7.ショタとデザートを見逃したのは誠に遺憾である
「ルイくんってもしかして天才肌だったりする?」
「別にそんなことっは、ないと思うんですけど、ねっ!」
身体強化を使った状態でご主人様へ剣を振るうが、やはり簡単にいなされ地面に転がされる。
天才だったら、こんなに簡単に地面に転がされないと思うんですけどね!
「普通は身体強化を覚えて数ヶ月は身体強化を維持することを練習するものだし、私もそのつもりで教えようと思ってたんだけれど……帰ってきたら身体強化をしながら素振りしてるし、その翌日には打ち合えてるの控えめに言っても天才だよ? 天才ショタなんだよ?」
「だからショタってなんなんですか……」
「世界の宝だよーっ!」
「そうですか……」
よくわからないがそう言うものなのだろう……。
「この段階だったら予定よりだいぶ早いけれど、迷宮に入れるように冒険者ギルドでルイくんの登録を行おうか、本当はお姉さんが手取り足取り教えてあげたいんだけれど、ルイくんを迷宮で鍛えるためには、どうしても揃えておきたい魔道具がいくつかあって、それを集めてくるから迷宮については受付の人から説明を受けてもらおうかな」
「わかりました」
ショートソードを鞘に収めた俺にご主人様は当たり前のように手を差し出す。
少し恥ずかしいんだけれども、その手を握りしめ満足げなご主人様と歩き出す。
ゆっくりと歩いて十五分ほどの距離に冒険者ギルドはあった。
何も知らずにここに連れてこられたら神殿と思ってしまうような大きな建物だった。
「迷宮街アルファールって言うだけあってここの冒険者ギルドは大きい建物なんだ、冒険者が多いからね、私は高ランクだから専用の窓口に向かうよ〜!」
人でごった返しになっている受付ではなく、あまり人が並んでいない受付へご主人様は向かっていく。
専用の窓口とやらに座っている金髪の受付嬢が書類から目を離し、顔を上げ驚いた顔でご主人様に話しかける
「ユウ……リ……あんたついにやったわね?」
「合法ですぅ〜スーパー美少年ですけれど私のルイくんです〜!」
「本当に? あんた一時期孤児院で涎を垂らしてる冒険者がいるって」
「ん゙ん゙ん゙、ルイくんの前で余計なこというのはやめてもらえるかなぁ?!」
「合法ならいいんだけど、あんた流石に仕事に連れていくとか言い出したら引っ叩いて冒険者の資格剥奪させるわよ」
「信用ないなぁ?! 確かに私ならいいところ見せたい! とか言いそうであるんだけれども! 普段の行いっ?!」
「ご主人様外でもあんまり変わらないんですね……」
ん゙ん゙ん゙と再度ご主人様が咳払いをして話し出す。
「この子を私の弟子として育てたいんだけれど、ルイくんをあんな人混み地獄でカスみたいな依頼しかない受付に預けたくないんだよねー、アルファールの依頼ならそっちが指定したの月に何本か受かるから、ここの受付使わせてくれない?」
「あんたの依頼成功率の高さは冒険者でもトップだから、それを元に上司頷かせるからいいよー、じゃあ今日は登録?」
「そういうこと〜アンは話が早くて助かるよ〜! 私はちょっと用事があるから、説明とかその間にお願いしていい? もし私が戻ってくるより先に説明が終わりってたらルイくんは、ギルドの食堂で待っててもらってもいいかな? 場所はこの子に聞けばわかるから!」
「はいはい〜食堂ね」
「わかりました」
俺に向かって手をブンブンと振りながらご主人様は冒険者ギルドから出ていった。
「さーて、改めまして私はアンって言うの、よろしくね、ルイくん。仕事できるから許されてるけれど、ちょーっと口が悪いかもしれないから嫌だったらユウリにこそっと伝えておいて」
「よろしくお願いします、僕はルイです、奴隷なんで言葉遣いなんて気にしなくていいですよ」
「あはー、そう言ってくれると助かるなー! それじゃあ冒険者ギルドについて説明しようかなぁ、知っているかもしれないけれど、冒険者ギルドは各地に存在する迷宮を管理するための組織で、だいたいどこの冒険者ギルドも迷宮の入り口の上に建てられているよ。迷宮は神様が監視していると言われていて、実際に迷宮で人殺しや強盗とか悪事を働くと、強力な魔物が現れて犯罪者を追いかけ回したりして、パニックになったりするから、そもそもそう言うことが起きないように管理しましょうね〜って言うのが私たちのお仕事かな。」
「神様が監視している、ですか……」
「そうとしか言えない事故が多いんだよね、人の装備を盗んだ人が強力な変異種の魔物に襲われちゃったりとか。犯人だけが不幸に遭う分にはいいんだけど、犯罪者を殺した後も迷宮に残り続けるからら、不幸が連鎖しちゃうこともあるんだよね、だからそう言う怪しいやつは私たちが極力迷宮に入る前に弾いちゃうわけ、まぁそれでも事故が起きる時は起きるんだけどね、ユウリの紹介だから大丈夫だと思うけど、少年は悪いことしちゃダメだぞ?」
「しませんよ……僕は奴隷なのでご主人様に迷惑がかかります」
「それならいいの、じゃあ続けて冒険者のランクについてのお話ね。冒険者は石級、鉄級、銅級、銀級、金級、白金級、魔法銀級と区分されていて、個人の評価でも上がるしパーティを組んだらそのパーティ単位で評価されることもあるから、純粋な強さの指標ではないわ。倒せる魔物の種類や挑んでいる迷宮を考慮して評価するから中にはすぐ高ランクに上がる人もいるわ、少年のご主人様みたいに急に現れて、下層の魔物を持ち帰る人とかね。危険だから真似しちゃダメだぞ〜!」
「わかってます、無理はしません。死にたくないので」
俺は魔物1匹倒したことがないので真似しようもないんですけれどもね。
「迷宮のあれやこれは、その都度私が教えてあげるから、迷宮に挑む前は必ず受付に顔を出してね。」
「わかりました」
「魔物を倒すことで魔物の魔力を吸収して、人間って強くなるんだけれども、その関係で冒険者が一般人と喧嘩をすると刃物を向けられていた〜とか特殊ケース以外だいたい冒険者の方が悪いことになるから、一般の人と揉めないように気をつけてね。強くなった新人の子がすぐに揉め事を起こして鉱山奴隷に〜なんてことも少なくないのから。それをわかって絡んでくる性格の悪い人とかもいるんだよね〜一般人と揉めそうになったらギルドまで逃げてきてくれたらちゃーんと間に入るから、何かあれば相談してね」
「揉めないように気をつけますが、何かあればよろしくお願いします」
「あとは迷宮内での生死については責任が取れないよーってことと、迷宮の入り口に素材買取の窓口があるからそこについての案内なんだけれど、その辺はユウリがわかるから大丈夫かな、質問とかなければ食堂にいく? お姉さんおすすめのデザートとか教えてあげるよ〜」
特に質問がなかったため、食堂へ向かった。
何故かアンさんも一緒にデザートを食べていたが怒られないのであろうか、食べ終わると手を振りながら受付へ戻っていった。
デザートのケーキはふわふわで美味しかった。
迷宮はなろうで一番ワクワクします。
自分だけかも。