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神喰らい  作者: 新殿 翔
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神を待つ悪魔

 ねえ、来るよ、近づいて来るよ!



「神様が、もうすぐここにやって来るよ……」



 ふ、ふふふっ!


 アスタルテ、言ってた。


 神様は食べるな、って。


 ――けど、攻撃はしていい、って。


 始まるんだって。


 あのおかしな欠片を、治してあげるんだって。



「あはっ!」



 楽しいなっ!


 神様に会うの、初めてだよ!


 どんな存在なのかな?


 私達にこんなものを押しつけた世界を支える存在って。


 原初の代替品って。



「……ついに、世界に知らしめるというわけだ」

「そうだよ! そうだよティレシアス! 教えてあげようよ!」



 忘れてるかな?


 覚えてないかな?


 でも駄目。絶対許さない。


 思い出させてあげる。


 私達が帰って来たって、教えてあげよう!


 この残酷な世界に!


 欠片が全て集まったと。


 終わりの始まりは、まだ終わっていないと!


 この世界がしたことなんて無意味だったと!



「バアル。バアルも楽しみだよね?」



 分かってるよ。


 バアルもこの世界が憎いもんね。


 一緒にやろう。


 全部全部、私達におしつけた苦しみを返してあげる。


 それで、最後には許して、一緒になるんだ!


 原初の渦になるんだ!


 ああ、楽しみだな。


 早く来ないかな。神様。


 ああ、楽しみだな。


 おかしな欠片がちゃんと治ってくれることが。


 ああ、楽しみだな。



「きゃはははははははははははははははははは!」



 全部の終わりが!



 ……彼の欠片は未だ目ざめず、か。


 けれど、構わない。こうなったら荒療治しかないだろう。


 予定は狂ったけれど、結果はどうせ一緒なのだ。構うまい。


 ……ああ。楽しみだ。


 全部が終わる。


 この苦痛も、悲嘆も……あるいはこの胸の苦しみも。


 ――何故、シアス。貴方は裏切ったの。全部貴方が最初に始めたことなのに。


 貴方が私に、復讐を教えてくれたから、だからここまで来れたのに。


 いきなり裏切るなんて、酷過ぎる。


 でも、構わない。


 どうせ全てが原初の渦の泡となって消えるのだから。


 例え父代わりの貴方が裏切っても、構わない。


 彼の欠片を目ざめさせ、十全たる状況で、全ての欠片を一つにしよう。


 それで、全て終わりだ。



 ……?


 なんだろう。


 少し、悪寒がした。


 ……気のせい、だろうか。


 気が滅入ってるせいかな……やっぱり、気にし過ぎなのかもしれない。


 そうだな。


 もう少し、気を緩めよう。


 こんなんだから、俺は根暗なんだよな。



「なにをぼーっとしているの、ライスケ?」

「あ、いや。悪い」



 ウィヌスに声をかけられて、意識を引き戻される。



「……まったく」

「で、なんだっけ?」

「きちんと聞いていろ。貴様というやつは」



 イリアにも呆れられた。



「すまん……」

「今後はどうしよう、って話です」

「神聖領にいるのはいいけど、何も決めないままってのもあれだろ?」



 メルとヘイが補足してくれた。



「ああ……」



 そっか。


 国境に近づかないのはいいとして、それ以外はまったく無計画だもんな。



「ライスケはなにか意見はある?」

「……いや、俺は特に」



 というか、意見って言われても、そもそも神聖領にいること自体が俺の最大の意見だしな。


 これ以上は特になにも要望とかはない。



「そうなると、結局は各人の自由行動になるな」

「それじゃあ今までどおりね」

「まあ、子供でもあるまいし、無理に足並みをそろえる必要もないわけだが」

「ま、それもそうか」



 というわけで、結局は取り決めらしい取り決めはなにもないままのわけだ。



「しばらくはこの町に留まる?」



 ウィヌスの問いに、反対意見は出ない。



「なら、そういうことで」



 なんといか……またぐだぐだだよなあ、俺達って。


 まあそういうのもいいよな。きびきびしてるよりずっとマシだ。


 そんなことを考えていると、不意に肩を叩かれた。


 ん……?



「どうかしたか、イリア」

「いや、なに。今夜少し付き合え」

「は?」



 今夜って……また、どうして。



「なに、夜遊びの誘いだ」

「夜遊び……」



 なんか変な響きだな。


 というかあからさまに怪しいぞ。



「なにかたくらんでないか?」

「勘繰り過ぎだ、馬鹿者め」



 苦笑し、イリアが立ちあがって去って行ってしまった。


 なんだったんだ……?



「姫様からのデートの誘い?」

「そりゃないだろ」

「ああ、自分で言ってなんだけど、俺もそうおもう」



 イリアが俺を、なんて。イリアはあれでも一国の王女だぞ。俺なんか眼中にあるもんか。



「まあ、体のいい荷物持ちとか、そこらへんか」

「おー。頑張れよライスケ」

「なんでヘイじゃないんだ……」



 まったく。そう言う時の為のヘイじゃないのか。イリアめ。


 ヘイをいじめるのに飽きでもしたのだろうか。


 それはそれで何か酷いよな。



「んじゃ、俺は自由に酒を飲んでくるぜ」



 ひらひらと手を振って、ヘイも行ってしまった。


 ……あいつ、今夜は帰ってこないな。


 酷い酔い方するもんなあ。


 喧嘩とか、騒ぎを起こさないでくれればいいんだが……まあ酔っぱらいにそれを要求しても無理か。諦めよう。


 騒ぎを起こしても衛兵に袖の下を渡せば済む話だし。


 ……そこらへんのやり取り、俺もなんだかこっちの世界に慣れてきたのかね。



「ライスケ。そろそろ声をかけたほうがいいんじゃない?」



 と、ウィヌスがいきなりそんなことを言って来た。


 声をかけるって……誰に?


 いや、ここには俺とウィヌスとメルしかいないんだから、この流れでいくとメルか。


 で、なんで俺がメルに声をかけなくちゃ……あれ、なんでメル、そんな目で俺を見てるんだ。なんか、つまらなそうな感じの。



「イリアさんと仲良しなんですね?」

「まあ……仲は悪くないんじゃないか?」



 一緒に旅するくらいだし。



「馬鹿な答えね」



 ウィヌスが微苦笑し、立ち上がった。



「鈍いのもいい加減にした方がいいんじゃない?」



 なんだ? あいつ。



「ライスケさん」

「な、なんだ?」



 メルの声に、何故だか過敏に反応してしまう。


 あれ、なんだろ。ちょっと……威圧感?



「明日、一緒に町を回りませんか?」

「あ、ああ……もちろんいいけど」

「約束ですよ?」



 なんなんだ、一体……?



「……ライスケさんって意外と――」

「ん、なにか言ったか?」

「な、なんでもないです! それでは、また!」



 メルが走り去ってしまった。


 ぽつりと一人残されて、首を傾げる。


 ……?


んー、次の展開が思いつかない。

ヤベー。頑張れ作者。

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