第1話 出会い
_あの子と初めて会った日は…そう確か、春の温かい日差しが降り注いでいた時だった。
「伯母さん、行って来ま〜す」
パタパタと身支度を終え、玄関に向かう途中で洗い物をしている伯母さんに声を掛ける。
「はい。行ってらっしゃい。気を付けてね」
赤髪碧眼の伯母さんは現在活躍中の人気舞台女優だ。
そんな伯母さんは今も昔も私の憧れ。その下で女優になる為の特訓をしているのも至福でしか無かった。
「うん。伯母さんもお仕事頑張って」
それだけ言い、私が3日前に入学した萬緑高等学校に行く為、駅に向かう。
歩くたびに私の自慢である、サラサラの顎下で切り揃えられた鴇色の髪が揺れ、目に映るのが何だか誇らしい気持ちだ。
家から歩いて直ぐ近くにあるので、到着した。
(まだ、電車が来るまで時間があるな…。まぁ、ギリギリより全然マシか)
駅のホームにある椅子に腰掛けた。
_ザワザワ
(私、変じゃないかな…?)
全ての視線が私に向いている様な気がして、途端に恐ろしくなる。
「っ…!」
足がサァッと冷たくなり、顔が急に火照りだす。
(ヤバい!この症状を周りに悟られたら…!私は、『普通』じゃ無くなちゃっちゃう!!)
私の気持ちとは反対にドンドン顔が赤く染まる。
(どうしよう…!どうしよう!!)
「……あの…これあげます…」
私が焦っていると、同じ萬緑高等学校の制服を着ているヘッドホンをした少女がスクールバッグから何かを取り出す。それを私の頭に被せた。
「視線が怖いんですよね?なら、それを被っていれば…良いと思います…」
もじもじと俯きながら小声で喋っている為、大分聞こえにくいが私に気を使ってくれたようだ。
(ん?これはバスタオル…?)
上質な肌触りで白色のバスタオルが私の頭に被せてあった。
(はっ!そんな事より、否定しないと…!)
「あははっ、視線なんて怖くないよ!」
過度なストレスが心に来るのが手に取るように分かった。
「でも、私はそう見えたので…それじゃあ」
「あっ!待って…!」
私の制止の声も聞かず、少女はテクテクとホームの端っこに行ってしまった。
(行っちゃった…。でも、何で視線が怖いって分かったんだろう…?)
バスタオルを被せてくれた少女は何者だろうか!!?
そして、何故スクールバッグにバスタオルが入っているのだろうか!!
答えは次の話で分かります!