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愛してください!〜前世で元親友と元婚約者に殺されましたが、今世の親友と婚約者と共に復讐します〜  作者: あいみ
第三章

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力のない王子はもういない【ディルク】

 アリーから王妃が荒れるかもと事前に手紙を受け取っていたので、心の準備はできていた。

 わざわざ全員が揃う夕食時だったとは予想外ではある。


 お茶会が終わってすぐはバツが悪かったのだろう。会場でエドガーも騒ぎを起こしていたし。

 陛下の機嫌を損ねるというよりかは、失望されることを恐れてわざと時間が過ぎた今にしたのかも。


 どうせなら食事が終わって僕が退室した後にしてくれれば良かったのに。

 巻き込まれているわけではないけど、わざわざ食事中に聞くほどの内容でもない。


 「これは王家に対する侮辱です!!陛下!すぐに罰を与えて下さい!!」


 言葉のはしはしに垣間見える本音。


 「私を愛しているなら」

 「私を見下す令嬢に価値はない」


 必死だった。ただただ。哀れなくらいに。


 陛下(おや)の愛情を受け入れると決めてから、心が随分と穏やかになった。

 自分でも怖いくらいに冷静。線のこっち側にいることに変わりはなく、それでも。よく《《見える》》。


 陛下は王妃に“愛”の欠片もなく、政略結婚の妻として“情”だけを抱いていた。

 王妃もそれをわかっているからこそ、どうにか繋ぎ止めたいんだ。せめて心だけは。


 無駄遣いをして自分を着飾るのも、美しく在れば他の女性に目移りしないと自信を持っていた。

 国民の税金をくだらないことに使っている時点で、心は離れていくと思うんだけどな。


 「茶会への参加は必須ではない」


 一瞬で切り捨ててしまう一言。味方になってくれると信じていた王妃は大袈裟に悲しんでみせた。


 「たかが小娘達が恐れ多くもリンデロンの名を侮辱したのですよ!!?」

 「ふむ……。ディルク。お前はどう思う?」

 「令嬢達は王族を軽んじているわけではないと思います。先に約束をしたお茶会に出席しただけでしょう」


 最低限のマナーとして欠席することは伝えても、理由までもを告げる必要はない。いくら王族でも個人のプライバシーに踏み込む権限を持ち合わせていないからだ。


 「先に約束したですって!?よくもまぁ、そんな嘘を平然と言えるものね。これだから卑しい血筋は」


 僕の体に流れる血を否定して母上を見下したい王妃を怒鳴ろうとする陛下に視線を送る。


 本音を言い合ったからか、僕の考えが伝わり言葉を飲み込んだ。


 「主催はクラウスの婚約者でもあるマリアンヌ様。今回、お茶会に呼ばれた令嬢は十六歳を対象にしていると聞きました」

 「ハッ!!この嘘つきが!!ヘレンはそんな招待状を受け取ってはいない!!」

 「当然じゃないのか」

 「何?」

 「ジーナ令嬢はマリアンヌ様に無礼を働いたにも関わらず謝罪をしなかったんだ。そんな人に招待状を出すわけがない」

 「なぜお前がそれを……」


 カルが勉強会での出来事を報告してくれたから。とは、思わないのか。


 僕の護衛騎士なんだよな、れっきとした。

 その手の事件があれば報告する義務がある。マリアンヌ様と面識があるないに関わらず。


 いちいち説明してあげるのも手間で、その疑問には答えない。


 「アリアナはどうなんだ!!ボニート令嬢は!!あの二人は父上のパーティーに参加していたぞ!!!!」

 「僕がアリーにお願いしたからだよ。一人では心細いから一緒に参加して欲しいと。本当は母君でもあるパトリシア様のことを共に語りたかったはずなのに」


 今度は「嘘つき」と叫ばない。マリアンヌ様がパトリシア様に憧れているのは事実で、勉強会でも休憩時間に語り合っていたと自身が証明している。


 「ボニート令嬢は親友であるアリーを選んだんじゃないかな?あの二人は本当に仲が良いからね」


 嫉妬するほどに。


 僕なんかでは立ち入れない二人だけの世界があって、羨ましいはずなのにずっと見ていたいとさえ思う。


 反論したいのに材料がない。僕が言ったことは全て、エドガーも知っていること。


 「そうだ!平民混じり!!お前が父上のパーティーに参加したことがおかしい!!」


 勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、糾弾するように指を差す。

 こうなる段取りでもしていたのか、メイドが持っていた新聞をエドガーに手渡す。

 朝刊の一面を華々しく飾るのは僕への賞賛。


 「お前が公爵を説得しただと?笑わせるな!!この俺でさえ未だに会えない人間とお前なんかがどうやって会うというんだ!!!??」

 「書いてある通り、王宮に来ていたときだけど」


 嘘は必要だ。アリーを守り、アリーの復讐を成し遂げるために。


 エドガーは仮面を付けるのが得意みたいだけど、僕だって本心を押し殺し偽るのは得意。きっとエドガーよりも。


 この十七年間。無害で取るに足らない存在だと、認識を植え付けるなめに感情を殺し続けた。


 感情の波を一定にして呼吸を穏やかに。発言の際には妙な間が空いたりしないように気を付ける。


 「そんなことあるのか!!」

 「エドガー。君はさっきから僕を否定するが、なぜそんなにも断言するんだ?まさか四六時中、僕を見張っているの?」


 そんなことはない。


 人の気配は僕にも察知できるし、クラウスが部屋の周りに人体を察知する魔法を発動している。


 同じ人間がずっとその場に留まっていたら、とっくに僕の耳に入っていてもおかしくはない。

 そもそも、蔑み見下す僕や母上が済むあの場所に高貴なお方に仕えている使用人が足を踏み入れはしないだろう。


 「僕は君達の言う通り卑しい血筋だからこそ、苦しむ平民を放っておきたくなくて頭を下げた。公爵には僕の望みを叶えるだけの力と金がある」

 「そんな嘘が通じると思うな!!」

 「エドガー!!いい加減にしろ!!ディルクの功績を妬むだけでなく、嘘つき呼ばわりするとな何事だ!!」

 「し、しかし……」

 「お前はディルクだけでなく公爵も嘘つきだと言っている自覚はあるのか?」

 「いや……嘘をついているのは兄上だけで……」


 小さくなる声。新聞を握り潰すことで僕への怒りを表す。


 怖くはなかった。だってエドガーのほうが僕に恐怖し怯えている。

 人の上に立つことだけを約束れてきた人生を、よりにもよって僕如きに奪われたのだ。


 これからは、アカデミーが終わってからも王太子としての授業が待つ。

 忙しくなる。アリーとの時間も減ってしまう。会える時間が少ないのは寂しい。


 本音を口にしてしまえば困らせることは目に見えている。


 この世界を去ってしまう君の隣に、それでもいたいと願うことは傲慢なのだろうか?


 全てを懸けて愛したい女性を幸せにする権利さえ与えられないのは、前の人生で君の命をみすみす殺してしまった罰だというならば、僕は甘んじて受け入れるしかないんだ。


 罪を冒した者は等しく罰を受けなくてはならない。

 身に覚えがないからと目を逸らし逃げるのは卑怯。


 現にアリーは死んだ。殺された。

 犯人の一人は目の前にいる。


 心を、愛を弄び、踏み躙った。

 愛されたかっただけの少女を嘲笑い、傍にいるべき親友とも距離を取らせた。


 その結果……。


 深い絶望と喪失感さえも気取られないように、王太子妃として強く在るために隠したんだ。

 周りに冷徹だと非難されようとも、親友の死を悼むことさえ許されなかったからアリーの心はボロボロに傷ついた。


 推し量れない怒りや悲しみ。


 あの首を今ここではねても、僕の気分が晴れるだけ。アリーの心の平穏には繋がらない。


 荒れ狂う感情を抑えて屈辱に耐えるエドガーを一瞥して、セシオン団長に声をかけた。


 「今から剣術の訓練に付き合ってもらえませんか」


 隠すことなく堂々と言った。

 面食らったように驚きながらも


 「もちろんです。王太子殿下のお役に立てるのなら、いくらでも時間は割きます」

 「騎士団長!!言葉には気を付けなさい!!王太子は我が息子、エドガーです!!」

 「私は言ったはずだ。アリアナ嬢に婚約者として選ばれたほうが王太子であると」


 平等に与えられたようで、最初からエドガーが王太子になれるように仕組まれていた。

 存在感もなく王宮に居場所のない無力な王子(たにん)よりも、親しい王子(ともだち)を選ぶに決まっている。


 陛下だけではない。誰もがそう思っていた。僕でさえ最初から諦めていたのに。


 「あんな小娘に選ばれたからとなんだと言うのです!エドガーは高貴な私達の血を引く息子なのですよ!?剣術なんて野蛮なものに打ち込むあのような者が王位を継承するなど」

 「フッ……」


 僕を貶すためのその発言の意味もわかっていない王妃がおかしくて、つい笑ってしまった。

 卑しい平民混じりに見下された王妃はカッとなり、手元にあったナイフを投げつけてくる。咄嗟のことでも、僕にとって問題はない。

 顔に当たる寸前、最小限の動きだけで避けた。かすってもいないから血も流れない。

 カランと音を立ててナイフは床に落ちた。


 「剣術を習う王族は野蛮なのですか?」

 「当然です!!」

 「なるほど。では陛下も野蛮ということになりますね」


 一瞬の沈黙。すぐさま陛下と向き合う。王妃が言い訳で口を開くよりも先に


 「そうか。まさか王妃がそのような考えを持っていたとは知らなかったぞ」


 公務ばかりでは体が鈍るからと、陛下は昔から剣術を嗜んでいた。

 騎士と真剣で打ち合えるほどの実力を持つ。ここ最近、始めたことではなく王太子だった頃、王妃が婚約者だったときからの話。

 鍛錬する姿を見てきたはずなのに、僕を非難したいがばかりにそのことを忘れていた。


 侮蔑の視線を浴びせられ、顔面蒼白になりながら縋りつこうとする王妃の手を払う。


 「王妃が望むのであれば、このまま離縁してくれて構わない」

 「お待ち下さい!!私は決して……そのようなつもりは。どうか失言をお許し下さい」

 「謝る相手は私ではないはずだが?」


 怯える目が僅かにズレて僕を捉える。屈辱にまみれ、プライドが謝罪を許さない。

 形だけの誠意さえなく、許しを乞うのは僕のほうだと態度を崩さないのだから、もうすごいとしか言いようがなかった。


 昨日までの僕なら謝罪はしないにしろ、もういいとこの場を去っていただろう。

 王宮での出来事については諦めることが肝心。期待するだけ無駄。

 物わかりのいいふりをして母上に危害が及ばないように逃げてきた。

 でも、僕は王太子だから。この国を背負うべき存在となった以上、弱腰ではいけない。

 立ち向かうんだ。理不尽にさえ。


 「そもそも!!こんな平民混じりが……私生児が!!王太子になるなど前代未聞です!!」

 「それについてだが、既に法が改正された。多くの貴族から今の法に関する改正案が届いてな。明日の新聞の一面を飾ることになっている」

 「は……?」

 「側室の子供を私生児として扱う古い法を失くし、平等に権利を与えるようにする」


 名前を明かしたわけでないけど。多くの貴族とは、アルファン公爵を始めとした僕を支持してくれている彼らだ。


 ただ平民を味方にするのと、エドガーと同じ高い位置から彼らと同じ目線で対等になることで、信頼はグッと得られる。


 公爵だけじゃない。あの場にいた貴族は皆、このことを知っていた。

 教えてくれなかったのは陛下が口止めしていたからだろう。


 「い、今更!!そんな……これまで守ってきた歴史を変えるなんて!!」

 「今だから、変えるべきなのだ。時代は変わっていくのに、そこに生きる人間がいつまでも昔のままでいていいはずがない」


 昔。ずっと昔。国を統べる王が妻ではない女性に恋をしたのが始まり。

 狂ったように側室だけを愛するようになり、待望の男児が生まれ……嫉妬に飲まれた妻はあらゆる手を尽くし亡き者にしようとした。

 愛する人との愛の結晶(こども)。失うことを恐れた王は新たな法を作った。


 王家に生まれた側室の子供は身分に関わらず私生児とする。認知はするし王宮から出ていくことを命じられるわけでもない。

 ただ、与えられないだけ。リンデロンでありながらも、その名を使うことを。


 王位継承権を一応は与えられるも、正妻の子供以上に優れた能力を持たない限りは王座に座ることはない。

 それこそが。守るための最善。

 兄弟には蔑まれて、使用人には見下される。自分という存在が小さくなっていく。


 尊厳を奪われて守られることに、どんな意味があるのか。


 守るなんて都合の良い言葉で誤魔化しているだけで、本当は巻き込まれたくなかったのでは。

 愛に溺れて狂ったことにより、歪んだ人間関係。自分のせいだと認めるのが怖かっただけじゃなかったのか。


 要は逃げただけ。背負うべき責任から。


 後に続いた歴代達も考えることを放棄して、ルールだからという逃げ道で楽なほうを選んだ。


 側室。言い方を変えれば愛人。その子供には心がなく、何をしても平気だと本気で思っていたのだろうか?


 みんな声を上げなかっただけだ。ちっぽけな居場所を守るために。

 敵しかいない王宮で、愛をくれた母親と生きていくには本音と感情を隠す以外に方法はなかった。

 僕がずっとそうしてきたように。


 「そのような大事なことをなぜ!!私を抜きに進めたのですか!?」

 「反対するだろう?王妃は」

 「当然です!!貴族ならまだしも、あの女は没落して平民に落ちた。貴族として恥ずべき……」

 「だからこそ。王妃や実家であるキルマ家に通ずる貴族を会議に参加させなかった」

 「あ、ありえないわ。こんなこと。認められるわけがない」

 「ふぅ……。仮にキルマ家やその派閥の貴族が反対したところで、賛成派のほうが多かった。どちらにせよ法の改正は行われたことだ」


 変だな。向こうには半分以上の貴族が属していて、数では圧倒的に負けている。

 賛成派が勝つことなんて……。


 陛下は笑った。穏やかに。

 その目は僕がアリーに向けるものと同じで。


 そうか。アリーだ。


 キルマ家やローズ家に従う家門は全員が全員、心から尽くしているわけではない。

 力がないからこそ強者にひれ伏すことを選んだ者のほうが多いだろう。


 彼らの心を変えて突き動かしたのはアリーの持つ純粋(やさし)さ。


 アリーは幼少期から多くの大人達と接してきた。そのほとんどがアリーに救われて深い恩を感じている。


 今しかない。自分達を縛る恐怖(くさり)を解いて、前に進むには。

 二つの侯爵家から怒りを買ってただで済むはずがないのに、それでも……選んでくれた。アリーのために戦うことを。


 アリーが紡いでくれた縁が、巡り巡って僕を助けてくれる。

 胸の奥が温かい。じんわりと火が灯ったかのように。

 どんな言葉で感謝をすれば、この気持ちが伝わるのだろうか。


 「認めない。認めないぞ俺は。お前なんかが俺のものを奪うなど!!」

 「エドガー」


 その首にそっと触れた。


 「言ったはずだ。アリーをもの扱いするなと」


 指先に力を込めるふりをすれば大袈裟に距離を取り、椅子に足を引っ掛けて無様に転んだ。


 慌てて駆け寄るのは王妃と使用人だけ。騎士は誰一人として動かない。


 「王太子になった以上、軽率な行動を取るつもりはない。従ってお前を殺さないが、僕は愛する人を侮辱されて許してやるほど優しくはないと覚えておけ」


 冷たく蔑まれる視線はいつだって僕にだけ注がれていた。それが今では立場が逆転し、人目を気にしなくてはならないのはエドガー。


 こんな状況では最後まで食事をするなんて不可能で、先に退室する許可を貰いカルも連れて訓練場へと向かう。


 王妃の荒れ狂った声となだめる侍女の声。感情を爆発させたエドガーとそれを冷静に止める陛下。


 ──理想の家族とは程遠いな。


 食堂を出ると壁にもたれて中の会話に堂々と聞き耳を立てていたクラウスと鉢合わせ。

 僕が怪我をさせられたらすぐに治せるように待機してくれていたのか。


 いくら友達とはいえ、隣国の王太子を廊下に立たせていたことは褒められたことではない。


 「クラウス。ごめん。ありがとう」

 「謝罪と感謝なら誠意を示してくれ」

 「僕は何をすればいい?」

 「マリアンヌがアリアナ嬢とボニート令嬢とのお茶会を強く希望している」

 「わかった。伝えておく。マリアンヌ様はいつまで滞在予定?」

 「お茶会を開くまで、だな」


 あくまでも予定は二人に合わせるということか。

 大規模なお茶会ではなく、三人だけで楽しむものだからそんな先にはならないはず。


 アカデミーが休みの日なら一日中、パトリシア様のことを語れる。


 ……でも。辛くはないだろうか。

 アリーから送られてきた手紙にはパトリシア様の死を受け入れ、侯爵夫人が偽物であることを認めたと……震える字で綴られていた。


 アリーが生まれたことを誰よりも喜び祝福してくれた、たった一人の家族。

 どんなに姿形を似せても、所詮は偽物でしかないんだ。

 家族として接しているわけではないとしても、あの姿で名前を呼ばれたら辛く苦しい。心が痛くなる。

 僕なら……。偽物だとわかっていても母親の顔と声で名前を呼ばれて「愛してる」と言われたらきっと……。

 愚かだとしても愛しい感情が湧いてしまう。


 「クラウスもどう?一緒にやらないかい、剣術」


 暗く沈みかけた気持ちを切り替えるためにクラウスに声をかけた。

 部屋に戻ろうとしたクラウスは肩をすくめながら


 「残念ながら私には剣の才能がないんだ。だから、見るだけにしておく」


 大抵、そういう人は強い。


 「ディルク殿下。行きましょう」

 「うん」


 僕を見る使用人の目は恐怖し、王宮から追放されることを怯えていた。

 今日のことは誰にとっても予想外。

 こんな未来を一体、誰が想像できたというのか。


 視線を逸らし俯くのは僕に仕返しされる心当たりのある者ばかり。


 明日から媚びを売る相手が僕に変わるかもしれないが、王妃からネックレスを受け取った彼女達は態度を変えられない。

 裏切りは物理的な死を意味する。


 既に見せしめとして侍女が殺されているのだから、怯えながらも仕えるべき主に膝を付き忠誠を誓う。


 救うために手を差し伸べたところで、僕を選ばないことは目に見えていた。

 命を助けてあげるほどの義理はないのだから。僕がしてあげられることは王宮から逃がしてあげることだけ。

 その先のことは自分でどうにかしてもらわないと。

 最低限の救済はしてあげるのだから。

 死ぬまで面倒を見てあげても、僕には何の得もない。

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