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夫は求婚してくれるでしょうか?

 ごきげんよう。

 ラファエラです。


 神聖国の神官たちに転移魔法を教えてもらった夫は、あちこち転移して回っています。


 まだ距離は短いですが、大分安定してきたようです。


 つまり、わたくしは、夫と一緒にいる時間が少なくなって、寂しいわ。


 ちょっとごねたら、二人転移を試してくれました。

 夫の転移で一緒に出かけられるようになって、少し機嫌が直りました。


 夫は、わたくしをスノードニアの近くの街に連れ出して、パールのピアスを買ってくれました。

 わたくしはすっかりご機嫌になりました。


 聖女用語でいうところの「ちょろい」です。

 ぐぬ。



 「君を愛することはない」


 夫の最初の宣言は、まだ切り崩せておりません。

 わたくし、いろいろ試しました。


 例えば、耐性のレベルを見ると言って、夫の合意の上で、魅了魔法を掛けてみたりしましたの。


 夫はとろりとした瞳で、わたくしを抱き寄せ、優しくキスを……

 なんていう展開にはなりませんでした。



 結果、夫は「魅了無効」のパッシブスキル持ちだということがわかりました。


 夫の場合、先天性です。つまり遺伝です。


 愛する人ができることによって、後天的に「魅了耐性」や「魅了無効」を身に着ける人はいます。

 わたくしを愛するようになったから魅了が効かなくなったなら、とても嬉しかったのですが……



 夫は魅了だけではなく、「混乱無効」も持っていました。

 後天的に習得する人と異なり、効果は出るけれども、混乱しながらも自我を保てるようです。 


 だから聖女の魔術も効いてはいるけれど、婚約破棄などの行動に出た時の夫は、気がおかしくなっていたわけではなかったようです。


 夫が本当におかしくなりそうだったのは、瘴気が見えるようになって、身体をゴシゴシ洗っていた時だけですって。


 あの時は、「愛おしく思う人が出来ても、こんなに汚染された自分が近づくわけにはいかないと思えは、狂うようだった」と。


 わたくしのことですわよね?

 不謹慎にも幸せいっぱいになりましたわ。



 ブライト家は、精神魔法を掛ける側の名家ですから、その血が精神攻撃に対する「耐性」や「無効」を持っていても不思議ではありません。


 しかし、完全に効果が分からないようになると、自分がかけている術の効果も分からなくなるので、術に掛かっても自我を保てる方向で技術を磨いた血筋なのでしょう。


 だから、抵抗しない精神攻撃にはあっさり掛かることもできます。


 例えば、夫は、わたくしが夫に巻き付いて混乱魔法を解除している間、睡眠魔法を掛けて貰いたがります。


 よからぬところが興奮してわたくしに襲い掛かりそうになるからですって。


 なるほど、そのような場面を目撃しました。


 わたくし、望みがありますわ!


 あぁん。

 欲望に身を任せてくれたらいいのに。

 

 わたくしは大喜びなのに、夫は「ダジマットのご両親とお話させてもらうまでは、絶対にダメだ」と言って、譲りませんの。


 夫は、ブライト国の陰謀で騙し討ちのような形でわたくしが夫と結婚させられた事がとてもイヤなのです。

 だから、早くダジマットの両親に、謝罪と挨拶をしたいのですって。


 わたくし、もう成人していますから、結婚はわたくしの判断だけで十分でしょうに。

 クソ真面目な性格なんですの!


 正式に結婚を申し込んでくださるかしら?

 

 今度こそ、魔族流の神前式をあげられるかしら?


 純血統、混血統に関わらず、魔法が使える人にとっては血統書を更新してこそ「結婚した!」って実感がわきますものね?


 期待は膨らむばかりです。 


 そういうわけで、わたくしもこの堅物の夫に付き合って我慢しております。


 夫を魔法で寝かしつけてから、絡みついているので、それで満足しようと試みましたわ。

 あ、これ、混乱解除のためですわよ。

 念のため。


 遠隔でもかけてみたけど、巻き付くのが一番効率がいいのよ。

 発見ね!



 でも、結局、夫が魔力授与をしてくれなくなったことで、夫からのスキンシップがゼロになったことが寂しくて、3日目にはノーリッジ国の先代悪役令嬢モードリン様を訪ねたいとせがみました。


 現在の滞在先のカーディフから見て、ノーリッジはダジマットの先です。

 夫はまだそこまでの距離を転移できませんから、わたくしが転移することになります。


 そうしたらまたあの日のように口から魔力授与してくれるかもしれません。



 オーグスティンは、2つの国を跨った二人転移はわたくしの身体に負担がかかると来たがらなかったのですが、新婚旅行ですよ?

 一人で行くわけないじゃないですか?


 新婚旅行の最終日にノーリッジから直接ダジマットに転移した方が近いからと説得したら、ようやく同意してくれました。

 

 下心満載なことは認めます。


 でも、それだけではありません。



 モードリン様は結界魔法、捕縛魔法の名手です。

 捕縛はダジマットのお家芸ですので、わたくしにもできますが、わたくしが知りたかったのは他の魔法との複合利用です。


 ボウランドに戻れば、自分たちの居室や寝室で、盗聴、盗視に晒されます。

 一気に解除すれば敵に警戒されますので、必要に応じてプライバシー結界を展開できるような複合術式を組むために、お知恵をお借りしたかったのです。


 自分の持ち技を発展させるのは、とても楽しいわ。


 わたくしがモードリン様にご相談させていただいている間、夫は、モードリン様の5人のお子様と一緒に旦那様のジェレミー様から新しい魔術を習っていました。


 楽しかったそうですよ。



 そういうわけで、ダジマットに入る前の夜は、ノーリッジに一泊して、その美しい街並みを歩いて散策しましたわ。


 こういう手つなぎデートもきゅんでしたわ。

 おすすめよ。


 

 夜は、ホドホドに、魔力を充填してくれました。

 額から。


 もどかしい夫だわ。


 でも、そのまま彼に抱きしめられて眠るのも大好きなので、良しとしましょう。

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