緊張して食べられない…。
そんな綾の様子を察したように、蓮が綾の手に持っていたナイフ・フォークを取る。
ホットケーキを自分に寄せ、メイプルシロップをかけ、手際よくカットする。
蓮「はい、“あーん”して」
綾「…‼ 大丈夫です、自分で食べられますから」
蓮「あーん」
綾の口前にホットケーキを差し出す。
綾は断念して、ホットケーキを口に入れた。
蓮「可愛い」
綾「…!(な・何をしてくるんだこの人は)」
綾が頬を赤らめ、蓮がコーヒーをゆっくり飲んでいる時、喫茶店のドアが勢いよく開いた。




