春馬 未来編
えー、過去の短編を連載にします。理由として書いてて楽しかったのと、結構端折ったところが多かったからです。
あとキャラクター別に「〇〇編」みたいにしていきます。だから登場人物が4➕1(完結編)にさせてもらいます。
書くのが時間かかるので不定期で。それでもいい人はよろしくお願いします。
「これで、この高さなら、俺は・・・。」
そして俺は飛び降りた。
ここは高さ100mのビルの屋上、通常の人間なら死ぬだろう。そう自信を持っていた。そう考えているうちに目を瞑っていても地面が近づいているのが分かる。
くるか。
とても生々しい音が鳴り響く。
「痛い。」 声帯が壊れていた声にならないが痛身を感じる。
(ああ、またか、また俺は自殺に失敗したのか。)
この少年の名は春馬 未来15歳。
なぜ自殺なんて残酷なことをするのか?疑問に思う人もいるだろう。だが、この少年にはそれがしょうがないと思えるほど辛い過去があるのだ。
*
そうあの事故、いや、あの事件は3年前。俺の人生を狂わした。
「兄貴兄貴、あとで暇ならキャッチボールでもしようぜ。」 「ああ、いいぞ」
兄貴は当時17歳。正義感が強くていいやつだった。俺たちは4人家族で良く決して金持ちでなかったが幸せだったんだ。
そんな時事故は起きた、反対車線のトラックが突っ込んで来たのだ。
車体はひしゃげ潰れた。
中にいた俺たちは見るに耐えない状態だったという。
そらから俺たちは病院に搬送され、一命を取り留めた。
だがそれは俺だけ
さらに俺は悲惨な事実を告げられる。なんとトラックの運転手に無罪判決が降ったのだ。
なんとその運送業の会社はブラック中のブラック。月に一回か二回休みが取れるか取れないかという状態で、当然居眠り運転などもあるだろう。
なら社内環境が悪い会社にした社長を訴えらないのかとも思ったが、その会社の社長の父親がとてつもない有権者、さらに株主もその一族ので固められていた。
つまり、そいつらを訴えてもただ揉み消されるだけなのである。
「なんだよ、それ。なら、ならこの怒りは!この怒りはどうすればいいんだよ!」
泣いていた、涙と怒りで顔がぐちゃぐちゃになった。
そして自殺をはかった。
が死ななかった。
※
「まぁーったく、また自殺願望かい?君は?」
(だれだ?天使か?ならいい、やっと死ねたんだ)
「違う違う、生きてるから私と話せてるんだよ君は」
(じゃだれだお前は?)
「よくぞ聞いてくれた、私は悪魔だ、君を不死にした人物と言えば分かるかい?」
(不死、お前か?お前が俺を死ねない体に)
「そう怒らないで、仕方ないだろそう言う契約なんだ」
(契約?誰とだ?俺をこんなクソな体にした奴は)
「フフ、きっと聞いたらその悪い口もきけなくなるよ。
その“最高”な体にした人物を」
(いいから言え)
「君のお兄さんさ」
悪魔と名乗るヤツは急に真面目な顔になった
「フフ、驚いたかい?本当はあの事故いや、事件で、君の家族で唯一生き残ったのはお兄さんだけだったんだ。お兄さんの魂は素晴らしい輝きを放ってたからね、トドメをさして魂を頂こうと思ったけどね。」
さりげなく悪魔がとてつもないことを言う。
その時お願いされたんだ、『神でも仏でもなんでもいい、俺の魂でもなんでもやるから弟を生き返らしてくれ』てね、流石の私でも死んじまった人間は生き返らせないから不死にしたんだよね。
(なんで、どうして兄貴が生きれば良かった、兄貴は警察になって多くの人を救うって・・・)
「兄さんは『弟まだ生きることの本当の喜びを知らないから生きてほしい。』と言っていた、なのに君は自殺未遂ばかり、本当にこれでいいのかい?」
俺は黙ることしかできなかった。
(で、俺になんのようだ?イジワルな悪魔が自殺を止めに来た訳じゃないだろう)
「そうそう、そろそろ契約期限が残り1ね・・・、あ、そろそろ目が覚めるね、無駄話しちまったから要件を伝えれてないや、バイバーイ」
※
「目が覚めたかな?」
重い瞼を開け、久しぶりに見た光と共に見知らぬ女性が立っていた。
「だれ?」
「私は榊原保護施設のものだ。君が自殺未遂を繰り返していると聞いてね、施設に入れることにしたよ、あと君学校も行ってないだろう?」
施設に行く途中、俺は榊原さんに根掘り葉掘り聞かれた。「なぜ自殺しようとしてるんだい?」
「かなり失礼なこと聞きますね」
「アハハ、失敬失敬。でも答えてもらうよ」
「・・・家族がいなくなったから、あと俺のせいで兄貴が死んだから」
「なんで分かるんだい?自分のせいで兄が死んだって。」
「なんでもいいでしょ」
「そう、もう一ついいかな?君のお兄さんは君を恨んでいいると思うかい?」
「・・・いいえ」
榊原さんはにっこり笑って「ならいいじゃないか」と肩を叩いた。「それと君には新しい家族ができる。つまり自殺をする意味がなくなる。」そう言うと彼女はドアノブに手を掛け「ようこそ春馬 未来くん、榊原保護施設へ」
そして僕を家に入れてくれた。
郊外の住宅街にある少し大きな家。それが榊原保護施設。
中では一人の同年齢ぐらいの女性と、そっくりな二人の小学生ぐらいの男の子(多分双子だろう。)が夕食を準備していた。
「「お帰りなさーい」」双子の男の子が元気よく、出迎える。
「ああ、ただいま」
「おかえりなさい榊原さん」
「うん、優香ただいま。こんばんはカレーか?早速で悪いが、もう一人分用意できるか?」
「できますけど、どうしてですか?」
話の流れを理解して俺はリビングに入る。
「・・・なるほど、では準備してきます。」
少女は察した様子でキッチンへ歩いて行く。
「かわいいし、仕事ができるだろ?」そう榊原さんはニヤけた顔で聞いてくる。
「・・・まあ」そっけなく返事をしておいた。
「さて、夕食も食べ終わったことだ、自己紹介といこうか。」そう言って榊原さんは俺に視線を向け、他の3人も視線を俺に向ける。
「春馬 未来。15歳よろしくお願いします。」
「そっけないなー。あ、でも優香と同い年だ、じゃ次は優香」
「ハイ。私は須藤 優香趣味は料理、よろしくね。」
「いいねー、ハイ次ー」
「僕空!」「僕は陸だよ」
「二人とも引き取った時には苗字を知らないらしくてね、いちよう私と同じ榊原だ。さて、みんな仲良く暮らしてね。そうそう、部屋を案内しよう」
そういうと2階に上がって行くと俺も着いて行った。2階は意外と広く、個室が10部屋ほどあった。
そのうちの一部屋のドワを開けた、中はベットと勉強机、タンスと本棚が置いてあって押し入れもある。ざっと見5畳ってとこか。
「まだ荷物は届いてない、どんなに頑張っても明日と言われてしまってね。でも今日はあと寝るだけだ、ベットだけあるから今日はなんとかなるだろう」
「ハイ」
そして俺は寝る準備を済まし、瞼を閉じた。
※
寝付けなかった、これから俺は変われるのだろうか?そう考えると俺は気がつくとキッチンにいて、包丁を持っていた。
「やめて!」そう叫んで俺の腕を掴んで来たのは優香だった。
まだ振り上げてすらいないが止められた。
その後優香はコーヒーを入れてくれた。「相談に乗る。」その優しさにどこか兄貴を思い出し、心を許して、全てを話した。
「そう、でも自殺は絶対にダメ、例え死なないとしても、自分の体を傷つけるなんて絶対ダメ!いい?」
またまたその優しさに兄貴を思い出し、思わず泣いたしまった。優香は俺の背中をさすってくれた。
生きよう。幸せに。そう心の中で誓った。
その後、階段に行くためのドワを開けると、ニヤニヤした榊原さんがいた。恥ずかしくなり、スルーしようとしたら「やっぱかわいいでしょ?」と聞いてきた。
「・・・ハイ」それだけ言うと俺は逃げるように階段を駆け上がった。
「いいねー青春は。ちょっとブラックだけど」
次の日の朝は、今まででとちょっと違うものになった。
*
新しい人生が始まると言っていいかもしれない。
新しいベット(今まで床で寝てだけど)、新しい部屋、新しい朝日、新しい自分。
昨日榊原さんは「まず、君は自分を愛すことから始めるんだ。それから春馬未来と言う人間は息をし始めるんだよ。」と言っていた。
確かに俺はあの事件から自分を抱き抱えていないかもしれない。そこらに放り投げて、でも契約と言う鎖で繋がれていたから何処へ行くにも春馬未来という人間が俺に付いてきた。ただそれだけだった。
俺は新しい制服に手をかけ、リビングに降りた。
「おお、制服。いいじゃないか」
コーヒー片手に榊原さんはニヤけてる。それをみた優香はトーストを運びながら注意する。
「榊原さん、またからかいの悪い癖出てますよ」
「エヘヘへ、性分だもんで」
「あーアクヘキアクヘキ」「カラカイカラカイ」と横で空と陸が騒いでいる。
その時、空が何か思いついたようで、「お兄ちゃんこっち」と手招きして、俺を廊下連れ出した。俺は少しドキッとした。「お兄ちゃん」俺は兄貴呼びだったが、呼ばれる側はこんな感じなのか。それはそれとして空の話を聞く。
「お兄ちゃん、今日ね、優香お姉ちゃんの誕生日なんだ」
昨日の今日で誕生日だったのか。何かあげるとしら…
「姉ちゃんはね、お花が好きなんだよ」といつの間にか陸も廊下の立ち話に参加する。
「お兄ちゃん、お姉ちゃんのこと狙ってるんでしょ?ならプレゼントぐらい渡さないと」
「ブホォ!な、何急に!?」
「あ、図星図星」「お花屋さん、駅の近くにあるよー」
などと好き勝手言ってる。
「りくー、そらー!遅刻するよー」と言う優香の声に俺は助けられた。
「「はーい」」と元気よくリビングに戻って行く。
俺も早く朝食をすまして新しい学校に行こうとしたが、プレゼントのことが頭から離れなかった。そして俺はそんなに使っていなかった父と母の遺産(現金化してある)から少しお金を取り出して、財布に入れて家を出た。
*
「えー、転校生を紹介する。」
朝のホームルームで教卓の前に俺は立っている。顔は平然と立っているが心臓がうるさい。
「春馬未来です。趣味は、……」思いつかない、そらそうだ。今まで死ぬことだけ考えていたから。でも、今なら言っていいよね。
「家族と過ごすことです」
そう言うと軽い拍手が飛び交う。
その日の学校は色々な人が話しかけて来てくれてとても楽しかった。
その日俺は優香が校門で待っていてくれたが、断って寄り道して、花屋に寄った。
入ったはいいが花なんて知らないし、花言葉なんてもっと知らない。しどろもどろしてるうちに店員さんが話しかけてくれて、事情を話すといくつか見繕ってくれた。しかしその時の俺は花屋さんのイタズラで赤いチューリップが1本だけ入れられていたのを知らなかった。
家に着くとそそくさと自分の部屋にいき、一旦は花を机の上に置いておく。晩御飯の時間となり軽く誕生日会を行ったあと、リビングに俺と優香だけになったタイミングを見計らい、
「優香、さん。誕生日おめでとう。昨日はその、ごめん」
と意外とすんなりと渡すことができた。
「うわぁー。ありがとう!すごい嬉しい!」と、とても喜んでいる様子だった。
次の日の朝なんと榊原さんはスマホでそれを影から撮影していて、全員に見せてきた。めっちゃ恥ずい。さらに恥ずいのが、ボソッと、俺にだけ聞こえる声で
「未来くん、やるね。赤いチューリップの花言葉、『愛の告白』だよ」と呟いた。
本当に悪魔みたいな人だ。
でも、思いっきり笑った。あの頃の、死ぬことしか考えていなかったあの頃の自分からは思いつかないほどに笑った。ああ、今やっと春馬未来は息をしたんだ。そう思った。
*
そして月日が経ち、11ヶ月と30日がたった。全員でバーベキューに行き、花火大会にも行ったし、遊園地、旅行、もはや本当の家族だ。
そしてもう1つ俺に大きな変化があった。いつの間にか俺は彼女が、優香の事が好きになっていた。理由は簡単だ、俺に生きる希望を持してくれた、優しくしてくれた、同じ学校、同じ家、それだけで充分だった。
そして明日は優香の誕生日であり、俺がこの家に来てまるまる1年がたつ日だ。俺はこのタイミングで告白しようと心に決めていた。
だが一つ問題があった、[元カノ]という存在だ。いまは別れているしそれ自体は問題ではないのだが、なんとその元カノが寄りを戻したいらしくしつこく迫っているらしいのだ。段々それはエスカレートし、最近では暴力一歩手前まだ来ているのだ。もしその状況で告白をしたら彼女にどんな危害が及ぶかわからない。
そう考えて帰宅路を歩いていると転んでしまった。
そして今日でまるまる1年の日が来た。そしてどうすればいいかわからないうちにもう帰宅の時間になってしまった。
「イヤ、離して!」
その時、優香の叫び声がする。助けを呼ぶ声だ。
すぐに走って駆け寄ると、転んでしまった。違和感を覚える(?なんだ、最近、体が?)その時、あの悪魔の最後の言葉を思い出す。(『契約期間があと1ね・・・』あと1年てことか?契約、不死の契約、まさか、俺は死ぬ?)
(だが今そんなことを考えている暇ではない、優香が、)
俺は力を振り絞り立ち上がり、できる限りの全力を出して走り出す。
「イヤ、やめて離して」
優香は必死に自分の腕を掴んでいる腕を振り払おうとした。だが、高校生にもなれば、男性と女性の力の差などハッキリとしている。
「なぁいつになったら分かるだ優香、俺はただ寄りを戻したいだけなんだ、あの時は急に振って悪かったよ、な、また恋人になってくれよ。」
優香は全ての返答に首を横に振った。
そしてとうとう元カノはしびれをきらし、拳を振り上げる。そして優香が諦め、目をつぶるとき、
「待て!!、優香から、手を離せ。」
フラフラで左腕を抑えた未来が止めにかかった。
「なんだよお前は!」
だが、俺は軽くあしらわれてしまい、受け身も取れずその場に倒れ込んでしまう。そしてとうとう限界が来て口から血を吐いてしまった。
「ああ、未来!」そう叫び、優香が駆け寄る。
(やっぱ、嫌な予感は当たるな。)
でも、やらなきゃいけない事がある。
(コイツは許さない!)
ボロボロになった体で俺は戦った。殴り、蹴られ、蹴り、殴られ、そして、俺は全体重をかけたパンチを鳩尾に炸裂さした。クソ野郎は口から唾を吐き出し、悶絶する。そして俺は最後に釘さしておく。
「もう、二度と優香に近寄るなよ!」
「クソ、クソー!」そう叫びながらその場を逃げていく。
「・・・い・・・らい!未来!」恐らく優香が俺の名前を呼んでいるのだろう。だんだんと聞こえなくなっていく。でも、言わなくちゃ。
「須藤 優香さん、俺は、私はあなたが大好きです。貴方を愛しています。今、返事をくれたら嬉しいです」
優香は溢れる涙を抑えながらとても美しい笑顔を見せてくれた、そして「私もあなたを愛しています。あなたを絶対忘れません。一生あなたを愛し続けます。」そう確固たる意思を持って答えてくれた。
俺は笑った、表情が動いたかはわからないけど、俺は心の底から笑えた気がした。
「ありがとう」
そう言って俺は眼を閉じた。(ああ、クソ兄貴、未練がましくて今度は不死じゃなくて幽霊になっちまいそうだ。)
※
(おい悪魔)
「ハイハイハイハイー、なんのようだい?春馬くん?」
(契約、俺の魂をやる、彼女を、須藤 優香を一生幸せにしろ)
「ワガママだね、君って、まっ面白いもの見れたし、いいよ!OKOK。ところで彼女、かわいいでしょ?」
今度はハッキリと答えれる。
「ああ、最高にかわいい」
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