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3.ショタの背中をさする時、鼻息荒いのバレてないよね?


 迷宮(ダンジョン)街アルファールの住宅街の隅、広々とした庭付きの一軒家へ入るとご主人様はにっこりと笑った。


「ここが、これから君のお家だよ、ルイくん! 」

 

「あの……ご主人様、僕は普通に歩けます」


 何故か横抱きでご主人様の家まで運ばれた俺は人生で一番死んだような眼をしていたのではないだろうか。


「私が抱っこしたいだけって言ったら君は困るかなっ?! 」

 

「困惑はしますね……」

 

「そんな君も可愛いよーっ! 」


 元気、だなぁ……。

 確かに奴隷になってから立ちくらみが酷いから助かるけれども。

 

「あ、奥の部屋が空いてるから明日にはベッドを買ってくるね。今後私物とかはその部屋に置いていいからね。今日は私がソファで寝るから、ルイくんは私の部屋のベッドを使ってね! 」

 

「逆ですよね? 僕がソファを使いますよ、ご主人様」

 

「ソファで眠るのは疲れた大人だけでいいんだよ、ルイくん! まぁ私はルイくんと出会えてウルトラベリーハッピーで幸せ幸せなんですけれどもぉ?! 」


 ならば俺がソファで良いのでは……? 口から出かけたがぐっと飲み込んだ。

 どうにもこの人は俺の容姿が気に入っているらしい。

 何を言ってもソファは譲らなさそうである。


 簡単に家の中を案内してもらった後、ご主人様はリビングのソファに腰掛けて俺にも隣に座るように命令した。


「あー、ルイくん。君の過去というか生い立ちは奴隷商人から聞いているんだけれど、そのことで一つ話したいことがあるんだ」


「はい」


「君が今身につけている奴隷の首輪、この魔道具には複数の効果があってね、その中の一つが問題なんだ」


「命令に背こうとしたときに首が締まる以外にもなにかあるんですか?」


「そう、その一つが感情の抑制、君の家族や住んでいた村が滅ぼされたとヨリタージュから聞かされた時に、君は何を思った? 」


「……そうだろうな、と思いました、あの男はお父様や村の人たちが食い止めようとしたのに、僕とお母様に追いつてきたので」


「それだけなのかな、ルイくんは怒ったり悲しんだりしなかったの? 」


「そりゃ、許せないと思いますし、悲しいですけれども……」


 ただ、それ以上に頭がぼーっとして何も考えたくない気持ちが強かった気がする。

 無意識にまた涙がすーっと頬を伝うも、ご主人様が俺の頬へ手を伸ばし涙を指で掬ってくれた。


「このまま首輪の機能で感情を抑え続けることはできるけれど、抑えつけた感情が限界を迎えた時、ルイくんが壊れてしまうかもしれないの、だから泣いてもいい、叫んでもいい暴れたっていい、私が許すから感情を吐き出して? ルイくん」


 そういうとご主人様は指輪を嵌めた手で俺の首輪に触った。


 ぼーっとしていた思考が澄んでいくような感覚と同時にあの時の光景が頭をよぎる、お父様が家を出て行った時の表情、お母様の最期、そして紅い瞳。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 」


 気がつけば俺はご主人様にしがみつき叫んでいた。


「どうしてっ! どうしてぇぇぇっ! 」


 俺が暮らしていた村は田舎の村で奪うものなんて何もない、平和な村だったんだ。

 お父様とお母様が魔法を使えたから?

 何故俺にも秘密にしていたのか、もう聞くこともできない、全部全部全部赤い眼の男(あいつ)に奪われたんだ。

 お母様のことを任されたのに俺は何もできなかった、怯えていることしかできなかったんだ。

 悲しい、苦しい、悔しい、憎い。


 涙が溢れて止まらなかった。

 この感情を思い出したとしても俺はご主人様にしがみついて泣き叫ぶことしかできないのだ。

 息苦しさに呼吸が荒くなっている俺の背中をご主人様が少し遠慮気味に優しくさする。

 そして俺の耳元で囁いた。


「ルイくんが願うのであれば、私がその男を殺してあげるよ…?」


 あの男を…? ご主人様が…?

 思わず頷きそうになった時、あの男の紅い瞳が頭をよぎった。

 俺はあいつが死んでくれたら、それでいいのか?

 お父様とお母様を殺したあいつが自分の知らないところで死んで満足するのか? 仮に自分の前だとしても自分以外の人の手であいつが殺されて意味があるのか…?


「俺が、僕がごろじだい…ご主人様が殺じでも、意味がない…」


「そっかぁ、でもそれは私が殺すよりも難しいのは賢い君はきっとわかっているよね? 」


「わがっでいまず、だから、僕をづよぐ、強くしてぐだざい…!」


「ルイくんが、私のお願いを聞いてくれるなら、いいよ」


「聞きます、何だってしまず、だから…お願いじまず! 」


 俺が顔を上げて涙で歪んだご主人様と顔を合わせると、ご主人様はゆっくりと頷いた。


「可愛い君のお願いだからね、頑張ろうね、ルイくん」


「はい…っ! 」


 その後は衝動が治るまで俺は泣き続けた。

 そんな俺にご主人様は何も言わずに背中をさすってくれた。


 そして泣き疲れたのか俺の意識が自然と遠くなった。


 …。



 

「あぁ、そうだよねぇ、お腹が空いてるよね。いいよ、ご飯にしよう、お腹いっぱい食べていいからね」

ちょろい人間なので、レビューをいただいたことに気がつきやる気がぶち上がりました。

日は空いてしまっているのですが物語の大まかな流れと最後は決めているので、また更新していければと思います。

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