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夫に拒絶されてしまいました

 ごきげんよう。

 ラファエラです。


 わたくし魅力がないみたいよ。


 夫は明け方目を覚ましたの。

 名前を呼ばれた気がしたので、転がって行って、いつものように絡みついてヒールとクリーンを掛けました。



 「君を愛することはない」と言ったのは、伊達ではありませんでしたわ。


 くっついたわたくしを普通に嫌がって、身体を遠ざけられました。


 くやしいから、キスしてみたのですが、そしたら本格的にベリベリっと剥されました。



 涙が出るかと思ったわ。

 瘴気に埋もれてお顔が見えない方がマシよ。

 あの美しいお顔で拒絶されたのが悲しくて、悲しくて。

 しばらく寝たふりしていたら、そのままふて寝しちゃってましたわ。


 夫は聖女の魅了魔法にやられていただけじゃなく、実はちゃんと心も通わせていたのかもしれませんわね。

 他の女性はお呼びでないみたいよ。


 近日中に聖女に会わせてあげることにしましょう。



 昨夜、瘴気まみれの夫の精神状態が限界を超えて、自傷行為に近いことをしていましたので、排毒優先に戦術を変えることにします。



 体内に溜まった瘴気を吐き出す方法として、最も代表的なのが、魔力を使うこと。

 魔力と一緒に瘴気も吐き出すの。

 そして新しく湧きだした魔力で少しずつ薄めていく方法よ。


 しかし、夫は想像していたよりはるかに魔力量が多く、使うのも大変です。


 ほんとに予想外でしたわ。



 三大名家には、それぞれ特徴がありますの。


 固有魔素が最も高エネルギーで、魔力量も多いのは神聖国の皇王家、その次が婚姻によって特殊な血を育ててきたダジマット家。


 夫のブライト家は、固有魔力も魔力量も優れたところはないけれども、その操作技術が並外れているのが特徴とされてきました。


 精神魔法、浄化魔法、回復魔法など、人体に優しい低エネルギーの繊細な魔法が得意で、高出力の魔法を出したい時には、魔素波長の位相を揃えて魔力を増幅させる技術もあって、魔術師の憧れですわ。



 ところが、この夫は、魔力量は普通なハズのブライト家の惣領息子なのに、固有魔素が高エネルギーな上、魔力量が豊富だわ。

 逆に得意なハズの精神魔法も浄化魔法をほとんど知らないし、転移もできない。


 それでいて操作技術にも優れている、というか、魔法を習得するスピードが早いですわ。


 魔力透視、分別浄化、魔力授与など、わたくしが夫に教えた魔術は、低位魔法ではありませんのに、すぐに使えるようになりました。

 わたくしでもそこそこ時間をかけて習得したのに……


 こういう技術の高さは、ブライトっぽいですわね。


 夫は一体何者なのでしょうか?




 ごめんなさい。話がそれましたね。


 セオリーとしては、魔力をガンガン使うことで排毒を促進できるのですが、夫は魔力消費量の少ない「浄化魔法」ばかり練習していますから、魔力の循環効率が悪いんですの。


 仕方がないから、わたくしが貰って代わりに消費することにしました。


 魔力授与魔法も頼めばすぐに覚えて、わたくしが寝ている間に充填しておいてくれましたわ。

 キスを拒まれて寝たふりしたまま、ふて寝した時ですわ。


 キスは拒むくせに、魔力授与するとき、凄く優しくわたくしを抱き寄せたのよ。

 女の子たちが王子様との結婚に憧れる気持ちがよくわかったわ。

 

 王子様の所作は、優しく丁寧でなんだかすごく大切にされているような気持になって、幸せなの。


 育ちがいいのって、罪作りね。

 ぐすん。



 あと、夫の魔力は本当に気持ちの悪い瘴気入りで、よくこんなものを抱えていられるものだと驚きましたわ。



 上述に加え、パッシブな瘴気デトックスのために、カーディフ国のスノードニアにあるダジマット家所有のヴィラに新婚旅行に行くことにしました。


 スノードニアのヴィラには、先々代の悪役令嬢ミシェル様がおつくりになられた多数の浄化グッズがありますの。



 特にわたくしのおばあ様の魔素結晶に「浄化」をエンチャントした魔道具が組み込まれた魔法家具は逸品で、国宝級の価値があるとされていますわ。


 このミシェル様は、わたくしにとって大伯母にあたります。ひいおばあさまがブライト国の姫だったので、娘である彼女も精神魔法や浄化魔法に長けていらっしゃいましたの。


 その上、ダジマットの血も引いていますから、魔力量も豊富で、カーディフの女傑と呼ばれ、有名な方です。


 わたくしのおばあ様にとってミシェル様は小姑で、仲良しだったそうですわ。



 わたくしの神官職の相方の玄妙がわたくしのお兄様と結婚したら、こんな感じになるのかしら?

 憧れるわね。


 あぁ、玄妙のお兄様の幽玄様とわたくしが結婚するのでも、いいかもしれないわ。

 黒目黒髪の素敵な方よ。

 次期皇王で将来性も素晴らしいわ!



 あぁ、いけません。

 わたくし、既に結婚しているのでしたわ。


 夫にキスを拒絶されて、現実逃避をしてしまいそうになりましたわ。


 ほほほ。


 今日は落ち込んでいるので、このくらいにしておきますわね。

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