世界を喰らう
最低でも週一で更新していきたいですね。
ストレイ・ワーカーって作者の小説も、お目汚しですが良かったら見てやってください。
俺が自分のその力に気付いたのは、確か小学校三年か四年の夏だった。
母の実家である田舎に帰省していた俺は、暇を持て余して実家の裏にあった小さな山の中に入って、蜥蜴を追いかけ回していた。
そして……そこで俺は樹の根につまずいて、蜥蜴を踏みつぶしてしまった。
子供心の純真さ、と言うのか。
その時俺は蜥蜴を踏みつぶしたことがとんでもない大罪に思えて、大泣きしてしまった。
そして、蜥蜴の死体をそれ以上見るのが怖くて、逃げだした。
その時だ。
俺は、木々の生い茂る、足場の不安定な山をとんでもない速度で駆け抜けた。
そんな芸当とうてい小学生には――それどころか、大の大人にだって難しいだろう。
だが、俺は事実としてそれをやってのけた。
来た時は数十分かけた道を、帰りはたかが数分で済ませてしまった。
自分のその身体能力が怖かった。
幼いなりに、その時自分がどこかおかしいということに俺は気付いた。
それから、徐々に俺はこの力がどんなものか、把握していった。
虫カゴに入れたバッタに餌をやりわすれて殺してしまったら……前よりずっと高くジャンプできるようになった。
父につれられて釣りに行って、とった魚を捌く手伝いをしたら……水泳が誰より上手くなった。
そんな風に……俺の能力は強くなり続けた。いつしか、人前では自分の能力をセーブするのにも慣れて言った。
中学生になることには、自分の力がどんなものかを理解していた。
――俺が命を奪った生物の能力を奪う能力。
あのトカゲを潰してしまった時、俺はあのトカゲのすばしっこさを手に入れた。バッタからは跳躍力を、魚からは泳ぎを……。
それから、俺は命に触れることを忌避するようになった。
何かの能力を奪う度に、自分が人間から遠のいて行くような怖気があったからだ。
なにより、そうするうちに自分が恐れられることが、怖かった。
事実、子供のことから俺は、この優れすぎた能力故にどこか周りから気味悪がられていた。
そうしているうちに、俺は孤立していった。当然だ。俺から進んで命を持つ存在と距離をとったのだから。もちろん、そこには人間だって含まれる。
そうやって時間は流れて、ひどくつまらない月日が過ぎて……。
高校の入学式の前夜。
俺は、ベッドの中で暗い天井を見上げながらぼんやりと考えていた。
もう疲れた……。
俺に、この世界は辛すぎる。
孤独なんて望んだわけじゃない。
本当は友達をつくって、くだらない話をして笑ったり、そんな普通の人生を送ってみたい。
でも……無理だ。
もし友人を作って、何かの間違いで俺がその友人を殺めてしまったら?
例えば、誤って道路に突き飛ばしてしまって、そのまま車に轢かれて死んだりしたら?
俺は……その友人の能力を奪うのだろう。
それはなんて、恐ろしい事だろう。
自分が殺した相手の力が自分の中にある。
それは、どんな毒を飲み乾すより苦しいに違いない。
それを考えると、友達なんて、そんなのは……無理だ。
だったら、俺はこれからも孤独に生きていくのだろうか……?
嫌だ。
そんなのは、嫌だ。
こんな力、消えてしまえばいいのに。
もしそれが不可能だというのなら……俺はもう生きたくなんてない。
こんな世界にいたくない。
この世界なんて……いらない。
死のうか。
ふと、思い至る。
死んでしまえば、楽になれるのだろうか?
試すのも、悪くないか……。
自嘲する。
なんでこんな簡単なことに今まで気がつかなかったんだろう。
台所に向かおうと、ベッドから抜け出す。包丁で自分の咽喉を切ろう。そうすれば、きっと死ねるだろう。
――と、その時。
ぐらりと、視界が歪んだ。
立っていられなくなって、ベッドに座り込む。
身体が熱くなった。
まるで溶岩が身体の内側で暴れるかのようだった。
なんだ、これ……。
息が荒くなる。
心臓が破裂しそうなくらいに鼓動を刻む。
思考が鈍る。
駄目だ。これ以上は、なにかが駄目だ。
いけない、この先に行ってはいけない。
俺の中の本能が叫ぶ。
抑えつけろ、と。
この熱を抑えつけろ。暴れさせるな。
……喰らわせるな、と。
けどれ、俺にはできなかった。
身体が爆発する。
俺の内側から、その力が溢れだす。
ぞろりと並んだ巨大な牙。
巨大で、巨大で……巨大な牙。
その牙が、開かれる。
向こう側は、真っ暗な闇。
そして、ゆっくりと。
全てが喰われた。
ううむ、駄作にならなきゃいいけど……保障はできませんな!
頑張るけどさっ!
……あ、それと感想とか、あとは修正点とかあったら教えてくださると助かります。