#2
「お嬢様!?どうされました!?」
「ニコラ?ニコラ……!!ごめんなさい私のせいで……!!」
牢屋にいるときに看守が話していた。
私の無実を訴え続けたニコラは殺された。再調査を何度も依頼したけど聞き入れてもらえず、私との面会も拒絶された。
私は……アリアナ・ローズは未来永劫語り継がれる悪女。侍女如きが会えるわけがないだろう、と嘲笑っていた。
ニコラは複数の男に乱暴と暴行を受けたのちに、裸で広場に吊るされ死しても尚、辱めを受けた。
ニコラの体はとても魅力があるのか、日に何度か看守が入れ替わることもあった。
私の数少ない理解者。ニコラさえも無慈悲に殺させてしまった。
まだ幼い妹と弟がいたのに。仲の良い姉も。死別させてしまった。
なんと詫びればいいのか。
「落ち着いて下さいお嬢様!怖い夢を見たんですか?」
夢だったらどれほどよかったか。残念なことに全て現実に起きたこと。
愚かな私のせいで招いてしまった悲劇。
私は地獄に落ちても仕方ないけど、優しいニコラが私と同じ場所にいるのは納得いかない。
なぜなの。ニコラの魂は在るべき所に還るべきはずなのに。
この世に神が存在しないのだと、思い知らされてしまった。
「緊張してるのはわかりますけど早く準備しましょう。旦那様がお呼びです」
「お父様も死んだの?」
血の繋がった親なのに悲しくないどころか笑ってしまう。
国王になった途端エドガーに見切りをつけられ暗殺でもされたのね。あのお父様が。
野心を抑えきれなかったか、エドガーにとって必要なのは愛する人だけだったのか。
どちらにしてもいい気味だ。
「本当に大丈夫ですか?」
心配そうに顔を覗き込んだ。
ニコラはいつもそうだ。同じ歳なのに私を妹のように心配し、本当の家族以上に私を理解してくれる。
死後の世界でも体は透けたりしないんだ。感触も温もりもまるで本物の体みたい。
「ニコラ。もしかしてこれって現実?」
「そうですね。お嬢様は怖い夢から目が覚めて起きていらっしゃるので。あんな悲鳴を上げるなんてどんな夢だったんですか」
「それは……」
口にするのも怖い。目の前のニコラを抱きしめた。
温もりがあって触れても壊れない。虚像なんかではなく紛れもなく本物。
そうか。方法はわからないけど過去に戻ってきたのか。
私の無念を晴らすために神が……。いや、私の許したくない強い意志が再びこの世に生を授けた。
「ところでさっき。お父様がどうとか言ってなかった?」
「そうです!のんびりしてる場合じゃないです!早く行かないと!!今日はディルク様とエドガー様がお見えになるんですから」
運命の分岐点。
過去、私はお父様に言われるがまま政略結婚のためにエドガーと婚約した。
その前にお父様の執務室に行き念を押される。
絶対にエドガーを選べと。