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秘密の抜け道【エドガー】

 マズい。騎士が調べに来たら占い師を養ってやっていることがバレてしまう。


 人間一人なら誤魔化しようはあるが毒は違う。


 押収され調べられでもしたら教師が死んだ毒と一致する。そんなことになれば俺が殺したと疑われる。


 ──くそ!!


 教師は死んで当然の人間なんだ!!俺が責められる言われはない。


 今の王宮の雰囲気は、俺を陥れようと事を荒立て俺の味方を奪っていく平民混じりの言葉が優先される。


 騎士でありながら仕えるべき主がわからない無能を持つのは苦労するな。


 そういう無能を使いこなしてこそ真の王ではあるが。


 あまりにも態度が改善されなければクビにしてしまえばいい。


 最初に調べるのは平民混じりの母親。そこから順番に部屋を調べていく。


 俺の部屋に来るまで時間はある。


「そんなに慌ててどうかなさいましたか?」


 ずっと部屋に閉じこもっているだけの占い師は何が起きたのかわからず呑気な声。それが俺をイラつかせる。


「未来が視えるのならなぜ!!こうなることを俺に教えなかった!?」

「何のことでしょう」


 あくまでもシラを切るつもりか。


 時間はないが、こうなったのは占い師のせいだとわからせるために説明すると耳を疑うようなことを言い出した。


 調査の手が及ぶ前に脱出する。隠し通路の場所を教えろと。


「貴様!!平民混じりのスパイだな!?俺を嵌めやがって!!生きて出られると思うなよ!!」


 王になるためにこんな卑劣なことまでするのか。


 占い師を殺してその死体を平民混じりの前に晒してやる。


 タイミング良く私生児が現れたのも計算の内。俺にわざと毒を使わせた。


 俺から王位継承権を剥奪するためだけに。たったそれだけのことのために、この俺を罪人に仕立てあげようとするなんて。


 ──卑怯な奴め!!


 あんなのが次期国王だと?笑わせる!!


 自分本意で他者を蹴落とすことしか考えない奴が人の上に立つなど、この国の破滅を意味する。


 この俺に人を殺すことを勧めておきながら、自分の身が害が及ぶとなった途端、一人だけ逃げようとするなんて。


 ずる賢い平民混じりと同じで卑怯な奴だ。


 王族である俺を騙した罪。それはとても大きい。一族皆殺しだ。いいや!友人も恋人も、コイツに関わった者全員、悪の象徴として晒してやる!


「殿下。勘違いしているようですが、私がここを出なければ殿下が毒殺の首謀者だと疑われてしまうのですよ?」

「何が言いたい」

「騎士団が探しているのは第一王子を殺そうとした毒なんですよね?ならばそれを私が持って王宮の外に出れば殿下への疑いは完全に消えます」

「バカが!!出入り口は全て塞がれているんだぞ」

「いいえ。隠し通路ならば大丈夫です」

「ハッ。未来で視たのか」

「隠し通路とは、いざというとき王族を逃がすためのものです。そしてその通路を使わなくてはならない非常事態では騎士団長が護衛に就くはず」


 占い師の言う通りだ。


 隠し通路はわざと狭く作ってあると父上に聞いたことがある。


 大人一人が通れる幅で前後に団長を配置する。


 故に通路の場所を知っているのは団長のみ。余程のことがない限り団長の交代は認められないし、退いた過去の団長は新人育成と称して目の届く王宮に残してきた。


 前の第一騎士団の団長だけは去って行ったがな。


 王族の命が危険に晒される情報を口外しないと父上と口約束をしていた。


 通路の入り口を塞ぐには団長自らがそこに立ってないといけなくなる。


 そんなことをすれば目立って、そこに何かあると公表しているようなもの。


 それに第二、第三の団長は調査の部隊編成に招集された。団員よりも団長のほうが視野が広いからと。


 今なら通路を使えば占い師の存在は誰にもバレはしない。


 ふん。策があるならさっさと言えばいいものを。


 荷物の少ない占い師は身軽で、すぐにでも動ける。


 隠し通路は玉座の間にある。王のみが座ることの許された椅子の後ろの壁。そこが入り口。


 王座の間は普段は人の出入りが禁じられているが鍵がかかっているわけではない。監視がいるわけでもなく、入ろうと思えば誰で入れる。


 だが、誰も入らない。それほど玉座の間は特別。


 どういう仕組みなのかはわからないが手をかざすと壁は左右に分かれ奥に進む道が現れる。


 真っ暗で先が見えない。


「では殿下。ほとぼりが冷めたらまた、私をお呼び下さい」

「お前はなぜ、俺に尽くす?お前が得る利はなんだ」

「殿下自身が一番良くわかっているはずですよ。こんなところで貴方の人生が終わっていいはずがないからだと」


 笑みを浮かべ背を向けた。


 占い師は静かに歩き出す。


 暗闇に真っ直ぐと進む占い師はどこか異常性が垣間見えた。


 しばらくの間、占い師は魔法使いと同じ屋敷で過ごす。この俺の協力者に選んでやったんだ。親交を深めさせてやる。


 こんなにも気遣いの出来る王族は俺ぐらいだろう。


 余所者に衣食住を与えるだけでなく、未来の王である俺に一足先に仕えさせてやっているんだ。


 国を追い出された無能達も、その日暮らししか出来なかった占い師も俺のおかけで何一つ不自由なく贅沢に暮らせている。


 アイツらはもっと俺に感謝し、死ぬまで尽くし恩を返すのが義務。それだけが、存在する意味のないアイツらの存在理由。


 俺はこの通路を使ったことはなく、どこに出るのかはわからない。


 王宮から屋敷までの地図を描くだけの時間はあったが、地図をどこかに落とされ誰かに拾われても困るからな。

 そこまでマヌケではないだろうが万が一ということもある。


 通路は一本道だし迷うことはないはず。明かりは持っていなかったが問題もないだろう。


 占い師の姿は闇に飲まれたかのように見えなくなっていく。


 俺も壁を閉じてすぐ部屋に戻った。


 無断で部屋に踏み入れられ、証拠の捏造をされては敵わんからな。

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