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#7

「え!ディルク殿下をお選びになったんですか?」


ニコラは一瞬驚きはしたもののすぐに納得した。


エドガーは人当たりは良いし嫌いな人間は少ない。


絵に描いたような模範的人格。それを意識して人前では崩さないように努力する姿は尊敬する。


私と同じように誰にでも平等な振る舞いは国民からの支持も厚い。


王族なんて雲の上の存在。直接お目にかかれる機会なんねあるわけもなく、噂でしか人物像を描けない。そこを利用している。


噂というのは尾ひれをつけて広がっていく。悪い噂は特に。


傲慢な王子様より、優しい王子様。


将来的にどちらがより良い立場になれるか考えたら、後者しかない。



「お嬢様にシャロン様からお手紙が届いてましたよ」


シャロン・ボニート伯爵令嬢。


情報に特化した裏組織“暗部”を率いるボニート家の一人娘。


私の友人だった。前回はエドガーが王位に着任すると同時に一家全員が強盗に襲われ殺された。


指示したのはエドガーで間違いない。自分達の計画を暴かれることを恐れ口を封じた。


愛のために私を殺して、全ての責任を押し付けることで家は没落を免れたんだ。


私と私を慕ってくれる人だけが不幸になる未来。その借りは何百倍にして返す。


「シャロンに会いに行くわ」

「今からですか」

「ええ。どうしてもすぐ私に会いたいみたいだから」


丁寧な文字と文から伝わってくる緊張と焦り。


ボニート家で何かあったのかしら。いくら何でも早すぎる。


今日は婚約者を選ぶだけ。それだけの日。


エドガーが手を回したにしてもシャロンから手紙を受け取ったことを知るわけがない。


私に関心のない彼らが、いちいち私に届いた手紙をチェックするわけもない。


「アリー?出掛けるの?」


私に考え直すよう言いに来たのね。暇なのかしら。


そんなことより愛しのエドガーを慰めてあげれいいのに。


さぞ屈辱だったでしょうね。見下している私に選ばれないのは。


「私も一緒に行ってもいいかな」

「どうして?私はシャロンに会いに行くのよ」

「だから私も……」

「貴女はシャロンとそんなに仲良くないわよね。それなのにどうして?」

「そ、それは」

「あのねヘレン。意地悪を言っているわけではないのよ。私は友人とお喋りしに行くから、その間ヘレンに気を配ってあげられないでしょ?」


本当はシャロンが絶対に一人で来て欲しいと書いてあるから。


やらかした後にニコラを家に残して八つ当たりされても嫌だから連れて行くことにした。


「シャロン様は心が広い方なのでヘレン様を連れて行っても問題ないのでは?」

「ヘレンはローズ家の人間ではないから家紋の入った馬車を使わせたくないのよ」


勘違いしてはいけない。所詮ヘレンは居候にすぎない。


それなのに家のお金を使って宝石やドレスを買い漁る。人気のお芝居のチケットや有名なスイーツまで。


お父様もお兄様もどこかそれを当たり前に思う。


いくらお金に余裕があるといっても、ヘレンを贅沢させるためのお金ではない。


こんなことを繰り返していたら、いずれ破綻する。


子供の頃はお金でヘレンの寂しさが埋められるならと私も賛成していた。


でも、今は違う。


いい加減ヘレンも立ち直るべきなのに、いつまでも厚意に甘え続ける。

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