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神喰らい  作者: 新殿 翔
29/99

神の一柱

 愛しき子。



 その無垢な瞳で私を見つめないで。



 とても……苦しくなるから。



「……」



 憎しみ……楔……力……。


 ティレシアスが言っていたことは、今でもよく分からない。


 守るべき者を守る時って、なんだよ。



「ライスケさん。どうかしましたから?」



 王馬達の手綱を握るメルが、俺の顔を覗きこんできた。


 それに、弾かれるように答える、



「ん、ああ……何でもない。少し、考え事だ」



 あの町を出て数時間。メルの住んでいた町まではまだまだ道のりは長い。多分、一度野宿を挟むことになるだろう。



「暇ねえ」

「暇だな」



 馬車の中ではウィヌスとイリアが愚痴っている。



「何か、そう……空から誰か落ちてくるとかないかしら?」

「ならヘイでも打ちあげるか?」



 びくりっ、と。


 メルを挟んで俺の反対側に腰かけていたヘイの肩が跳ねる。


 その目が俺を見る――が、俺は顔を逸らした。俺に助けを求められても困る


 ご愁傷様としか言えないぞ。



「でも、そんなことしたら死ぬんじゃない?」

「受け止めればいいだろう」

「だったらライスケなら受け止めなくても全く問題ないから、ライスケにしない?」



 え、俺……?


 なんだかその「ざまあみろ」みたいなヘイのにやにやした顔がむかつく。



「ねえ、ライスケ。いいでしょ?」

「そこで俺が頷くと思うのか?」

「ライスケならば、期待は裏切らないだろう」



 天幕越しの声に俺が言うと、イリアが都合のいい願望を俺に投射した。



「お互いを打ちあげてろよ。人を巻きこむな」

「辺り一帯更地にしていいならやるけれど?」

「やるならヘイにしてくれ」

「ちょおおおおおい!?」



 なんで打ちあげるだけで周囲が更地になるんだ。まったく。


 仕方なく俺が妥協すると、ヘイがなにか叫んだが、いつものことなので問題はない。



「姫様、なんか最近俺の扱いがどんどん悪くなってませんか!?」

「安心しろ、ヘイ。お前は最初からどん底だ」

「どこに安心する要素があるのか俺には分からないっ!」



 俺にも分からない。


 ヘイがわめいていると、不意にメルが首を傾げた。



「あれ……?」

「ん、どうかしたか?」

「あの、あれって……人、ですか?」



 人……?


 言われて、メルの視線を追うと……なるほど確かに、道端に人が倒れていた。


 赤髪に赤い服なんで目立つ格好をしているので、遠目にもよく分かる。


 なんだろう。もしかして、死んでいる、のか?



「メル、少し止まってくれるか?」

「はい」



 メルが手綱を引くと、王馬達が脚を止めた。


 俺は馬車から下りて、その男性に駆け寄る。



「大丈夫ですか?」



 揺さぶると、ぴくりとその指先が動いた。


 よかった……生きている。



「どうかしたんですか?」

「く……」



 く?


 苦しい、だろうか。


 病気か何かか?



「食いもん……くれぇ」



 …………は?


 食い物?


 つまり、ということは……行き倒れ?


 ――仕方ない。


 そう思った、刹那、



「今、乾し肉を馬車から取って――」

「何してるのよツィルフ。この変態」

「ぐべぁっ!?」



 馬車に戻ろうとした俺の脇を通り過ぎて、ウィヌスが倒れていた人を思いきり踏みつけた。しかも顔面を。



「お、おいウィヌス。お前何を……!」

「平気よライスケ。それに、こんなやつに貴重な食糧を渡す必要はないわ」



 ウィヌスが踏みつけながら言う。



「こんなやつ、って……知り合い、か?」

「不本意ながらね」



 とどめ、とでも言うように、強烈な蹴りがその男性の鼻頭に叩き込まれる。



「ぶごぁあああああ!」



 その痛みに男性は地面をのたうった。


 そして鼻を押さえながら立ち上がる、ウィヌスに詰め寄る。



「なにすんねんウィヌス! 痛いやないか!」

「顔が近い」



 ウィヌスの爪翼が現れ、男性の首を切り落とした。



「な――!?」



 こ、殺した!?


 俺だけでなく、背後で馬車からこちらを見ていたメルやヘイの息を呑んだのがわかった。



「お前、それはいくらなんでもやりすぎ――」

「平気よ。見てみなさい、ライスケ」



 ウィヌスが言うと同時、男の身体が動いた。


 ……へ?


 だって、首ないのに……なんで……。


 男の身体はウィヌスに切られて宙を飛んでいた首を掴み、そのまま悪い冗談のように首を元の位置に戻した。傷口から炎が零れる。


 こき、と首をならして、男がウィヌスを呆れたような顔で見た。



「いきなり人の首落とすって、相変わらずやなぁ。少しは温厚になれって前から言ってるやろ?」



 く、首が、繋がった?


 混乱しながらも、俺はどうにか相手が何者かを考えて……すぐに思い至った。


 俺は、首どころか上半身を吹き飛ばされて再生するやつを知っている。


 他でもない、ウィヌスだ。


 そしてそのウィヌスの知り合いだという男が首を元に戻した。


 そこまでくれば、答えは簡単だった。



「……神?」

「おお、そっちの兄ちゃん勘がいいなあ。そうや、ワイこそこの世界を支える神の一柱、ツィルフドーグ=グィ=ネ――」

「なに普通に自己紹介してんのよ」



 今度は口を裂くように、頭の上半分をウィヌスの爪翼が斬り飛ばす。


 そしてまだそれをキャッチして、男は顔を繋げる。



「そやったそやった、人間に神の名教えちゃあかんのやったな。そんなら、ワイのことはツィルフって気楽に呼んでいいで」

「あ、ああ……」



 ツィルフ、ね。


 こいつも、神か。


 というかこっちの世界にも方言ってあるんだな……似非関西弁か。



「それでとりあえず、食べもんを……」

「不死なんだから我慢しなさい」

「食は神の癒しやっ! 我慢なんて出来んわっ!」



 ツィルフが凄い剣幕で主張し出した。


 ウィヌスもそうだが、神様ってのは本当に食欲に忠実だな。



「あ、あの……」

「うん?」



 不意にかけられた声に、ツィルフが視線を落とした。


 そこに、メルがいた。


 おずおずと、メルはツィルフに何かを差し出す。



「お、おぉおおおおおおお!」



 それを見て、ツィルフが歓喜に震える。


 メルが差しだしたのは、一切れの乾し肉。



「え、ええんかお嬢さん?」

「はい。あの……どうぞ」

「おおきに!」



 ツィルフがそれを受け取り、一瞬で完食してしまった。



「おおう、美味かったで。お嬢さん、礼言うで」

「メル。こんなやつに恵んでやる必要なんてなかったのよ?」



 神二人の言葉に、メルがどうしていいのか分からず、とりあえず苦笑していた。



「そや。お礼にお嬢さん、女として生まれた悦びっちゅうのを――」



 何を思ったかツィルフがメルの胸に手を伸ばしたので、そこに触れる数センチ手前でウィヌスがその手を切断する。あと一瞬遅れていれば、俺がツィルフの上半身を殴り飛ばしているところだ。



「なにしてるのかしら、この色欲神」

「あ、え……?」



 ウィヌスがツィルフの襟首を掴んで睨みつける横で、メルは自分がセクハラされかけたということが理解しきれずに困惑していた。


 ……ウィヌスが出会い頭にツィルフを変態って呼んだ理由が今分かった。



「ロリコンかよ……」

「違うっ!」



 俺のつぶやきに、ツィルフが叫んだ。



「ロリなんやない、ロリもなんやブッアハッァ!?」



 ウィヌスの拳が遠慮なくツィルフの横っ面を捉えた。


 ツィルフの身体は高速で回転しながら地面に落ちた。



「とりあえずメルに土下座しなさい。じゃないと、このこと……ナワエに伝えるわよ」

「すみませんでしたぁ!」



 早……っ。


 なんだか知らないが、聞きなれない名前をウィヌスが引き合いに出した瞬間、ツィルフがメルに土下座した。



「え……あ、あの、そんな! やめてください!」



 神に土下座される人間なんてメルが初めてなんじゃないだろうか。



「うぅ……ナワエには言わんでおいてや」



 立ち上がりながら、情けない声でツィルフが嘆願する。



「貴方の態度次第ね」

「ワイはウィヌス様の奴隷や!」



 見事な屈服っぷりである。



「まったく……あんたはいつまでも変わらないわね。変態で、馬鹿で、救いようのない下種」

「そこまで言われると照れてまうやろ」

「褒めてない」



 というか今の発言のどこに照れる要素があったのかすら俺には分からない。



「というか、なんであんたがここにいるのよ。あんた確か、東の方の大陸に住んでなかった?」

「あー。なんか風の噂で古代の悪魔が復活したっつうもんやから、海越え山越えやってきた。んで、どこに古代の悪魔っておるん?」



 こいつも古代の悪魔につられたのか。


 ウィヌスも同じようなもんだし。神ってのはどいつもこいつも思考のレベルが同じなのか?



「知らないわよ。最近は古代の悪魔の被害が出たって聞いてないから、またどっかに消えたんじゃない?」



 そう。最近、古代の悪魔の被害を俺達は耳にしていない。


 最後に聞いたのは、帝国手前の町のことだ。



「な、なんやて!? じゃあ、ワイのここまでの旅路は……」

「全部無駄ね」

「……」



 ツィルフが地面に崩れ落ちた。



「な、ナワエに散々罵倒されながらも強行したワイの苦労は……」

「全部無駄ね」

「……おぉう」



 その背中にはなんだか悲壮感に満ちていた。



「というか、その肝心のナワエはどうしたのよ。あんた達、いっつも一緒にいなかった?」

「いや、置いてかれてもうた。ここでワイが食べもん食べたい食べたいって繰り返してたらなんやさっさと歩いていってもうたんや。これで追いかけるのもなんだか負けた気分になるし、だからここで寝てた」



 寝てたって……倒れてたと思ったら、単に寝てただけかよ。


 しかも食べ物が食べたいって……子供の駄々か。



「……もういいわ。じゃあ、私達はもう行くわ」

「んじゃ、ワイも――」

「ついてきたらナワエに過去私の知る限りのあんたの変態行為バラすわよ」

「いってらっしゃいませぇっ!」



 ……久々に、思った。


 神って、なんなんだろう。



 ウィヌス達の乗ってた馬車を見送って、肩を落とす。



「うぅ……どうすりゃいいんや……」



 古代の悪魔……五百年前はだーれも正体見れなかったから、ワイが最初の目撃者になるって決めてたのに……。


 骨折り損のくたびれ儲けや。


 仕方ない。


 ナワエ追って、この大陸の観光でもしよか。


 んで、ナワエちゃーん。


 どこやー。


やっちまった。

こんなキャラ……登場予定なかったのに衝動的にやっちまった!

久しぶりだぜ、衝動でキャラ誕生。


まあ物語にきちんと関わりますので。


ロリやない。ロリもなんやでー。

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