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神喰らい  作者: 新殿 翔
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浅黄色の眩さ

……これだけ書くのに三時間もかけてしまった。

の割りにかなり文章に自信がないので、問題点などありましたら報告お願いします。



「十年ぶりぐらいの食事だったけど、まあまあの味だったわね。うん、及第点といったところかしら」



 村の存亡の危機が人知れずにここで去った。


 いや、というか十年ぶりって……。



「そんなに食べてなかったのか?」



 村一番と評判らしい料理店を出てから、俺はウィヌスに尋ねてみた。



「ま、神って基本不死だしね。必要ないのよ、そういうの」

「便利なもんだな」

「とは言え、神だって食事を美味しいと感じることは出来るわ。むしろ、長い月日を生きる神にとっては食事とか睡眠とか、そういう必要のない行為って以外と重要なのよ? 主に暇潰し的な意味で。千年単位の暇は神の精神すら破壊出来るから」



 なんとなくウィヌスが食事に執着を見せた理由が分かった気がした。


 千年もの時間ずっと暇だったら、そりゃ頭がおかしくなって不思議じゃないだろう。少なくとも俺には想像も出来ない。


 不死だからこその悩み、ということか。



「あれ。でも今十年ぶりぐらいの食事って言ってなかったか?」

「そうよ?」

「なんで喰ってなかったんだよ?」



 ウィヌスなら世界食べ歩きとかやりそうなのに。



「寝てたもの。十年」

「……え、十年も?」

「そう、十年。食事よりも睡眠の方が簡単で、しかも多くの時間を潰せるから。ライスケのうっさい泣き声で起きなかったら、あと数十年は寝てたわね」



 ……流石は神。睡眠の時間の半端がなかった。



「でもライスケに会えて、思ったのよ。これはいい暇潰しだ、って。何せ世界を喰った人間との旅よ? これが暇潰しにならないわけがないわ」

「……まさか、そんな理由で俺と一緒に?」

「そうよ?」



 なに当り前のこと言ってるの、みたいな顔で返された。


 ……俺、けっこうウィヌスに感謝してたんだけどなあ。


 そんな理由だったのか。


 なんか……やるせねえ。


 そうだよなあ。ウィヌスみたいな悪神が俺を思って一緒に来てくれたとか、そんな善良な理由があるわけないじゃん。


 少し考えれば分かったろ、俺。


 まったく、なにを期待していたのか。


 ……いいけどさ、別に。


 それで俺が助けられたのに違いはないし。


 …………気にしてないぞ。本当に。



「さて、と。そろそろ生贄の儀式が始まることかしらね。



 日を見上げてウィヌスが言う。


 少し反応してしまった。


 怖かったから。


 ……喰うのか。また。


 いや、今更何も言うまい。


 覚悟は決めたんだ。



「行きましょうか、ライスケ」



 そんな俺の葛藤など知ってか知らずか、ウィヌスは飄々とした態度で歩き出す。



「……ああ」



 儀式に参加するのは村長と、村が興されて以来ずっとそこに住んでいた家系の代表者。そして――生贄本人。


 あわせて十五人だ。


 湖のほとりには祭壇が設置され、その祭壇に生贄の少女が立っている。


 俺とウィヌスはそれを、少し離れた木の枝の上に屈んでみていた。



「……まだ始らないのか?」



 俺達がここに来てかれこれ三十分は過ぎた。


 だが、一向に儀式とやらが始まる気配はない。


 ただ物々しい雰囲気だけがのしかかるように漂っている。



「いえ。来たわ」



 ウィヌスが呟いて……湖の水面が盛り上がる。


 ちいさなざわめきが村人の中から聞こえた。


 少女は……動かない。


 水面の中から姿を現したのは……人?


 いや、違う。


 頭こそ人の形をしているが、そこから下はまるで人とはかけ離れている。


 蛇、なのだろうか。


 十メートルはあろうかという鱗におおわれた長大な胴が空中でとぐろを巻いて、その尾には指が十本もある手が一つ生えていた。


 ……なんて醜悪なんだろう。


 あんなものが神?


 ウィヌスとは比べるのも失礼なくらいに醜い、あんなものが神だと?


 ありえない。


 ここの村人は何を考えているんだ。


 あんなものを神だと信じて生贄を差し出し続けるなんて、正気の沙汰じゃない。



「ウィヌス」

「まだよ」



 彼女の手が俺を制した。



「なんで……もう出てきただろ」

「生贄の目の前にいるのよ? 今下手に出たらあの子、死ぬかもしれないけど、それでもいいの?」

「……」



 そう言われては、動くことは出来なかった。



「やるなら、連れ去る瞬間。どんな存在も獲物を捕らえた時には隙が生まれるものよ」

「……分かった」



 でも、意外だ。


 ウィヌスがあの少女のことを気にかけるだなんて。



「勘違いしないでよ。あの子が死んで貴方に落ちこまれたら、一緒にいる私が迷惑なだけだから」



 ……えっと、ツンデレ?


 違うな。


 こいつ、今の本気で言ってるよ。だって顔が真剣だもん。


 外見と違って可愛げが一つもないやつだな。


 思っていると、村長が偽神の目の前に立って、なにか挨拶をしだした。


 聞きたくもないので意識を別のところに逸らす。


 生贄の少女。


 彼女は、未だに反応らしい反応を見せない。


 ただぼんやりと偽神を見つめている。


 人はああまで無機質な表情になれるのかと初めて知った。


 彼女は、もうすでに死を覚悟したのだろうか?


 ……どうでもいいか。


 そう。どうでもいいことだ。


 俺にとって、少女の都合なんて関係ない。


 俺が喰いたくないから助けるだけだ。


 いわば、子供が野菜が嫌いだからとサラダを残すのと一緒だ。


 しばらくして、長々しかった村長の台詞が終わる。



『よい。今年もまた、村の安全を保証しよう』



 ……吐き気がした。


 お前に村の安全の保証?


 出来るわけない。何故なら、あいつは神でもなんでもないのだから。


 なのに、その嘘に騙されて、安堵したような表情を浮かべる村人達。


 人を殴ってやりたい、と思うのは久しぶりだ。



『その代わり、この娘は貰ってゆくぞ』



 偽神の手が、ゆっくりと少女に伸びる。


 彼女はそれに拒絶を示すでもなく、



「……」



 涙を一筋だけ流した。


 無表情のまま、確かに涙が一滴、頬をつたい、顎から落ちる。


 そして小さく口を動かす。


 声はない。




 ――元気でね。




 見間違いではない。


 俺の眼が、この距離で見間違えるものか。


 確かに彼女は無言で言葉を作ったのだ。


 元気で、と。


 誰に対する者かは知らない。


 けれど……確かに彼女は言ったのだ。


 誰かを心配する言葉を。


 こんな状況で、自分ではなく、誰かへの気遣いを!


 ひどく、あの少女が眩しく見えた。


 そしてそんな少女がこんな目に合わなくちゃならない世界に苛立ちが生まれる。


 彼女の浅黄色の前髪に、偽神の穢れた指先が掠めた。


 気付けば、俺は動いていた。



「待――ライスケっ!」



 ウィヌスの制止は間に合わない。


 俺が思いきり跳んだことで、その反動を受けた木が粉々に砕ける。


 一瞬で俺は祭壇の上に立っていた。


 ……偽神の手首を握って。


 時間が止まったかと思う静寂がほんの少しだけあって、直後、困惑のどよめきがあがる。



『貴様、何者だっ!?』



 偽神の声。


 気持ちが悪い。


 ああ、本当に気持ちが悪い。吐き気がする。



『我の邪魔をすることが許されるとでも思っているのか。我の加護なくしてこの村は――』



 こんなやつの言葉、聞きたくもない。


 俺は指に力を込める。


 それだけで……偽神の手首が消し飛んだ。血液はその刹那に生まれた運動エネルギーによって蒸発させられ、さらに手首の方も傷の断面が焼きつき、血が流れ出すことはない。


 偽神の悲鳴。


 その体が痛みに暴れ回る。


 ――その時、偽神の体の一部が鞭のように生贄の少女の身体に迫った。


 俺が出来る限り優しく、彼女を決して傷つけないように、その身体を引き寄せると、一歩後ろに下がった。偽神の身体は少女を掠めることもなく通り過ぎる。


 少女が驚いたように俺を見る。


 ……初めて、表情らしい表情が見れたな。


 そのことに少し嬉しさを覚えながら、俺は少女を後ろにどけた。



「ウィヌス、よろしく」

「……人の指示を無視しておいて、それ?」



 そこに呆れ顔のウィヌスが立っていた。


 俺の後を慌てて追いかけてきたのだろう。



「まあいいわ。この子は守っててあげるから、さっさとやっちゃいなさい」

「ああ」



 迷いはなかった。


 殺すことに対する抵抗?


 喰らうことに対する抵抗?



 ……だから?



 そんなものより、この醜い偽神を一刻も早く滅ぼしたいという憤りの方が、遥かに大きかった。


 偽神に向かって一歩踏み出す。


 そこで……、



「ま、待ってくれ!」



 村長が俺に声をかけた。



「あ、あんたら何て事を! 水神様にこんなことして、村がどうなるか分かってるのか!」



 ……なにが、水神様、だ。



『そ、そうだ! 我に刃向かうなど、村人ども、こいつらを殺ゲェァッ!?』



 偽神の体を掴んで、地面にたたきつける。


 殺してはいない。


 村人達に言いたいことがあったから、それまでは殺さない。


 ただし、既に瀕死だ。


 体は痙攣して、俺が掴んだ場所など肉が弾け骨らしい乳白色が覗いている。


 俺は地面を蹴って、村長の目の前に移動した。


 村長の身体が大きく震え、その背後に控えていた村人たちが後ずさる。



「お前達、これまで何人の人間を生贄にしたんだ」



 自分でも驚くくらいに冷たい声。



「な、なんなんだ、貴様はっ!」

「答えろよ」



 村長の胸ぐらを掴んで持ち上げる。



「ぐ……や、やめ」

「お前らは、これまで何人の人間を生贄にした」

「――ひ、百人だ」

「残念、はずれ。村興しから毎年生贄を出していたから、正確には百十三人ね」



 ウィヌスの訂正。


 ……自分達が生贄にした少女達の数すら、こいつらは数えていないのだ。


 村長の身体を地面に放る。



「が……ひっ」



 転がった村長が恐怖した目で俺を見上げる。


 俺は道端に落ちて腐っている生ゴミを見るような目で見下ろした。



「ふざけんなよ、テメェら」



 噛み締める奥歯が軋んだ。



「あんな偽神を馬鹿みたいに怖がって、何が水神様だ。何が生贄だ。本当に、お前らは命をなんだと思ってるんだ。命はテメェらの喰いものじゃねえんだよ。好き勝手していいもんじゃねえんだよ……っ」



 身体の奥で、世界が囁いた。


 お前がそれを言うのか、と。


 命を散々に喰い散らかしたお前が言うのか、と。


 言うさ。


 言ってやるさ。


 俺が言うのが間違いでも、俺しか言う人間がいないんだ。だったら、俺が言うしかないだろ。



「ぎ、偽神……?」



 村長が俺の言葉を繰り返す。



「そうだ。こいつは神なんかじゃない。その名前を使ってるだけの、魔物だ」



 ざわ、と。


 村人達に動揺がはしる。



「な、なんの根拠があってそんなことを! もしそうでなかったら、本当に神だったらどう償うつもりなんだ! 神の加護を失った村がどうにかなったら貴様は――」

「うるせえよ」



 くそ。気持ち悪い。


 今すぐにでも吐き出しそうだ。


 気持ち悪い。


 何もかも気持ち悪い。



「見ろ」



 俺は偽神の消し飛んだ手首を掴んで、村長につきつけた。


 びくり、と村長の肩が跳ね、芋虫のように尻を地面につけたまま退く。



「神は不死だ。世界がある限り死なない。なら――こいつのこの有り様はなんだ?」



 ウィヌスは俺の拳で上半身が吹き飛んでもすぐに再生した。


 だがこいつは再生しない。


 それこそが……なによりの証明だ。



「これが不死に見えるか? これが世界を支える神の一柱の姿なのか? なあ、どうなんだ?」



 偽神の体を村人達の方に転がす。



「そんなわけねえだろうが」



 偽神の顔面を蹴る。


 それで終わり。


 偽神の体が僅かな肉片を残して吹き飛んだ。



「こんなにも簡単に死んだぞ」



 俺の中の渦にドブ水みたいなものが混じる。


 いいさ、別に。


 こいつを滅ぼせるなら、このくらいの嫌悪感は安いものだ。



「お前らが百十三人もの少女達を差し出した水神様とやらは、神の加護なんて大層なものなんてテメェらにやってたわけじゃねえ。生贄なんて元から必要なかったんだよ。分かるか……テメェらはな、無意味に百十三人の人間を殺したんだよ」



 例えそれが奴隷だろうが奴隷じゃなかろうが関係ない。



「この村はいたずらに生贄出して、そうやって死んだ少女の苦しみも考えずにへらへら笑って出来てる。お前、さっき俺に言ったな? あいつが本当の神だったらどう償うつもりだ、って」



 青い顔をする村人達に言い放つ。



「なら、お前らは偽神に差し出した少女達にどう償うんだ? 死者は何も言わないぞ? 何も感じないぞ? そんな彼女達に、どう償ってみせてくれるんだ? なあ、おい」



 答えは無い。


 ……は。


 気持ち悪ぃ。



「お前らは、ただの人殺しだ」



 ――ここは、人喰いの村だ。


 俺と同類の……最低の存在だ。



「随分と頑張ったじゃない」



 にやにやとウィヌスが笑う。



「……うっせ」



 俺はと言えば、未だに気分の悪さを引きずりながら背嚢に荷物を詰め込んでいた。


 場所は宿。


 俺達は一刻も早くこの村から出るための準備をしていた。


 金は既に手に入ったし、ここに残る理由なんて一つもない。


 いや、むしろ精神衛生上よろしくない。



「かっこよかったわよ。ぞくりとしたわね。『お前らは、ただの人殺しだ』ですって」

「人の真似してないで、お前も準備したらどうだ? ……ん、お前の荷物は?」



 乾し肉とか果物とか買ってたのに、そういえば見当たらない。



「ここ」



 言うや、ウィヌスは自分の服の中に手を突っ込んだ。


 そして……赤いリンゴっぽい果物をとりだす。



「……なんの手品だ?」

「手品じゃないわよ。ちょっと私の所有する独立空間に放り込んだだけ」



 リンゴもどきを齧って、ウィヌスが説明する。


 なんだ独立空間って。


 ……多分、神の特権みたいなものだろうと推測しておく。



「便利よ。時間の概念を排除してあるから、この空間にしまっとくと食べ物は腐らないし。かなりの量のものをしまえるしね」

「……俺の荷物も、」

「頑張って」



 ……だろうよ。


 悪神様は俺の荷物までは持ってくれないらしい。



「……まあいいや。なら、もう出るか?」

「そうね。でも、その前にそろそろ解決すべき問題に目を向けたら?」

「…………」



 ウィヌスに言われて、俺はゆっくりと視線をそちらに向けた。


 ……うん。


 分かってたさ。


 俺のコートの裾を掴む手がある。


 それは歳の頃は俺より見かけ二つか三つ下の少女。


 髪は浅黄色。


 ――生贄の少女だ。正しく言うなら、生贄だった、だけど。


 なんかあの後、そのまま俺達についてきてしまったのだ。


 俺は置いて行こうとしたのだが、ウィヌスに「置いてっても彼女、居場所ないでしょうね。こんなことになっちゃ。下手したらまた奴隷として売られるんじゃない?」と言われて、仕方なしに連れてきたが……。


 正直、どうすればいいのかまったく分からない。



「えっと……とりあえず、俺の服、離してくれないか?」

「……あ、はい」



 少女の手が俺のコートを離す。



「えっと、もしかして、この先も付いてくる気なのか?」



 まさかと思いながらも聞いてみる。



「駄目、でしょうか?」



 そのまさかだった。


 窺うような、不安げな視線。


 さっきまであんな無表情だったのに、なんだこの変貌っぷりは。


 そのギャップに僅かながらも緊張する。


 自慢じゃないが、俺の人生でこんな美少女に接近したのは初めてのことだ。


 そりゃ緊張もするさ。



「いや……駄目っていうか」



 この少女はウィヌスのように不死ではない。


 別に付いてくることはどうでもいいけれど、それだけが心配だった。


 というか……怖い。


 この眩しい少女は、絶対に喰らいたくないから。



「助けてもらった恩返しがしたいんです! なんでもしますっ!」

「いや。なんでもすると言われても……」

「なら下の世話でもしてもらったら?」



 ウィヌスの発言で空気が凍った。


 ……は?


 下の世話……って、はあ!?



「ば、馬鹿じゃないのか。そんなことっ」

「や、やりますっ」



 ちょ、待……。


 顔を赤くして答える少女に俺は慌てて止めに入る。



「いいから、そんなことしなくて!」

「で、でも私、そのくらいしか……!」



 ウィヌスが余計なことを言ったせいで……!


 恨みがましい視線を向けるが、ウィヌスは涼しい顔。



「大丈夫よ、ライスケ。その子は村が奴隷として買って、偽神に差し出した。偽神を殺したライスケにはちゃんとその子の所有権があるわ。何しても、誰にも文句なんて言われないわよ」

「そういう問題じゃない」



 倫理観が違い過ぎる。


 こっちの世界では奴隷になら何でもしていい、って考えが定着しているっぽい。


 ふざけてる。


 ……今はそこに気持ち悪がってる場合じゃなかった。



「だいたい、お前はいいのかよ。この子が一緒だとお前だっていろいろ不便なんじゃないか?」



 神ってことがバレたら問題らしいし。


 それに、そもそも彼女に正体がバレたらウィヌスが彼女を殺しそうで怖い。



「あ、私って神だからよろしく。名前は教えないけど、とりあえずウィヌスって呼んで。このことは秘密ね。口外したら、口外した相手も含め殺すから」



 ――こいつ、自分からバラしたぞ?


 しかも爪翼まで出して上下に振ってるし。おい、天井が削れただろ。


 少女が目を見開いて、慌てて地面に膝をついた。



「申し訳ありませんっ。神様とは知らず!」

「別にいいわよ。顔をあげて立ちなさい。拝まれるのはありがた迷惑よ」



 ……改めて、神様ってすごい格が高いんだな、と思う。



「あの、もしかして貴方も……?」



 少女が俺に尋ねてきた。



「俺は神じゃない」

「神より強いけどね」



 そりゃ世界一つ分の力持ってるからな。


 全然、自慢できるようなことじゃないけど。



「……神よりも?」

「そんなのはどうでもいい。それより、ウィヌス。お前なんで正体バラしたんだ?」

「そっちの方が楽しそうじゃない。少なくともライスケの面白い顔は見れたわ」



 くすり、とウィヌスが笑う。


 そういえばこいつは悪神でしたね。


 しかも気まぐれ。


 なんて性質が悪いんだ。



「……ライスケ。貴方が何を心配してるか予想がつくけれど、いつまでもそうやって逃げの姿勢でいるつもり?」

「――……」



 だから、なんでこいつは不意に核心をつくようなことを言い出すんだ。


 反応しにくいだろうが。



「……別に、逃げてるわけじゃ、」

「逃げてるでしょ」



 ……そうさ、逃げてるさ。


 でも、逃げちゃだめなのかよ?


 こんな力持ったら、命に触れるのが怖いと思って当然だろうが。


 それも、こんな眩しい命に。



「ま、別に貴方がそれでいいなら構わないけれど? その子もここに置いていけばいいわ。私達ならその子を引き離すなんてさして難しい事でもないしね」



 隣で少女が身体を強張らせたのが分かった。


 ……くそ。


 ウィヌスに乗せられてるな、とは自覚している。


 けれど……この少女に置いて行くのが心配と思った俺がいるのも事実だ。


 このまま行くのは……あんまりにも後味が悪すぎる。



「……行く当ては、ないのか?」



 少女に問いかける。



「私は帝国で身売りされましたから……王国にはどこにも」



 帝国……よりにもよって冷戦状態の国か。


 ……ああ、くそ。


 なんなんだ、この世界は。


 俺に何か恨みでもあるのか?



「お願いします! 私を連れて行って下さい!」

「――ったく」



 もういいや。


 あれだ。


 俺が気をつけて彼女を殺さないように頑張ればいいんだろ?



「好きにしろ。言っておくけど、帝国には行かないからな」

「……はいっ!」



 嬉しそうに頷く彼女を見て、溜息。



「そういえば、名前は?」



 まだ聞いてなかったよな。



「メルフィアです。メルって呼んでください」



 にこり、と。メルフィア――メルが笑む。


 まあ……この笑顔を見れるなら、多少の面倒は仕方ないって納得しておくか。


 ほんと、気をつけないと。


 ちょっと力を込めて触れただけで人間なんて消し飛ばしかねない。魔物相手でも小石を蹴る気分でアレだったんだ。


 力加減、きちんと出来るようになろう。



「よろしく、メル」

「せいぜい荷物にはならないことね。邪魔になったら殺すわよ」

「はい!」



 ウィヌスの脅しにすら笑顔で頷くメル。


 あー。


 俺には、この笑顔眩しすぎるなあ。



あー、メルフィアをメルと呼ぶかフィアと呼ぶかで迷った。間を取ってルフィ……はい、どこぞの海賊王を目指す少年になってしまいますね。


やっぱりあれですね。馴染まない小説って書きにくい。いつになったらライスケとかの書き方が馴染むんだろう。


SWはそれなりに馴染んでるんですけどね。

こうやってあとがきにウザったいくらいにSW、SW連呼してたらSWの人気も上がるかな、とかセコい考えの作者ですみません。


……うん、次からはSWのことは口にださないよ。



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