第11話 ロッカー内拘束
その次の日。俺は白木さんと一緒に朝登校した。
今日の白木さんは気合が入っている。
そう、登校時ながら、手を両手を後ろで縛っているのだ。
勿論口枷を添えて。
今日は、朝早いから知り合いに合わないから、という事だろう。
でも、校門で先生に会うけどな。
まあ、そこは白木さんにはたいして苦ではないだろうな。ばれなければいいから。
だが、俺にとっては問題だ。
口枷よりも、両手後ろ手縛りは問題があるのだから。
今、白木さんの身だしなみは少し悪い格好になっている。
何しろ、両手が縛られているのを何とかごまかしている格好なのだから。
少しでも疑われたら終了だ。
そしていよいよと、先生の近くを通る。
「おはよう」
「おはようございます」
俺たちはそのまま校門を通る。
少し不振市されたが、何とか上手く行ったようだ。
そして中に入っていく。
そして、教室の前で、彼女の拘束を解いた。
「上手く行ったね」
そう笑顔で白木さんは言う。
愛らしい笑みだ。
「うん、そうだね」
ここでばれなかったのは嬉しい事だ。
さて、後はロッカーに入るまで、誰にもばれなければいいが。
そして、
「じゃあ、縛りなおしてもらえる?」
そう、ロッカーの中に入った白木さんに言われた。
ドキドキする。今から白木さんは暗闇の中に入る。
しかも声を出してはいけない。
そんな地獄に入った白木さん。ああ、考えただけでぞくぞくする。
「白木さん、大丈夫?」
「うん。もう決めたから」
俺にはこの地獄に向かう白木さんの気持ちはあまり分からない。
何しろ、ロッカーの中は暗い。
そんな中に八時間以上もの間閉じ込められる。常人なら発狂してしまうレベルだ。
俺なら耐えられない。
やはり白木さんに関しては分からないことだらけだ。
さて、そんな事を考えているうちに、完全に縛り終えてしまった。
そして最後に口枷をはめてしまえば完成だ。
足も何十にも縛られ、腕も後ろ手で縛られている。
文字通り身動きできない状態だ。
「覚悟はいい?」
俺が訊くと、彼女は静かにうなずいた。
一回閉めてしまえば、俺には何もできなくなる。
そう、彼女を助けるという意味で。
「じゃ、閉めるね」
頷く彼女を漆黒の闇の中へと送り込む。
そして俺は暇なので予習をする。
今、白木さんがどうなっているか。それを考えるだけでぞくぞくとする。
ああ、彼女は今永遠に続く地獄の中にいるのだと。
楽しい、ああ楽しいな。
自分が当事者になるのは嫌だが、想像するのは楽しいのだ。
それが人間の性という物だ。
白木さん。君は今どういう気持ちでその地獄の中にいるんだい。
俺には君の今の気持ちが知りたいんだ。
そして、ニ十分もしたころ、沢山の人達が教室に入ってくる。
彼ら、彼女らはロッカーの中に白木さんがいることに気が付いていないだろう。
厳重に拘束され、暗闇に閉じ込められている白木さんが。
ちなみにロッカーのカギは、それぞれの生徒が自分用のロッカーのカギを持っている形だ。
今白木さんのカギは俺が持っている。
俺はチャリンと鍵を鳴らす。
これが、白木さんの生死を握っているのか。
そう考えたらぞくっとする。
快感だ。
★
白木マリアンはロッカーの中で悶えていた。
それも快感に。
何も見えない真っ暗な空間に、教室にいる生徒の騒がしい喋り声のみがこだまする。
いつ出れるのかすら分からない状況。それに、快感すらも覚えていた。
絶望のような苦しみ。そして、聞こえてくる声からしてもまだ一時間目すら始まっていない。
ロッカーに閉じ込められたのが、7時45分だった。
つまり、まだ一時間すら経っていない。
解放されるのは早くても16時。
後、八時間は最低でもかかる。
だけど、それが白木満里奈の変態心を燻るのだ。
★
「満里奈は?」
三木さんが俺に言う。
「病気なんだってさ。ほら」
そう言ってラインの画面を見せる。
当然、こうなることを見越して作ったものだ。
「あの子が病気? 大丈夫かしら」
「体調とかはあまり詳しくは訊いてないけど、大丈夫だと思う。そんな重い物じゃないみたい」
「じゃあ、終わった後、お見舞いに行かなくちゃね」
「お見舞い?」
「ええ」
お見舞いは困る。
実際病気じゃないのだからな。
しかし、白木さんにそこは任せた方がいい。そう、いい訳はな。
「そうだな」
俺はそう言って参考書を読む。
そして、ふとロッカーの方を見る。
まるで誰も入っていないかのように、静かだ。
まだまだ我慢が出来るみたいだ。
後で、感想を訊きたいものだ。
そして昼休みになった。
これで、白木さんがロッカーに投獄されてから四時間余りが経過した。
これで約半分だ。
白木さん、どういう気持ちなんだ。
まだ耐えられているのか。
ご飯を食べ終わった後、気晴らしに白木さんのロッカーの所に行く。
鍵を開けるわけには当然いかない。
だけど――
俺はロッカーにもたれかかった。
そして「はあ」とため息をついた。
もし限界なら、助けを求めて来るだろう。
そうなれば何とかして開放する。今日は体育の授業があるのだ。
すると、軽い物音がした、勿論ロッカーにもたれかかっている俺にしか分からないくらいに。
これは助けないとだめだ。
俺はひたすらに体育の時間を待った。
体育が始まった。
遅刻することになることは分かっている。だが、まっすぐ授業に向かう事はせずにロッカーに向かう。
そして鍵で開ける。
すると白木さんが縛られたまま俺にもたれかかる。
「ふぐhcっじ」
口枷のせいで声にならない声を出した。
俺は口枷を外し、すぐに拘束を解く。
明らかに体調が悪そうだ。
「何があった」
「体調が、悪いんです」
言葉にならない声で言った。
その小さな声からして、体調の悪さがうかがえる。
やはり無茶だったのだ。
何しろもう既に七時間ほど投獄されていた。
それで、体調が悪くならない方がおかしいのだ。
「とりあえず、家に帰るぞ」
「だめ、貴方は授業に出てください」
「ダメだろ。こんな状態の」
「なにしてるの?」
声が聴こえた。
俺は振り向く。そこには三木さんの姿があった。




