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出来ることを精一杯【ラジット】

 形式上、アリアナ様には王宮に出向いてもらうことになった。


 護衛としてローズ家にいるわけだし、そこでチャチャっと終わらしたかったがそうはいかない。


 面倒なことでもルールに則ってやらなければ、後々文句を言う奴が絶対出てくる。誰とは言わないが、ワガママで自分第一の王子とか。


 特に俺は平民だから。王族の作ったルールには従わなければならない。


 アリアナ様は副団長のルアがいないことを気にしていた。


 男と二人きりになることを嫌がっている様子もない。恐らくは女性の聴取は必ず女性騎士を同伴することが義務付けられているのに、俺しかいないからどうしても気になってしまうのだろう。


 この王宮は腐った人間が多い。使用人の身分でありながら王族である第一王子とその母親に対する仕打ち。


 なぜあんな奴らが王宮で働けているのか不思議だ。


 ここにいる奴ら全員、頭がおかしいんだろうな。


 フリッツ国も中々だったが、こちらも負けていない。何なら、こちらが勝っている。


 教師に狙われている女子生徒。


 下世話好きのここの連中が好む話題。


 どんな生徒か。どこの家門か。


 気になって気になって仕方のない様子。そんな好奇の目に晒してしまえば、たちまち国中に広がり女子生徒は肩身の狭い思いをする。それどころか家族まで巻き込んでしまう。


 何もなかったことを証明しても傷ついた名誉が回復するまでは時間がかかる。

 下手をしたら今回のことを利用して引きずり下ろそうとする輩も出てくるだろう。


 貴族社会は足の引っ張り合い。上に上がれないなら、上にいる人間を下に引きずりおろせばいい。


 それを避けるために王太子様の厚意に甘え、瞬間移動で連れて来た。


 別室には鍵をかけているとはいえ、ここは王宮。


 事件の聴取のため呼ばれている身としても、中から鍵のかかった部屋に一人でいると落ち着かないだろうし、掃除をする使用人が物が盗まれているなんて騒ぎ立てれば結局、女子生徒の正体を明かすことになる。


 王宮に住んでいるだけの騎士と、その部屋に頻繁に出入りし掃除をする使用人。どちらの意見が強いかなんて火を見るより明らか。


 王宮の物が盗まれたとなれば第四騎士団は動かざるを得ない。公に女子生徒の家に赴き、調査を開始する。


 何も見つからなかったとしても「勘違いでした」と謝れば済む。


 自分達の欲求を満たすためなら他人がどうなろうがお構いなし。例えその行動で無実の人間が死ぬことになろうとも。


 それがこの王宮に集う腐った人間。


 聴取が終わり記録用の魔道具を止めた。


 この後は女子生徒と第二王子の取り調べ。


 女子生徒はいい。そちらも短い時間で終わる。


 第二王子はそうはいかない。全ての元凶はあのクズ野郎なのだから、鬱陶しいと思われるぐらいしつこくいかなくては。


 最初のうちは大人しくしているだろうが、長引けば本性が出てくるはず。


 見下されるのには慣れている。第二王子も俺の家族も使用人も教会の連中も同じ。


 お前のようなゴミ同然の愚図を使ってやってるんだ。有難く思え、と目が雄弁に語っている。

 優越感に浸りたい連中は感情を隠そうともしない。


 ──仮にも貴族なら感情ぐらい隠せよな。


 俺だけを侮辱するなら笑って聞き流せる。でも、シャロン様やアリアナ様への侮辱は許し難い。


 目の前で嘲笑うようにスラスラと悪く言える第二王子を切り刻めないのがストレス。


 これはアリアナ様の復讐。俺が勝手に殺していいはずがない。


 ここまで我慢するんだ。せめてあのクソ王子が教師を殺した証拠は固めたい。


 面倒な時間が迫ってくる。精神安定剤欲しい。


「それなら自白させたらどうかしら?」

「え?あっ、口に出ていましたか?それよりも自白させるとは?」


 罪を認め自らが不利となるようなことを、あのクズがするとは到底思えない。


 どこから声に出していたかより、どうやって自白させるかを聞いた。


 きっとシャロン様ならアリアナ様の意図を読み解けるのだろうが俺には無理だ。


 そんなやり方、教わったことがない。


 生まれたときからずっと期待なんてされずに、誰かと対等になることもなく、俺は俺に出来ることしかやってこなかった。


 わからないことをわからないと、出来ないことを出来ないと言えば、呆れられて次第に言葉を交わすこともなくなる。


 それなのに俺への陰口は聞こえるように言うのだから精神的にもキツかった。


 教えを乞うのは卑しい人間のすることだと言うが、連中は俺のことを人間とさえ扱わなかった。


 他人が何を考えているのかなんて、じっくり観察し続けていれば多少はわかるようになるのだとしても、昔は意識的に、今は無意識に俯くのが癖となってしまったんだ。


 顔を上げているときは視線を下に落とす。とにかく誰も見ないようにしていた。


 俺が透視魔法を使えることを、ここの国の人間は知らない。魔法も制御出来ている。


 気味悪がられることなんてないのに、どうしても昔に言われたことが耳から離れない。


 ──俺だって好きで透視魔法を得たわけじゃないのに。


 見ない分は聞けばいいので、生活するのに何の問題もない。


 出来損ないの俺に呆れることもなくアリアナ様は穏やかに笑った。


「何も答えなければいいのよ。あの男は見栄っ張りでチヤホヤされるのが大好きなの。女子生徒を心配する優しい自分に酔いしれるナルシストでもあるわ。王族である自分が心配してやっているのに……。とぼけられたら感情に任せて犯人しか知り得ないことを漏らしてくれるはずよ」


 確かにそうだ。


 クソ王子は味方を作るのが上手いし、仲間に引き込む話術も長けている。


 完璧に作った偽りの存在であるものの、それが崩れる瞬間もあった。


 身分差も立場も弁えないあの女が責められたりすると頭に血が上って後先考えない行動に出たりする。


 あとはディルク殿下と比べられたり格下に軽視されたりしたらか。


 どんな醜態を晒そうと、何事もなかったように周りの人間への対応を忘れない。


 騙される奴がバカなんだろうけど、それだけクソ王子がやり手ってことだ。


「ラジット。いつもありがとう。私を助けてくれて」

「いえ。私は……私に出来ることを精一杯やっているだけです。それに私は指示待ち人間です。レイウィスやミーナならアリアナ様のお心を推し量り、言葉の意味を簡単に理解してしまうことでしょう。ですが出来ないんです。私には。貴族なら出来て当たり前のことが」


 弱点を晒すのは愚かなこと。ましてや護衛対象に話すべき内容でもない。


「人には向き不向きがあって、ラジットはたまたまそれが苦手だっただけでしょ?そんなに気にすることでもないわ。それに私だって人の本質を見抜くのは苦手よ。そのせいで一回は殺されたわけだし」

「それ、は……」

「私としては出来ることを精一杯頑張ってくれるほうが嬉しいわ」


 ダメな自分を受け入れ肯定してくれた。


 あぁそうか。レイウィスはずっと前からアリアナ様の素敵なとこに気付いて慕っていたのか。


 だからお前はアリアナ様に直接、何も言えなかった。


 あんなクズ共に愛されることを夢見ているアリアナ様に現実を突きつけてしまえば、今までのアリアナ様の努力が水の泡となる。


 壊したくなかったんだよな。


 壊れる未来しかなかったとしても、自分の手でアリアナ様の幸せを壊し奪う真似は……。


 慕っているアリアナ様の絶望的な死を目の当たりにしてお前は密告者として託したんだろう?


 この世界で誰よりもアリアナ・ローズを愛した男に。


 何だかそれが無性に羨ましくてレイウィスと立場を交代したいと思った。


「アリアナ様。本日は御足労頂き誠にありがとうございました」


 ディルク殿下に怪しまれないように扉を開けながら、再度礼を述べた。


 ルアが別室で女子生徒といることは事前に伝えておいた。それが彼女を守る最善。


 つまりはこの部屋にいるのはアリアナ様と俺の二人。


 気が気じゃなかっただろうな。自分の好きな人が密室で男と二人きりなんて。事前に報告はしているしディルク殿下から許可も取ってある。


 騎士への憧れの強いディルク殿下がゲスな勘ぐりをするわけはないだろうが、内心では嫌だったかもしれない。


 それでも仕事だからと割り切ってくれたのだろうか。


 ディルク殿下は感情を隠すのが本当に上手で、正確に心情を読み解くのは難しい。


 部屋の外で待機していたディルク殿下は取り繕うことのない表情を浮かべた。


 この辺の空気が浄化されたみたいに、のほほんとしている。


 ディルク殿下のアリアナ様への想いは周りが思うよりも大きい。


 俺に対して不満があるわけでもなそうで、逆に労いの言葉をかけてもらった。


 こんなにもお似合いの二人は他にいない。



 アリアナ様とディルク殿下は図書室に行ってしまった。持ち出し禁止の本が眠る王宮の図書室はアリアナ様にとって宝の山。


 あんなにも本が好きだと感情に出ているのになぜクソ王子はわからないのか。


 脳みそお花畑でウジが湧いてるのは知っていたが、見てもわからないほど無関心のくせに婚約者の座を狙っているなんてお笑いだな。


 虫唾が走る。アリアナ様の視界にも入って欲しくない。


 ──いっそ、存在が抹消してしまえばいいのに。


 アリアナ様の次は女子生徒。


 タイミング良く現れた王太子様に別室に飛んでもらうようお願いした。


 こんな雑用を快く引き受けてくれるなんて、心が広い。


 今まではこんな距離で接したことはなく、もしかしたら俺が魔法使いだとバレるんじゃないかと内心焦っていたが、気付いている様子はなかった。


 クロニア様の特殊魔法で強化しているだけで、俺の魔力は小石程度。


 生まれ持つ才能が大きすぎるせいか、俺の魔力を自身の魔力で覆い隠しているのかもな。


 別室では沈黙だけが流れていて、廊下からは人の気配。どうにか中に入ろうとしている。


 小声ではあるが俺の耳にはハッキリと声は聞こえ、誰がそこにいるのかわかる。


 ──後で咎めてもいいのだが……。


 先に聴取を終わらせとかないと。王太子様は通信魔導具を置いて、用意されたケーキを食べているからと一度戻った。


 俺の存在は女子生徒にとって恐怖するものではなく、真っ直ぐと俺と向かい合う。


 記録用の魔道具を使うためにサインを貰い、発動した。


 先程のアリアナ様を聴取したノートを開く。


 決して間違えないよう慎重に、且つ自然に誘導する。


 賢い女子生徒は誘導に気付き、乗ってくれる。おかげでスムーズに進む。


 聞きたいことが全部終わると王太子様に連絡をし、女子生徒を送ってもらった。


 部屋には俺とルアだけ。扉を開けると、扉に耳を付けていた使用人が数人倒れ込んできた。


 慌てて立ち上がり、身なりを整え出す。言い訳を並べるお咎めを回避しようと必死。


 俺にコイツらを裁く権利はないとはいえ、報告の義務はある。


 そのことを伝えれば逃げるように走って行った。


 仕事サボってゴシップ集めに精を出していたことは報告するがな。


 最後はクソ王子か。さっさと終わらせたくて行くと、「遅い!」と怒鳴られた。


 マジか。先に来てるとは思わなかった。


 ついでに言うとまだ聴取の時間になってないから怒られる筋合いはない。


 印象を良くしたいがために先に来たのなら、まず労えよ。テメーの前にも聴取してんだよ、こっちは。


 つーかさ。このクソ王子、俺のことを陥れるような発言してたけどそれに関しての謝罪しろや。この野郎。


 と、言えたら楽だが私情を挟むわけにはいかない。


 魔導具を使うために説明していると、殴り書きでサインした。


 ──最後まで聞けよ。


 こっちも手間が省けていいんだが。


 魔道具を発動する前に説明だけは最後までした。後で聞いていなかったと文句を言われても面倒だ。


 説明をして魔道具を発動した。


 最後の確認として、俺は全ての説明をし、クソ王子はそれらを理解した上で了承したという言質も取る。


 俺は脅してないし、ルールに則ったことしか言っていない。


 処罰を受けることもなければ、責められることもないはずだ。


 教師とはどこで知り合ったのか聞くと、知り合いから紹介してもらったのだと。その人物のことを聞けば「そんなの関係ないだろ」と言った。


 外面良い設定どうしたんだよ。ずっと不機嫌な態度取られてる。


「殿下はあの教師が良い教師だと教えられアカデミーに採用するよう呼びかけたんですよね?だが実際は教鞭を取ったことのない新米。これは明らかに王族虚偽、詐欺罪に当たります。その者は速やかに罰しなければいけません」


 そんな奴がいればだけどな。


 教師を選んだ基準は金で言うことを聞くかどうか。


 長く教育の道に携わっていれば王族からの命令だろうと、聖職者に恥じる行いはしない。


 むしろ陛下に報告されるのがオチ。


 とある生徒を陥れようとしたことを。


 その点、免許取り立ての新米なら扱いやすい。上手くいけば報酬まで貰えるのだから。


「そんなことより!!大丈夫だったのか」

「はい?」

「あの教師に狙われていた女子生徒だ」

「誰のことでしょうか?」

「水色の髪で、いつも三つ編みにしている一年の女子生徒に決まっているだろう!!」


 本物のバカだ。コイツ。


 どうして被害者の女子生徒の特徴をお前が知っている?どうしてその子だと断定出来た?


 その情報はあの家に入った者しか知り得ない。

 公表してないんだぞ。女子生徒の身を案じて。


 だから全員、誰が狙われたのか興味津々なんだ。


 魔導具で記録しているため言い逃れは出来ない。


 仮に以前、家に行ったことがあるだけで、殺していないと主張するなら、お前は知っていたことになる。


 教師という立場を利用し女子生徒に迫っていた事実を。


 あの家には女子生徒の写真が見える位置に何枚も貼られていた。見えなかったなどと言い訳は通用しない。


 クソ王子の自白にルアは混乱していた。「犯人コイツですよね?」とでも言いたそうな顔。


 本来ならここで緊急逮捕になるのだが、たかが教師を一人、殺しただけの罪で裁かれるのはあまりにも軽すぎる。


 加えて生粋の王族。科せられる罰は王位継承権の剥奪ぐらい。


 裁かれるにしても王族専用の地下牢に閉じ込められるだけ。衣食住は用意され、贅沢とまではいかないがそこそこ良い暮らしが約束されている。


 陽の当たらない地下で暮らすってのはそんな優しいもんじゃない。


 生きるために必死で、希望もない。自分がなぜ生まれてきたのかもわからないような深い絶望を味わい続ける。


 それが地下での暮らし。


 自白の裏付けも大事な仕事。この記録を陛下に見せるのは今じゃなくていいな。


 うん。自白と証拠。これらはセットだ。裏が取れるまで徹底的に時間を引き伸ばし……じゃなかった。


 これは調査。陛下に見せるのであれば中途半端ではダメだ。


 黒ではなく真っ黒であることの証明こそ第四騎士団の使命。反論の余地は与えない。


 クソ王子の聴取も終わり、報告書をまとめる前に部下に教師の交友関係を調べるように指示を出した。


 被疑者死亡で片をつけたほうが楽ではあるが証拠の(ちいさな)積み重ねは大事だ。


 完膚なきまでに叩き潰すには。


 ルアには「絶対あの王子、事件に関与してますよね」なんて言われた。


 それを調べるための秘密裏の調査だと返せばもう何も言わなくなる。


 久しぶりに騎士団としての仕事をしたって感じで疲れた。


 アリアナ様とディルク殿下に邪魔が入らないように、立ち回る予定が陛下の呼び出しにより俺が邪魔された。


 ──え……めんどくさ。行かなくていいかな。


 なんて、そんなわけにはいかず来たのはいいが、ここは……。


 防音魔法のかかった部屋。


 以前もここにウォンとラードを呼んで話をしていたみたいだ。


 いくら俺の静聴魔法でもこの中の会話を盗み聞くことは不可能。クロニア様ならいけたかもしれないが。


 あの人は色々と規格外だ。


 初めて会ったときだって。教会を半壊させて俺達を助けるために手を差し出してくれた。


 見ず知らずのガキのために手を差し伸べてくれたんだ。


 苦しくて、ずっと誰かに助けて欲しかった。でも……弱く生まれた自分が悪いのなら心の声は口にしてはいけない。


 疎まれていても、気味悪がられていても、少し……ほんの少しでいいから俺のことを愛して欲しかった。


 父さん母さんと呼ぶことを許して欲しかった。


 捨てないで……欲しかった。


 俺達はクロニア様に救われた。


 虐げられた子供の頃の自分と決別するってことは、苦しんできた現実から目を逸らすのと同じだ。


 俺の中にはまだいる。痛くて辛くて泣きたいのを我慢する傷だらけのガキが。


 陛下には今日の聴取のことを何も話すつもりはなく、適当にこっちから話題を振って時間を稼ぐ。


 だが陛下は俺から聴取の結果ではなく、別のことを聞きたくて呼んだ。


「ローズ家の秘密、とやらに心当たりはないか?」


 秘密?


 陛下は一体……どれのことを言っているのだろうか。


 バカ正直にどの秘密か?と聞けば更に面倒が待ち受けることは確定される。


 そもそも陛下の口からローズ家の秘密という単語が出てくることが腑に落ちない。


「ウォンとラードが、あの家は何かを隠していると言っていたんだ」


 腑に落ちた。


 あの二人は護衛とは別に暗部も捜している。


 正確にはアリアナ様と親しい者だが。


 口の堅い騎士であろうと暗部の存在を公にすれば、口封じに動かなくてはならない。


 余計な仕事が増えなかったことはかなり助かっている。陛下の頼みではなくディルク殿下の命令を優先に、護衛を第一に考える。だからシャロン様も現状維持でいいと判断した。


 どこの国も貴族っていう生き物はクソみたいな奴らだ。


 血筋(それ)しか自慢するものがないから。


 シャロン様やアリアナ様は別格として、王宮騎士のほとんどは平民の俺を蔑まない。


 団長に就任してからも嫉妬や僻み(ひがみ)もなく、上司として俺を慕ってくれる。


 王宮騎士団は俺の居場所みたいになりつつあった。


 まるで家族のような彼らを殺したくないと、心のどこかで願う。


 ──どうかこのまま何も、知らないままでいてくれ。


 本当の俺の出身は貴族であるものの、こちらの国で貴族で在るなら魔法を使うしかない。


 いきなり見ず知らずの人間が貴族を名乗ったらおかしい。警戒され通報される。そうならないための魔法。


 クロニア様が使ってくれたら上級貴族の仲間入りは果たせる。


 俺は身分が貴族でなくていいから、レイウィスとミーナだけ貴族子息と貴族令嬢となった。


 ──本当に規格外だな、あの人は。


「ソール?」

「あ、失礼しました。そうですね……」


 ここで真実を話したら血圧が上がって死にそうだな。


 自然死を避けるためにそのことは伏せて、家族や使用人からの冷遇ではないかと答えた。


 二人からも同じようなことを聞かされていた陛下は頭を抱えた。


 陛下の血圧を上げるつもりはないが、その使用人達がアリアナ様を見下すような言動が目立つことも伝える。


 ついでに居候の令嬢にかなり問題があるとも言えば、「もういい」と喋ることを止められた。

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