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神喰らい  作者: 新殿 翔
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二柱の神

「折角来たのだ。少しは神聖領を見ながら、ゆっくりと行くとしよう」



 イリアがそう言うと、ヘイが首を傾げる。



「神聖領なんか見るもの特にないですよ?」

「だから貴様の目は節穴だというのだ」

「いきなり酷い! そして暴力反対!」



 呆れたように、イリアがヘイの後頭部を叩いた。



「とにかく、そういうことだ。反論は認めん」



 ……イリアはこう言っているが、実際はそれは俺が頼んだからそうなったわけで、あえてそこをヘイやメルに伝えないのは、イリアの気遣いなのだろう。


 正直、ありがたい。


 あまり触れて欲しい話題でもないし……。


 やっぱり、怖いんだ。


 ……自分が何者なのか、とか。


 そんな自分のことを知ったら、皆はどうするのだろう、とか。


 うじうじしているな、って自覚はある。でも、だからってこれは、俺の性根に染み付いてるものなんだ。そうそうどうにかできるものじゃない。


 ……自分で言ってて、すげえ情けないけどな。



「ツィルフ。なんですか、それは」

「ナワエちゃーん。これ知らんの? これはな、春画っちゅうんや。そこの店で売っとった」

「そうですか」

「ひぁっ!? ワイの、ワイの幼女春画がっ!」



 びりびりや! びりびりやで!


 ナワエちゃんの放った風の刃が春画をびりびり――!



「なんちゅうことすんじゃワレェ!」

「文句があるなら聞きましょう。ただし、相応の覚悟はある場合に限りますが」

「ごめんちゃい」



 いややわー、ほんのお茶目な冗談やないの。


 春画やって本当は、ほら、ネタやネタ。ナワエちゃんと仲よー会話しよっていうワイの心意気?



「大体貴方が考えているのとが分かるので言いますが、とりあえず死んでください」

「神は死なぁああああああああん!」

「試しますか?」



 ナワエちゃんの爪が薄緑の光を帯びる。


 ひぃっ……。



「身体を引き裂くのはワイでももう勘弁や! やるなら、や・さ・し・くげぁああああああああ!」



 目が、目がぁ!


 遠慮なくナワエちゃんの爪がワイの眼球を……!?



「ここから往来の真中であることに感謝してください。人目がなければ遠慮なく四肢を引き千切っているところです」

「これが、これが人目を気にしての行為というんか!?」



 見てみぃ、道行く人々がこっち見て奇妙なもん見る目を向けてきとるやないか!



「やかましいです」

「あふっ」



 目がぁ!?


 ちくしょう二度も潰されて思わず開発されちゃいそうだぜ!



「本当に口惜しい……人目がなければ、胴を裂くことも出来たのに。こんなところでそんなことをしたら私達が神だとばれてしまいます」



 猟奇的やねナワエちゃん!



「もう神ってばらしてえーんちゃう? この国って神様至上主義なんやろ?」

「実際は神を祀って一部の雑種が私腹を肥やしているだけの豚小屋国家ですがね。大体、神など祀ってどういうつもりなのですか、人間は。神が人間などいちいち救う訳がないでしょう」

「いやいやわからんよー。神も結構いるし、中には人間大好き愛してる! みたいなやつもいたりいなかったり……むしろワイがそうなんや!」

「そうですか、それは結構ですね」



 ……ナワエちゃんはもう少し、優しくしてもええんとちゃうかなぁ。



「それよりも、古代の悪魔がこっちに現れたというのは本当なんでしょうね?」

「知らんよー、ワイやって噂程度に聞いただけやし……」

「まったく」



 ナワエちゃは溜息をついて……そんな憂いのナワエちゃんもワイ大好きや――ひでぶ!



「不穏当なことは考えないように」



 またワイの目を潰した!


 あんな、ワイの目はそんなお手軽気分に潰してええもんとちゃうで?


 実は眼球潰す感触が気に入ったとか言わんよな?



「……」



 目を逸らした!?


 ナワエちゃんのそんな鬼畜で常識外れなところにワイは心奪われてまうわ!



「まあ、とにかくせっかく海まで渡ってここまで来たのです。古代の悪魔を見ずに帰るのはいささか馬鹿らしい。人が恐れる化物の正体、この目で確かめることにしましょう」

「そやなー。やー、古代の悪魔がまたいなくなった、って聞いた時は驚いたもんやけど、すぐ帰らんでよかったわー。お陰でこうしてすぐ向かうことが出来るしな」

 んま、とりあえず行ってみよーや。



 ……はぁ。


 とりあえず、次に到着する街で、しばらく滞在することになった。


 それなりに大きな街で、滞在するならそこがうってつけ、というのはヘイの弁だ。


 まあ他でもないヘイの言葉だし、まだまだ国境も遠いので、俺達はそこに向かっていた。


 ……はぁ。


 また溜息がこぼれる。



「ライスケさん?」

「……」



 それにしても……何でまた、あいつらは現れたのだろう。


 俺に、分かるわけがないか。


 あいつらのことは何も理解できない。


 この力を自らすすんで使って、あまつさえ世界をどうにかしようなどと考えているような連中なのだ。


 俺なんかの考えが及ぶわけもないのだ。



「ライスケさん?」

「……」



 今はとにかく、連中と顔を合わせたくはない。


 ティレシアスのことだけは少し心配だけれど……あの男なら、なんとなく平気なような気がしている。


 ……あいつって、敵なのかな。


 いや、でも……これまでの様子からして、それはないよ、な……多分。


 あー……分かんねえ。



「ライスケさん!」

「ん……どうした、メル?」



 いきなりそんな大きな声だして。



「どうした、じゃねえよライスケ。お前何回メルのこと無視してんだよ」

「え……無視って、俺が?」



 メルを……?


 本当に?


 もし考え事に夢中でメルのことを無視していたのだとしたら……



「悪い、メル」

「あ、私は構わないんですけど……大丈夫ですか? なんだか、ずっと顔色が優れないような……」



 ん……まあ、決して気分がいいとは言えないけれど。


 だからって心配をかけるほどのことじゃない。顔色には気を付けないと名。



「大丈夫だよ」

「……そうですか?」

「ああ」



 何か言いたげだったが、メルはそれ以上なにも言ってこなかった。



「ライスケ。お前本当に大丈夫なのかよ?」

「ああ……心配するな」



 ヘイにも、そう言っておく。



 馬車の中で、ウィヌスが声をかけてきた。



「貴方は、ライスケのことをどう思っているの?」

「む?」



 それは……どういう意味だ?



「もちろん、仲間だと思っているが?」

「そう……まあ、そうでしょうね」



 ……?


 なんなのだ?


 そもそもこんなところでこんな話をして……ライスケ本人が聞き耳を立てているとも限らんのだぞ。



「ライスケなら心配ないわ。きっちり声が彼に届かないようにしてるから」

「……また、どうでもいいところで神の便利技を使うものだ」



 魔術を使っている気配はない。ということは、神特有のものなのだろう。



「それで話を戻すけれど……ただの仲間?」

「なんだ、しつこいな。それ以外になにがある」

「別に。ただの興味本位よ」



 の割には、そこはかとなく真剣な目をしているではないか。



「仲間……ね。よく分からないわ」

「なに?」

「分からないと言ったのよ。仲間というものが、一体どういうものか」

「……」



 それは……人間と神で、認識に差があるとか、そういうことなのだろうか?



「ならば貴様にとってわたし達は何者なのだ?」

「……人間ね」



 それはまた、おおざっぱな認識なことだ。



「まあ、ライスケだけは違うけれど」

「……そこはまあ、分からなくもないな」



 なにせライスケは……彼は、分からないことだらけで、しかも強いからな。


 私ですらウィヌスには人間という枠組みに収まる存在の一人だというのに、ライスケだけは違う。なるほど、十分納得できることだ。



「ライスケを……私は、どう認識しているのかしらね」

「それは、どういう意味だ?」

「……いえ。なんでもないわ」



 それきり、ウィヌスは口を開こうとはしなかった。


 ライスケをどう認識しているか、か。


 それはまた、意味の分からない質問を……。


 ……いや、そうでもない、か?


 よくよく考えてみれば、私も、ライスケを仲間という枠に収めるには、少し足りないものを感じる。


 だとすれば……なんだ?



ちゅうわけでHENTAI神登場!

ひさびさに神喰らい描いてて「描きやすい……なんだこの描きやすさは!」って思った。


ってかコメディ要素久しぶりじゃね?

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