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夫はわたくしのものだとアピールしてきますわ

 ごきげんよう。

 ラファエラです。


 ふっふっふ~。

 ええ。 浮かれてますわ。



「君を愛することはない」


 ようやく切り崩せましたの。


 祝ってくださる?



「ラファエラ、愛しているよ」


 日に何度も言ってくださるようになったわ。

 日に何度も突然抱きしめられるし、日に何度も突然キスして離してくれなくなる。


 そして、日に何度も愛してくださるようにもなったわ。


 最初の1週間は、ずっとくっついてほとんど離れなかったわ。


 こういうのを蜜月っていうのね。

 しあわせよ。



 わたくし、もう絶対離れたくないわ。


 ちゃんと「結婚」にこぎ着けましてよ。


 魔族式の結婚も済ませたという意味ですわ。


 

 今日はようやくブライト国入りした当初の目的「民への顔見世」のためのパレードですの。


 でも、もはや、民に「魔族の守護者」の顔を見せて安心してもらうというよりも、「オーグスティンは、わたくしのものですからね!」と世界に知らしめたい気持ちの方が強いかもしれませんわ。


 ダジマットティアラに、ダジマットドレスに、ダジマットメイクで、白銀のユルカールを垂らした紫色の瞳のバリッバリの名門王女のお通りですわよ!


 わたくしのオーグスティンには、手出しをしないように!!


 オーグスティンは、お揃いのダジマットティアラに人族風の騎士服ですわ。

 輝く金色の髪に灰青の美しい瞳の整ったお顔で、どんな衣装も映えますわ。


 素敵。

 

 この方もバリッバリの名門魔族ですが、人族系・混血系の弟君の派閥に配慮して騎士服にしたのです。


 これからはブライト王家も混血化を前面に出してまいります。


 ずっと隠し続けるより健全だわ。



 夫を陥れた敵の黒幕は、当代ブライト王でした。

 わたくしは決して彼を許すことはないでしょう。


 でも、弟君は少し違う。


 子供の頃は、単に兄の魔力が自分の魔力よりもはるかに多いことに嫉妬するだけだった。


 けれど彼は気付いてしまった。

 両親が兄を陥れようと動いていることに。


 そして、夫は聖女に誑かされていたように見えて、ずっと正気を保っていたことを。


 自分と兄は、決定的に何かが違うと、密かに影を動かし、王と自分が純血統ではないことを知った。



 彼は、ブライト王族を正式に混血化し、王家の嘘を修正したかった。


 純血統の兄が混血統の婚約者と結婚すれば、それは達成される。

 しかし、王と王妃は、兄を失脚させようとアレコレ手を回しており、兄が王位に就くことがないことは明白だった。


 だから、彼は自分が王になり、混血統の令嬢と結ばれる道を模索した。

 そんなときに出会ったのが、兄の婚約者。

 つまり、夫の元婚約者ね。

 

 夫の元婚約者は、ありもしない王太子と聖女の不貞について騒ぎ立てたり、聖女をいびったりする役割を与えられ、それがとても嫌だった。


 王宮の中央階段から聖女を突き落とさなければならなくなった時、夫の弟君と元婚約者は、平和的な落としどころを探すため、協力し合うようになった。



 弟君は、聖女をけしかけて、兄が婚約破棄するように仕向けた。


 聖女を盗賊に襲わせるような計画を耳にした元婚約者は、夫から匿名で送り付けられた聖女封印の魔道具を使って、神聖国の聖女牢に逃がし、聖女の貞操を守った。


 同じ女性として、この計画は許せなかったんでしょうね?


 そして、ふたりは婚約した。


 ブライト国の正式な混血化のために。



 この流れは、王位に興味がないわたくしたちにも都合がいいわ。

 夫は今、ブライト国の失われた秘儀の復刻に注力したいの、政治は二の次ですね。


 だから、わたくし、魔王の娘の強権を振りかざしたわ。

 こんな乱暴なことをした悪役令嬢は初めてよ。


 ブライト王と王妃に、「第2王子に王位を譲って、政治から身を引かないなら、ダジマットが成敗する」と宣言したの。


 その裏で、ブライト王の本当の出自について、『聖女の血統』システムを維持できないことを隠していること、純血統のブライト王族を虐げていることなどの悪事を全て公にするわよ!と脅して、こほん、理を説いて、引退させました。


 第2王子とその婚約者は、わたくしたちが、彼らがブライト王家の混血化することを支持していることを知って、王位についた暁には、夫がフルブライト公爵家を興すことに同意してくれました。


 これは、他の魔法国でもよくあるセットアップで、王族は魔族と人族の融合を図るために混血化、公爵家で対聖女用の純血統を守るのです。


 いいバランスでしょ?


 個人的には、家を興すことで、宮殿から出られるのは嬉しいわ。

 プライバシー魔法で寝室のプライバシーは守れるようになりましたが、昼も夜も寝室から出てこないみたいな状況は隠せませんもの。


 あの全ての人を遠ざけようとした夫が、遠慮の塊だった夫が、躊躇なくわたくしを求めるのよ?

 心に炎が灯っちゃいますわ。


 とにかく、今は、わたくしの全力で応えたいの!



 夫は飼い殺し王子ですから、ほとんど公務がありません。


 夫は魔術の習得にハマっていますけれど、わたくしはヒマ。


 おやつを食べた後に宮殿を散歩しながら宮殿の浄化を進めるぐらいしかやることがないのよ。


 後は、夫にベタベタくっついて、デスペル魔法という名の誘惑を仕掛けるぐらいね。


 幾重にも重なっていた混乱と魅了の解除が進んで、ところどころでわたくしの魔力が夫の魔道回路に触れるようになったらしく、よく呻いていますわ。

 痛いのではないのよ?

 気持ちがいいらしいの。


 施術の後は、恍惚となった夫がわたくしをうんと幸せにしてくれますから、やりがいがあるわ!


 夫の元側近たちの浄化も始めました。

 魔力をガンガン消費するのと、神聖国の神官によるパージが基本ですから、疲れるのと痛いのがメインですわね。


 でも、精神魔法に掛かった時のデメリットが大きい方が気をつけるようになるでしょ?

 だから、一般的な治療法は、心地よくないのよ。


 気持ちいいのは夫専用の特別仕様なの。


 わたくしと結婚してよかったと思ってもらえるかしら?

 ふふふ。


 そう思ってもらえるように、頑張るわ!

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