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発覚!親友に好きな人が?

 今日は特別授業がある日。アルファン小公爵もSクラスだったはず。


 休学していたにも関わらず、上位成績を維持出来るなんて幼少期からの努力は伊達じゃない。


 クラウス様はどうなるんだろ。実力的には申し分ないし、ディーと同じSクラスに割り振られるか。


 独りぼっちのヘレンはどうやって今日の授業を乗り切るのかしら。


 軽蔑され、敵視され、居場所を失いつつあるヘレンに声をかけるのは、ヘレンの愛らしさにやられた数人の男子生徒だけ。


 しかも全員将来の相手は決まっている。


 彼らの親は婚約者や恋人をほったらかしで他の女性に現を抜かしてることなんて知る由もないだろうから、別れて慰謝料請求されたら頭を抱えることになるのは間違いない。


 そうなったらヘレンにも請求される。支払い能力のないヘレンの代わりにお父様が出すことになりそうね。


 彼女達が受け取るかは疑問。破談したのはヘレンのせいで、それならヘレンが払うのが筋。


 借金をしてでも全員に返さなくてはならない。

 婚約破棄の理由にもよるけど、今回の場合なら銀貨五十枚、金貨二十枚は絞り取れる。やり手ならそれ以上も。


 いくら親身になっているとはいえローズ家から貰う理由はない。ヘレンがローズ家の養女となるなら話は別だけど。


 こんなに不満を買ったヘレンを迎え入れたらどん底に落ちる。


 あの卑怯者達はヘレンを助けるか、それとも……自分達だけが助かるのか。


「ボ、ボニート令嬢。カストお兄様がまた遊びに来て欲しいと言っていましたよ。個人的に色々と話がしたいからと」


 まるで自分が無視されているかのように人目を引くように後ろから声をかけてきた。


 聞こえなかったすりをしていいのに、優しいシャロンはヘレンの相手をしてあげようと振り向く。


 今朝のこともあるし、私なら関わりたくないから無視する。


「小侯爵様が伯爵令嬢である私に?まぁ、何かしら。なぁんて、言えばいいかしら?ジーナ子爵令嬢」

「え……?」

「小侯爵様の噂を掻き消すために私を利用されるのはやめてくれますか。不愉快です」

「そんな……私はボニート令嬢のために。カストお兄様にキスをされて喜んでいたじゃないですか」


 ──いつそんなことを?


 心の声はしっかり聞こえていて「ないない」と首を横に振った。


 そうよね。もし浮いた話があればシャロンなら絶対話してくれている。


 もし荷物を届けに来てくれた日のことを言っているのだとしたら言葉を省きすぎている上、シャロンとカストの恋仲説の新しい噂で上書きするつもりね。


 私を攻撃されるよりも、私の大切な人を利用されるほうがはらわた煮えくり返る。


 いいわ。そっちがその気なら私も我慢はしない。


 ねぇヘレン。貴女は私を面倒見が良くて優しいと“思っている”んでしょう?


 成績が芳しくない生徒が上のクラスに入ることは無理でも、その逆は可能。


 だから助け舟を出してあげるのはいいけど、果たして舟に乗ってくれるかしら。


「エドガー殿下。ヘレンと同じCクラスで授業を受けて下さいますか?ヘレンはエドガー殿下をお慕いしているようなのできっと心強いと思います」

「な、何を……言っているんだ?アリー?」

「殿下。愛称で呼ぶのはお止め下さい。それを許しているのは婚約者と親友だけです」

「僕達の仲だろう?」

「前にも申し上げたように、殿下とは友達です。それ以上になることは絶対にありません」

「僕は君を……」


 傷ついた表情はまるで意見を覆さない私が悪いとでも言っているような。


 貴方が好きなのは王様にしてくれる私のくせに。


 アルファン公爵家は息子。ロベリア公爵家は力が弱い。そうなれば侯爵家に白羽の矢が立つのは当然。


 だからって私が婚約者になったら王太子になれるっていうのはおかしい。前世でエドガーに聞いたけど答えは返ってこなかった。


 いつも上辺だけの愛の言葉に誤魔化されていた。


「ヘレンは殿下を愛称で呼ぶほど本気で想っています」

「いい加減にしてよアリー!!どうしてそんな意地悪ばかり言うの!!?」

「それは私のセリフよ。愛称で呼ばないでって言ったでしょ」

「そんなに私のことが嫌いならそう言ってよ!!」


 悲劇のヒロインぶって同情を買おうとしている。


 廊下の真ん中で言い争っていれば、嫌でも目立つ。


 人が集まるタイミングを見計らって器用に涙を流す。


 そんな簡単に貴女のペースにはしてあげないわ。


「嫌い?そんなわけないでしょ」


 殺したいほど憎んでいるのに嫌いなんて言葉で済ませられるわけがない。


 二人の関係をバラして社会的抹殺をしたら今よりもっと悲劇の顔を拝める。


「ジーナ令嬢は責任、という言葉をご存知ですか」

「もちろんです。それが何か?」

「では責任を取って事態の収束をお願いします。私は小侯爵様なんて好きではありません。それなのに私と小侯爵様があたかも……!!」

「ですが以前は肩が震えるほど照れていたじゃないですか」

「怒りを抑えていたんですよ。手の甲に!!キスをされて喜ぶのは意中の相手だった場合のみです。しかも誤った情報を流して私が小侯爵様に気があると、私の想い人に思われたらどうしてくれるんですか」


 ──…………え?シャロン好きな人いたの?


 衝撃の事実に怒りが吹き飛んだ。


 それならそうと言ってくれればいいのに。全力で応援したい。


 シャロンはいつも私のこと気にかけてくれてるから。


 売れ残り令嬢なんて不名誉な二つ名が流れているけれど、そもそもあれはシャロン本人が流させたもの。面倒な政略結婚を避けるために。

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