1.きっかけは喫茶店①
秋山綾、27歳、大学病院で事務員として勤務している。
頬にあたる風が冷たく、通勤時に頬・手が寒さで赤くなる。
冬本番になろうとし、医療機関は繁忙期に入る。
中堅の綾には慣れたものだ。
患者さんが混み合う中でも冷静に業務をこなしている。
(毎日、毎日、患者さんが多いな…。同じことの繰り返しだな)
マンネリ化した日々をどのように過ごすのかを常に考えている。
繁忙期の勤務終了は19時過ぎになる。(いつもは18時に帰路に就く)
(今日も働いたな、金曜日だし何かご褒美を…)
駅前通りを歩いていると、いつもは視界に入らない路地が目に入った。
真っ暗の狭い路地には、申し訳なさそうに古い街灯が点いている。路地のお店は目視で3件ほど。
路地を進み、小さな喫茶店を発見。
(カフェというより、喫茶店という呼び名が適切だな)
意を決して、ドアノブを動かす。
コーヒーと焙煎のキナ臭さが漂う。
カウンターからは70歳手前、優しい雰囲気の亭主が綾を見て、
「いらっしゃい」
と迎え入れてくれた。
席数が少ない店内だが、テーブル席に2組、カウンター席に3名。
綾はひとりだったため、カウンター席の奥に座った。
綾「カフェオレをお願いします」
カフェオレを待つ間、コートを脱いだり、携帯を出したりしていたら、向かいの席の方と目が合う。
黒髪・短髪(ワックスで固めている)・紺色のスーツ
綾「…っ」
背筋に緊張の糸が張る。
目が合っただけで、足が竦む。
亭主「はい、お待たせ」
空気を元に戻すように亭主がカフェオレを出した。
綾(救われた…)
綾がカフェオレをゆっくり口に運んでいる間、男は席を立ち、会計をする。
会計時には亭主とにこやかな雰囲気で接している。
綾(何だったんだ、先ほどの空気)
綾の携帯が鳴り携帯を操作した。
男がドアへ向かい、綾から目を離さなかった。




