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神喰らい  作者: 新殿 翔
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背負った少年

もうこの主人公書きにくいな!

自分で作ったんだけどさ!


あと、睡眠不足の状態で書いたので文章ぐっちゃかもしれません。

問題点などあったら知らせていただけると助かります。

 気付くと、そこは広い草原だった。


 そばには大きな湖。


 ……ここ、は?


 少し考えて……俺が思い出したのは自分の部屋だった。


 そうだ、俺はあのとき凄く熱くて……それで、


 ゾクリ、と震えた。


 巨大な牙な脳裏をかすめる。


 そうだ。


 そうだ。


 ……そうだ!


 あの牙が!


 俺のこの力が!


 俺の中から抜け出して喰らったのだ!


 世界を!



「……あ」



 気付けば、俺の身体には不思議な力が溢れていた。


 恐る恐る、近くに転がっている小石を拾う。


 そして……思いきり握り締めた。


 掌を開く。


 細かい砂が風に舞った。


 俺があの石を砕いたのだ。こんな砂のようになるまで、粉々に。


 理解した。


 これが、俺の力なのだと。


 世界を喰らった、俺の力。


 俺は、世界の力を振るったのだ。



「――っ!」



 口を押さえる。


 けれど、それでも耐えきれなくて、俺は勢いよく胃液を草の上に巻き散らかした。


 吐く、吐く、吐きだす。


 この力も吐きだせれば、と。


 そんな淡い希望とともに、胃液が枯れるまで吐きだした。


 けれど……力は消えない。巨大な力は、いまだに俺の内で蠢いていた。


 世界の力が。


 六十億人もの人間の力が!


 ありとあらゆる生物の力が!


 俺の内側で、俺が奪った命の力が大きなうねりとなって渦巻く。


 殺したものが、俺の内側にある。


 逃れようのない罪悪感。


 そして、自分が人間とは到底呼べない存在になり果てたと言う絶望感。


 嫌だ!


 なんで、こんなことに!?


 俺はただ、ただ楽になりたかっただけなのに!


 なのになんで世界を……。


 だいたい、俺は世界なんて殺してない。


 何が起きたっていうんだ。





 ――この世界なんて……いらない。





 不意に、その言葉が蘇った。


 俺の思ったことだ。


 ……まさか、そういうことなのか?


 なにが起きたのかは、いまだによく分からない。


 だが、なぜそれが起きたのか。


 それは……俺が、世界をいらないと考えたから?


 馬鹿な。


 だからって、喰ったのか?


 いらないから食ったのか?


 それだけの為に俺は六十億人もの人間を殺したと?


 世界一つを喰らったと?


 ……なんて、こと。


 こんなことになるなんて思いもしなかった。


 言い訳をしても、取り返しはつかない。


 既に俺は世界を喰ってしまったのだから。





 …………待て。





 なら、ここはどこだ?


 改めて周囲を見回す。


 どこまでも続く草原。


 澄んだ水に満ちた湖。


 ここは……違う。


 直感した。


 それとも、俺の中で渦巻く世界が教えてくれるのだろうか。


 ここは、俺のいた世界とは違う世界だ。


 なら、俺は異世界に来てしまったのか?


 世界を喰ったから、次の世界に?


 ……なんてことだ。


 そのまま消えることが出来れば、まだ救われたのに。


 新しい世界。


 俺は、この世界も喰ってしまうのだろうか?


 嫌だ。そんなのは。


 この世界にどんな生物がどれほどいるのかは知らない。けれど、もう世界なんて大きいもの、大きすぎるものを喰らいたくなんてなかった。


 重すぎる。


 実際に世界を喰ってしまったからこそ、良く分かる。


 世界をもう一度喰ったら、俺はもう正気でいられる自信がない。


 そもそも、今この瞬間も俺は実は正気を失っているのではないだろうか。そんな不安すらある。



「……ぁ」



 怖くなった。


 自分は、狂っているのか?


 それとも狂っていないのか?


 それすら自分一人では判断できない。


 無性に、叫びたくなった、



「あ、ぁああああああああああああああああああああああああ!」



 だから、叫ぶ。


 草原にうずくまって、咽喉から血が出るほどに大声で叫ぶ。


 すると――、




「――――」




 声が聞こえた。


 鈴を転がしたような、凛とした声。


 けれど、それが何を意味する言葉なのかは分からない。英語のようにも聞こえるし、ドイツやフランスの言葉にも聞こえなくはない。


 だが、多分そのどれでもない。


 何故なら、ここは異世界だから。


 もともと言葉なんて通じるわけがないのだ。


 顔をあげる。


 目の前に広がるのは湖。


 声の主は、そこにいた。


 湖の水の上に、浮かんでいた。


 それは人の形をしたなにか。


 人の形をしていても、女性特有のラインを描く身体は水で出来ているかのように透き通り、輪郭以外のものはなにも存在しない。


 その背からは、巨大な爪にもみえる翼が大きく広がっていた。


 綺麗だ、と。


 率直にそう思った。


 今の今まで身体を蝕んでいた苦悩が一瞬で晴れる。



「―――――――――――――――――――」

「……?」



 何を言っているのか分からない。



「――――」

「……分からない。言葉が通じないんだ」



 俺の返事で、向こうも言葉が理解できないと察したらしい。


 しばらく沈黙したあと、俺に向けて掌を出した。そこから、小さな光が生まれる。



「人間風情が私の神域で惨めな声をあげるな、と言ったのだ」



 ――え、言葉が通じた?



「なんで……」

「貴様に言葉の加護をくれてやったのだ。感謝するがいい」



 少女の声だが、そこには威厳が満ち溢れていた。



「……あんたは?」

「神に名を尋ねるか、愚かな人間よ。その意味が分かっているのだろうな?」



 くつ、と。


 その人形が笑った。



「私はウィヌスヴェルフェム=アルトエヴラーデ=オブリシェード。水の神の一柱である」

「神……? あんたは、神様なのか?」

「ああ。そして人間……その矮小な身にありながら神の名を知ろうという身の程もわきまえぬ行為。万死に値する」



 神の翼が、大きく広がる。


 その爪翼は、俺に向けられていた。


 俺を……どうして? 俺はなにか悪い事をしたのか?


 ――まあ、いいや。



「神なら……俺を殺せるか?」

「不遜なことを言うな。安心しろ、今すぐ細切れにしてやろう」



 爪翼が、振るわれた。


 普通の人間なら、それが振るわれたことにすら気付かなかったろう。


 だが俺の動体視力は既に人外の領域。神の一撃すら、コマ送りのように見える。


 そして、だから思った。


 ああ、これは駄目だ。


 この神を名乗る存在もまた、世界の一部なのだ……。


 俺は右腕を掲げた。


 それだけ。



「――なん、だと?」



 それだけで、神の爪翼は止まった。その爪は俺の腕に触れ、それ以上は決して進まない。俺の肌に傷をつけることすら敵わない。


 当然だ。


 世界の一部が、世界そのものを傷つけられるものか。


 俺と神の力関係は、既に決定していた。俺が上で、神が下。


 神と名乗る存在ですら、俺を傷つけられない……。


 は……希望もないな。



「貴様、魔術師か……いや、だが魔力の動きは感じられなかった。しかし……貴様、何者だ?」

「……さあ?」



 そんなの、自分だって分からない。


 俺の返事からなにかを察したのか。


 神はかすかに首を傾げると、俺に歩み寄って来た。



「――名は?」

「……月終(つきしま)月終瀬介(らいすけ)

「ツキシマ……ライスケ……どこの国の名だ?」

「日本」

「ニホン? 聞いたことがない」



 そりゃ、そうだろう。



「消えた世界の国の名だ」

「――……ライスケ、でいいか?」



 いきなり呼び捨てだった。


 でも、呼び方なんてどうでもいいから、頷いておいた。



「ライスケ、少し話せ。お前、何者だ?」



 ――途端。


 涙が零れた。


 話せ。


 それだけのこと。命令。


 けれど……何故だろう。


 酷く救われた気分になる。


 彼女は、俺の話を聞いてくれるのだろうか。信じてくれるのだろうか?


 いや、信じてくれなくていい。


 ただ俺の話を聞いてほしい。


 俺は……腹の底に溜まった澱を吐きだした。



「……世界を、喰らった……か」



 俺の話を聞き終えた神は、そう呟いて空を見上げた。



「なるほど。身の程をわきまえず、不遜だったのは私か。一つの世界に挑むとは、我ながらなんと愚かなことをしたものだ」



 言葉の割に、その声はどこか弾んでいるように聞こえた。



「ライスケ、貴様、死なないのか? 生きているのは、さぞ辛いだろう」

「死ねない……」



 自殺、という意味でならそれは不可能ではないだろう。


 俺の力なら、俺も殺せるはずだ。


 けれど……多分自殺しようとしたその瞬間、俺はこの世界を喰らう。そんな確信があった。


 もうこれ以上世界なんて喰らいたくない。



「ふむ、そうか」



 すると神は小さく唸った。



「ライスケ……死ねぬのならば、それはこの世界で生きていくということ。これからどうするつもりだ?」

「……さあ。どうするんだろう」



 言われて、考えてみる。


 全く思いつかなかった。


 そりゃ、この世界のことを何も知らないんだから当然か。


 神の言葉からしてこの世界にも人間はいるようだが……どんな人種がいて、人以外にどんな生き物がいるのか。そんなことすら俺には分からない。



「ならばライスケ。私がしばらく貴様と一緒にいてやろうか」

「……は?」

「私が一緒だと便利だぞ。この世界のことなら大抵は知っているし、神の名を使えば大抵の人間はかしずく。他の神の神域に入っても敵視されることはない」



 いきなり何を言い出すんだ、この神様は。



「俺は……誰かと一緒にいるつもりはない」

「その誰かを喰らうのが怖いから、か?」

「……そうだ」

「ならば安心しろ」



 言うと、神は唐突に翼を広げて、それを――自分の腹に突き刺した。



「な――!」



 なにを……っ!



「まあ落ち着け」



 驚くくらいに冷静な声で告げた。


 爪翼が腹から引き抜かれる。


 ぐちゅり、という生々しい音。


 そして、風穴が覗いた。


 風穴はその大きさを徐々に細めて――え?


 傷が消えていく……?



「この通り」



 両手を広げて神が健在をアピールする。


 腹には、傷一つ残ってはいなかった。



「神というのは世界の一部でな。この世界が消えぬ限り真っ当な手段で殺すことは叶わない。つまり、ライスケが世界を喰らいでもしないかぎり、私は不死というわけさ。したがって、私が貴様に喰われることもない」

「……」



 立ち上がって、神に歩み寄る。



「ん、どうかし――」



 で、神を殴った。


 流石は世界の重みをもった拳といったところだろうか。


 俺の一撃で、神の身体は上半分全てが綺麗に消し飛んだ。


 残った下半身から、徐々に身体が再生していく。


 ……ちょっとグロい。


 数秒して、神はあっというまに元通りになった。



「……いきなり何をする」

「本当に不死なのか試したくて……」

「貴様意外と思いきりがいいな」



 顔がないせいで見えないが、おそらく神は今苦笑しているのだろう。



「まあいい。それで、どうだ?」

「どうって?」

「……だから、私が一緒に行ってやろうか、という話だ」



 そういやそんな話をしてたんだっけ。



「でも、いいのか? なんか知らないけど、あんたってこの湖にいなくちゃいけないんじゃないのか?」



 なんか聖域とか言ってたけど……。



「ああ、構わん。神域というのは神が勝手にそこに居座っただけだからな。いつ去ろうともそれは神の勝手だろう」



 意外と適当だな、神。


 まあ、だったら……、



「頼んでも、いいか?」



 やっぱり無知からのスタートには不安がある。


 そして神は不死だという。


 ならば、出来れば一緒に来てほしい。


 俺を殺してはくれないけれど、俺の側にいてくれる……それは、なんてありがたい事だろう。



「よし。ならばこの神域は捨てるとしよう」



 ぱちん、と神が指を鳴らすと、湖に小さな波紋が走った。



「今のは?」

「まあ、言うなればもうここは私の神域ではない、という合図のようなものだ。ここは立地がいいから、すぐにでも他の神がまた神域にするだろうな」

「ふうん……」



 神様も立地って気にするものなんだな。



「さて……この格好もなんとかしなくてはな」



 もう一度、神が指を鳴らす。


 そして、その変化が起こる。


 神の身体に、色が混じった。それは次第に神を彩り……そうやって肌が、眼が、鼻が、口が作られていく。


 肌は日の光を知らないかのように白く、瞳は人には有り得ない金色。髪は青みがかった銀で、足元近くまで伸びている。


 最後に、その四肢が黒ずくめの布を重ね合わせたかのような変な衣装に包まれる。


 ――……陳腐な言葉だが……美少女、だった。



「……」

「ん、どうかした?」



 俺が言葉を失っていると、神が不思議そうに声をかけてきた。


 ……しかも口調が女の子っぽい。いや、女の子なんだけど。



「どうかした、っていうか……あんた、その姿……それに喋り方」

「これ? これから先、村や町を訪れる機会も増えるでしょ。なら、人の姿や口調のほうが色々と都合がいいもの」

「そうなのか?」

「当たり前よ。神がそこらをうろちょろしていては、余計な混乱をもたらすもの……それより、貴方。さっきから私をあんたあんたと……名前で呼びなさいよ。失礼よ」



 あれ、さっき名前を訊いただけで俺に襲いかかって来たの誰だっけ?



「過去を掘り起こすなくていいわよ。事情が変わったの。私が許すと言っているのだからいいの」

「……でも、あんたの名前長いし」

「ならば短くすればいいでしょ。そうね……ウィヌス、とでも呼んで」

「じゃあ、そうする」



 ……沈黙。


 なにかウィヌスがこちらに視線を向けている。


 ――あ。



「ウィヌス……?」



 名前を呼ぶ、



「ええ」



 ……どうやら名前を呼んでほしかったらしい。


 なんか本当にさっきとは態度が百八十度違うのな。



「じゃあ行きましょうか」



 行って、ウィヌスが身を翻す。

「行くって、どこに?」

「この近くにライーンというそれなりに大きな村があるの。そこでまず先立つものを手に入れましょう」



 先立つもの……金か。



「どうやって?」

「決まってるでしょ?」



 にぃ、と。


 ウィヌスが笑う。



「ギルドで適当に魔物退治の仕事でも受けるのよ。神(私)と世界(ライスケ)がいるのだから、例えドラゴンが出てこようとも敵ではないわ」



私的にウィヌスの格好を想像(妄想)すると作者は身悶えます。

もう完璧に作者の趣味ですね、分かります。


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