1.ショタって可哀想でも可愛いよね
学のない作者の処女作です。
お手柔らかにお願いします。
俺が暮らしていたのは、畑と家畜以外には小さなパン屋がある程度の小さな田舎の村だった。
若い人たちは村を出て大きな街で仕事を見つけてそのまま街で過ごすことが多いらしく、同年代の子供どころか俺の両親が村では若者扱いなのだと、畑仕事をよく手伝っていたお婆さんが教えてくれた。
『あなた達家族みたいに、田舎の生活に興味を持ってくれる人たちがいればルイくんにもお友達ができるのにねぇ、こんなお婆さんぐらいしか話し相手がいない村でごめんねぇ』
なんて何も悪くないのにお婆さんはシワシワな手で俺の頭を撫でてくれていた。
村のみんなはお婆さんみたいに優しく、みんなで友達のいない俺の相手をしてくれていたように感じる。
魔牛を育てているお爺さんも大きくなれよぉとよくミルクをくれたし、猟師のおじちゃんは狩猟犬を触らせてくれた。
暖かい村で世界を知らないとはいえ、俺は幸せに暮らしていた。
家に帰れば優しいお母様が絵本を読み聞かせてくれたし、休みの日にお父様は絵本の中の勇者に憧れた俺に剣を教えてくれた。
『ルイは騎士になりたいのか〜それならもう少ししたら剣の先生を呼んだほうがいいかもなぁ……』
『ふふ、あなたは剣は苦手だって昔から言ってたものね』
『ぐっ……剣以外ならなんでも教えられるんだけどなぁ……』
『ちょうどルイの十歳の誕生日が近いものね、先に手紙を出しておいて、お祝いが終わったあとに街へ行きましょう』
『本当に?! お父様、お母様ありがとう!!俺頑張るからね』
誕生日までの数日間、俺は浮かれて過ごしていたように思う。
畑仕事を手伝っているお婆さんにはルイくんも騎士になったら街に行っちゃうのかしらねぇなんて寂しそうにされてしまったけれど…。
誕生日の夜には、歌を歌いながらお母様が作った誕生日ケーキを食べて笑って…幸せな夜だったと思う。
異変に気づいたのはお父様だった。
「村のほうが騒がしくないか…?」
確かに普段大人しい猟犬たちの吠える声が遠くに聞こえる。
村から少しだけ離れた丘の上にある俺達の家に聞こえてくるのは珍しいことだった。
「様子を見てくる、ルルビア、ルイ、私が戻らないようであれば近くの街へ向いギルバロンを頼ってくれ」
「あなたっ私も……」
「私もルルビアも守りながら戦うことは慣れていない、ルイを任せられるのは君なだけなんだ、頼むよルルビア」
「あなた……」
普段見せない真剣な表情に思わず息を呑んだ、普段あれだけ苦手だと口にしている剣を携えたお父様は俺と目線を合わせるためにしゃがみニッコリと笑うとワシャワシャと俺の頭を撫でた。
「ルイ、ルルビアを、お母さんを任せたよ」
「は、はい……お父様、どうかご無事で……」
お母様を抱きしめたあとお父様は家を飛び出していった。
「ルイ、お誕生日にごめんなさいね、何が起きているのかお母さんにもわからないけれど、いつでも家を出られるように馬を連れてくるから静かに隠れていてね」
そういうとお母様は家の隣の馬小屋へ向かった。
俺はお母様から離れるのが不安で、扉の前で立ち尽くしていた、扉の外に見える村からは煙が上がっていた。
村からは叫び声が聞こえてくる気がする、呆然としている俺を馬馬に乗せ、その後ろに跨ると馬を走らせた。
街から離れた田舎の村で、月に一度行商人が来るがそれ以外には人の往来が全く無いため道が荒れていて揺れが激しい。
ぐおおんと大きい音が背後から聞こえてくる、こんなことは初めてだ、一体何が起こっているのだろう。
どれくらい馬を走らせていたのだろうか、震える声で大丈夫だからね、大丈夫と呼びかけてくれる母の声が急に途切れ俺の身体は中に投げ出された。
聞いたことがないような馬の悲鳴が聞こえ身体を起こすと、足を切り落とされ身動きが取れなくなった馬と暗闇の中でも紅く輝く不気味な瞳をした大柄な男が俺の目に写った。
「そう逃げなくったっていいだろう…? 相手はこの俺一人なんだからなぁ…」
「ルイ、走って!!」
お母様は俺を隠すように前に立ちふさがると男に向かって両手を突き出した、すると激しい炎が男へ向かって迸り男を包みこんだ。
炎に包まれているというのに男はそのままこちらへ向けて歩き出す。
「こないで!!」
お母様が叫びながら手を振ると更に激しい炎が男へ向かって放たれる。
まるで絵本の中に出てくる魔法のようだ、俺はお母様にこんな力があることは知らなかった。
「ふむ、こんな田舎の村にあまり期待はしていなかったのだがなぁ…」
男はそれでも歩みを止めずにこちらへ足を進めながら話し始める。
「村にいた風の男も悪くなかったが抵抗が激しすぎてなぁ……髪の色といいそこのガキはお前とあの男のガキかぁ……? それなら将来は有望だわなぁ……」
叫びながらも何度も炎を放つお母様の下へたどり着くと、そのままお母様の胸へ腕を突き立てた。
「お母様ッ!!」
身体から腕を引き抜かれたお母様はぐらりと倒れた。
それでもお母様は男の足へ手を伸ばし、自分の身体ごと炎の魔法で包みこんだ。
「お母様ぁぁぁ!!」
強力な爆風で近づくこともできない俺は泣き叫ぶことしかできなかった。
そしてそんな爆炎の中でも、男の眼は爛々と紅く輝いていた。
爆炎が収まったあと俺は叫び声を上げながら男へ飛びかかったが簡単にいなされ、地面に転がされ、首を掴まれて抑え込まれた。
「よくもお母様を……!! 殺してやる……!!」
「そう、そうだぁ……その意気だ、村にいた金髪の男はお前の父親か? 剣技は褒められたもんじゃなかったがぁ……魔法の腕は悪くなかったなぁ……あいつも俺が殺してやったが、最後まで抵抗するもんだからお前らを追いかけるのに時間がかかっちまってなぁ……酷い話だろ……?」
「お、お前……!!」
首を絞められ呼吸ができず、徐々に意識が遠くなる。
「今のお前じゃあ何があろうと俺を殺せやしない、殺したいならもっと強くなるんだなぁ……」
遠のく意識の中で、赤い瞳が近づいてくる、意識が無くなる直前に首に激しい痛みを感じたような気がした。
次に目が覚めたときには、俺の首には首輪がつけられ馬車の中に揺られていた。
毎日投稿は難しいかもしれませんが、できる限り頑張ります。