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鏡面のクロノスタシス  作者: 悠葵のんの
三章【月下狂乱の物語】
73/81

27話『残雪に揺れる臙脂色』

☆六月一日午後八時五分


「……さみぃ……」


 六月。紅い月が空に浮かび、雪が降り注ぐという、まるで世界の歯車が狂ってしまったかのような夜空に向けて、小さく呟く。


 ……マリアを、追いかけようとした。

 いつか言ったはずの別れの言葉も無くこの場を去る幼馴染の背に、未練がましく手を伸ばした。

 でも結局、それは叶わなかった。何とか聖剣を杖代わりにして立っていた身体が、力無く崩れ落ちてしまったから。


 拳を握る。あまりにも筋肉が弛緩していて、笑ってしまう。

 もちろん何も面白くなんかないさ。

 ただ、どうすればいいのか分からないほど崖っぷちに立たされてる気がして、溜め息とか弱音とか涙とか、そういった()()()()()を忘れちまって、仕方なく乾いた笑いが漏れただけ。


 冷たい瓦礫の上。意思に反して大の字に倒れた身体。

 口と目蓋を動かすだけで必死の、途方のない脱力感。

 今のオレは先ほどの吹雪の名残り……《傘》の下から緩慢に降ってくる泡雪が、目に入らないようにするので精一杯だった。


「……動けよ、チクショウ……ッ、ツバサとアヤメさんはどうなったんだ……」


 どうにか己を奮い立たせるべく、言葉にする。

 確認しないと。オレが《ナイト・メア・アタラクト》を使って中央都市に舞い戻った理由を。不死鳥の安否を。

 マリアのことは一旦置いておいていい。どうせ頭は身体同様に限界を迎えていて、ロクに物を考えられない状態なんだ。

 だから今は、とにかく目の前のことを。果たすべきことを果たさないと……。



「――二人なら、その辺りで死んでいましたよ」



 不意の、声だった。

 聞き覚えのある女の声が、雪と共に降ってきた。


「…………」


 冷たい結晶が眼球に張り付いてようやく、瞬きを忘れていたことに気付いた。

 瓦礫を踏みしめる音がして、すぐに視界の端に映り込んだのは、トレードマークである臙脂(えんじ)色のマフラー。


「あの、聴こえました? あなたに言ったんですけど――――あれ、妙だな。見間違い……?」


 今だけはあながち季節外れとも言えないだろうそれを、以前よりも乱雑に巻いているそいつは……ユキノは不思議そうな顔で伊達眼鏡を弄っていて。


「――――っ、ぁ」


 ちゃんと聴こえてた、と答えようとして言葉に詰まった。

 ユキノの言葉を一語一句違わず、しかと聞き届けたにもかかわらず、その意味するところを理解できなかったから。

 ゆえに、なんて返事をすればいいのか分からなかったのだ。


「……なんで……ここに、ユキノが……?」


 泳ぐ視線を《傘》が展開された空に固定してから、十秒かけて絞り出した質問。


「いや……そうじゃ、なくて……」


 しかし口にしてから、それが現実逃避のための愚問だと自覚する。

 だってオレはその答えを知っている。

 体内に取り入れたアヤメさんの血の記憶が告げているのだ。


 ――四月十六日。吸血鬼が不死鳥と聖戦の決戦を行ったあの夜。


 アヤメさんは自身の死、それによる《傘》の燃料の消失に備えて、圧倒的な魔力量を誇るユキノにとある頼み事をしていた。

 もしも聖戦の最中に不死鳥の炎が消えてしまった場合は、一時的にユキノが魔力を供給するように、と。


 そんな備えがあったからこそあの夜、レイラによってアヤメさんの炎が消されてもなお、紅い月光を遮る魔力防壁は展開され続けていたんだ。

 騎士団本部がしばらく極寒で包まれるほどの魔力を、ユキノが供給してくれていたから。

 つまり、今回も、きっと()()なのだろう。


「……ああ、……くそ……ッ……」


 だから仮に、万が一にも、ユキノの言葉がそういう意味だったとしても。聞こえたままを安直に受け取ったとしても。

 今こうして何事もなかったように《傘》が展開されているのは、なんらおかしなことじゃあ、ない……。


「――死んでたって、不死鳥の二人がか……?」


 今さら回り道をすることに意味はないと、覚悟を決めたオレは、改めてユキノに問い直した。

 するとユキノは寝癖らしき膨らんだ後ろ髪を手櫛で整えながら、瓦礫の上に座り込んで言うのだ。

 普段通りの少し気怠そうな声で、淡々と、事実を。


「はい。死を迎えてから復活するまでの間に、魂を凍結されたんでしょうね。だから再誕のサイクルが中断されてしまい、蘇ることができないでいるんです」


「それは、もう……ずっとこのまま、起きないってことかよ……」


「術者が解くか死なない限りは、ええ、目覚めることはないでしょう。高度な技術だ。机上の空論を空論で終わらせない実力が、これをやった女にはあります」


「…………」


 噛み殺すように、白い息を吐いた。

 極寒に震える身体。痛みに打ちひしがれる心。

 運命という言葉でやり過ごそうとした喪失感の波が、氾濫する。

 もう、しばらくは何も見たくないと目蓋が、暗闇が落ちてくる。

 しかし。


「……ですが、まあ」


 そのすんでのところで、オレの意識を引き留める声が続いた。


「死んだままの状態で止まっているんです。勝手に良くなることはないですが、同時にこれ以上悪くなることもない。もっと言えば、再誕は中断されているだけで、その法則ごと消されたわけではないんです。つまり、ええと……」


「――――希望は、まだあるってことか」


 言葉を探していたユキノに、文字通り希望的観測を差し出す。

 そしてユキノは答えた。肺の中の空気を入れ替えるように、白く染まらない息を吐き出してから、変わらない口調と声色で。


「そういうことです。魂が解凍されたら復活しますよ、あの二人」


 まあそれが難しいんですが、と小さく付け加えるユキノ。


「そっか……、そっか……」


 期待しすぎるのは禁物だが、しかし、絶望するにはまだ早い――か。


「……教えてくれて、ありがとな……。ユキノってクールでつーんな感じだけど、結構優しいよな……」


「やめてください。事実を伝えたら青い顔をされて、まるでこっちが悪者みたいだったから、フォローしただけです。というか、つーんな感じってなんですか」


「特に深い意味はねえよ、はは……」


 つい、笑ってしまった。ツキヨミクレハのどこかで、はちきれそうなぐらい張り詰めていたものが、少しだけ緩んだ気配がしたから。

 ほんのちょっとだけ、楽になったから。


「……おかげでもうちょい、頑張れそうだ」


 息を吹き返したように、深く呼吸をする。

 ゆっくりとだが再び、思考が回り始める。


 一応これで、不死鳥が今どのような状況に置かれているか知ることができた。

 オレがこの場で果たすべき役目は終わったってことだ。


 ふと……記憶を振り返る。


 それは、中央都市に戻ってくる直前のこと。

 ツユリを拘束してからツバサの炎が消えるまで、十分から二十分ぐらいの猶予があった。

 今にして思えばあの少しの合間に、まるでこうなることが分かっていたように、向こうでやれることはすべて済ませていた。


 ツユリが飲み込まなかったほうの魔石を回収して《支柱》に組み込み、生き残る見込みのある住民にベル先生が応急処置を施しながら、壊れた建物や周辺の森から木材を調達することで、馬車の修理と住民を運ぶための新たな荷台を造ろうと話し合い。

 その裏でオレは、聖戦時にミアが使用していた仮死状態になれる魔術で、不死鳥の炎を鎮められるかを試そうとしていて。


 ……そのときのことだったんだ。炎が、突如として消え去ったのは。


 オレはすぐに()()()()()()()()()()を思い出し、ベル先生もおそらく前もって何か指示を受けていたのだろう――『行ってくれ。《支柱》は《傘》に接続された。日曜大工も僕だけで問題ない。こっちはもう自力で帰れるから、何も心配しなくていい』と背中を叩いて送り出してくれた。


 あの言葉に気遣いはあったが嘘はなかった。元々馬車の修理なんかも、オレは必要な物を集めるだけで実際の作業はベル先生が一人でやる予定だったんだ。

 だからきっとベル先生は、多少時間がかかったとしても今夜中に準備を整えて、明日の朝には住民たちを連れて帰ってくるだろうな。


 ということは、さしあたってオレがやるべきことは……もう無いのだろうか?

 あと少しここで倒れたまま回復するのを待って、それからお姫様に事の成り行きを報告して、いずれ帰ってくるベル先生たちを迎え入れる準備を整えれば、それでいいのか?

 ……それが無駄のない、最善の、最適解なのかもしれないな。


 だけど――――――――――――――――――いや、まだだ。


「……ッ、ぐ――――ぁ!」


 身体を横に傾け、肘で半身を支えるようにして、足を曲げる。

 軋む骨。筋肉が破れる激痛。冷気に覆われた身体はしかし額に脂汗を滲ませていて。三秒前まで整っていた呼吸が荒い。頭が重く、一度俯いたら、空を見上げるだけで首の骨が折れてしまいそう。

 だけど。

 僅かな休息が、微かな希望が、それでも最低限動ける熱を灯してくれた。


「何をしているんです? そんな身体で」


 ユキノが怪訝そうに問う。


「……ッ、行くところが、ある……」


「行くところ?」


「都市外にある、クソみてえな麻薬村……お姫様に頼まれて、さっきまでそこに居たんだ……」


 ちかちかと明滅する視界。暗転するたびに切り替わる景色。

 それは季節外れの雪が降る瓦礫の山でも、雪と桜が入り混じる楽園の入り口でもない――あの集落を離れる際の一瞬の光景。


 ()()を、見てしまったから。

 だからオレは、ゆっくりと着実に。雪の重さに耐えながら。

 聖剣を呼び戻して、それを杖代わりにどうにか立ち上がる。


「今無茶をすれば、《オース・オブ・シルヴァライズ》を使わずとも、必要以上に寿命を削ることになりますよ。そんな余裕、ないでしょうに」


「……そういやユキノは、そういうの分かるんだっけ」


 女であるオレがオレであることも、ミアに内側を覗かれたことも、不死鳥の魂が凍結されていたことだって見抜いたんだ。

 多分ユキノは他人の内側、魂の状態を見透かせるんだろう。それが技術か才能かは分からないが、あの伊達眼鏡の下の黒い眼は魔眼並みってわけか。


「寿命の消費、未来の焼却というのはなんだか奇妙なんです。この私が思わず見間違いを疑うぐらい、どことは断定できないけれど、でも確かに存在している――伽藍洞(がらんどう)。水が抜けたあとのバケツを見ているような感覚。末期の不死鳥もそうでした。違いを挙げるとするなら、あなたには……再誕はない」


「…………」


「伽藍洞のほうが大きいあなたは、その時が訪れたらどういう死に方をするんでしょうね。多分、人が年月と共に老化して、衰弱して、天寿を全うするのとは違う――もっと虚しいことが起きると思うな」


 冷淡な眼差しだった。言うことを聞かない危なっかしい子供に、無知なる愚か者に、脅しをかけてでも事の重大さを教え込むような力強い言葉の使い方だった。


「自分でもバカやったってのは、少しずつ実感してきてるよ……わりぃな……」


「謝られても」


「だって、止めてくれてんだろ?」


「それでも行くのでしょう? 損な生き方をしますね。いいんですか。運命の歯車、誰かの盤上の駒として使い潰される命で」


「駒……、あぁ」


 確かに、そうかもな。オレもオレ自身にそう思うよ。

 思えばこの世界に来る前も、来てからも、ずっと誰かに言われたことをやってきた。

 大枠の中で自分なりの選択をすることはあれども、枠そのもの――聖戦も、力を持つ者の責任も、都市外への遠征も、すべて自分以外から課されたモノだった。


 もちろんそうすることを最終的に選んだのはオレだ。

 それを後悔したり、周囲、環境ってのを逆恨みすることは天地がひっくり返っても無いさ。

 そんな気持ちを抱くほど、執着もないしな。


 ただそれでも。

 今回のこれは――ちょっと違うんだ。


 ()()()()をもう一度、心臓に爪を立てるように強く、鋭く胸中から抉り出す。

 それは向こうで《ナイト・メア・アタラクト》を使うほんの少し前のことだ。

 一足先に戻ってるってオレが言って、できる限り早く帰るよとベル先生が返事をしたそのとき。

 ふと、視線を下げたらさ。



 ――傍に居たリオンが、すごく寂しそうな顔をしていたんだよ。



 でも、すぐにオレの視線に気付いたリオンは、それは仕方ないことだって自分に言い聞かせるようにきゅっと拳を握って、我慢するように口を結んで笑ってさ。

 それからまだ拙い喋り方で、いってらっしゃいって言ってくれたんだぜ?


 それはなんて、切ない気遣いなのだろう。生まれたばかりの赤子(こども)にさせていいことじゃあ、きっとないはずだ。

 だから戻りたいんだよ。この世界には仕方ないって諦めなくちゃいけないことは沢山あるけれど、でも、それだけじゃないってことも示してやりたいから。


 オレもまだ、その道の途中だけれど。

 あげたいという気持ちだけで、ないものをあげられるかは分からないけれど。

 遅すぎるかもしれない。自己満足かもしれない。余計なことで、無駄で、無意味で、間の悪い徒労に終わるだけかもしれない。それだけならまだしも、何かオレの考えつかないような致命的なマイナスを周囲に与えてしまう間違いなのかもしれない、けれど――。


 どうしても、リオンに寂しい思いをさせたくないって……思ったから。


 うん。やっぱりオレは行くよ。

 手を差し伸べた責任。置き去りにした悔い。自分には与えられなかったはずの愛情。理由なんかどれだって……なんだっていいさ。

 これはツキヨミクレハがやるべきことであるのと同時に――オレ自身が、心の底からやりたいと思ったことなんだから。


 ……だってのに。


「はは……」


 情けない話だ。

 選択はもう済んでいるのに。内側では覚悟は決まっているというのに。

 まだオレには、その不慣れな感情を言葉にして胸を張るだけの勇気が、足りないみたいで。


「そういう癖が、すっかり染みついちまってんのかもな。一生消えなかったりして……」


 本心では否定しながらも、オレはそう誤魔化した。


「バカな人」


 短い罵倒。しかし悪意を感じない声。

 それが白い夜の中によく響いた次の瞬間。

 ……臙脂色のマフラーが、ふわりと揺れた。

 すっと立ち上がり、服に付いた砂埃を払いながら近づいてくるユキノ。

 おもむろにその懐から一枚の紙切れが取り出される。


「餞別です」


「え?」


 以前と違って、爪に銀朱の塗られていない手。そのしなやかな人差し指と中指に挟まれた紙切れが、じっくり観察する暇もなく胸に張り付けられる。

 束の間、紙切れから氷の槍でも生えてきたのかと思うほどの異物感に、心臓を貫かれた。


「ッ――、――」


 外部から這入ってくる極寒と内部で警鐘を鳴らす悪寒。

 全身の血液が凍り付いたような錯覚に、呼吸が止まる。

 生存本能を刺激するほどの出来事にオレはすぐさま一歩身を引いたが、しかし同時にユキノも一歩距離を詰めてきては、胸に張り付けた紙切れをぐぐっと手のひらで押し込んでくる。


「がッ、――⁉」


「少しだけ我慢してください。簡単なものですが治癒術です」


「そ、そりゃあありがてえ、けど……に、しては……ッ――荒療治にもほどが……ねえ、か……⁉」


 実際の経験がないから百パーセント想像だけど、除細動器とか麻酔無しの手術を受けたときの感覚がこれなんじゃねえかな……死なせないために死ぬほど痛い思いをさせるみたいな……!


 せめて一言前置きしてくれたらいいものを、と自分の胸元に目をやる。

 するとそこにはいつの間にか七芒星の模様が浮かび上がっていて、確かに物理的治療ではなく魔的法則――おそらく東洋式の魔術である陰陽術――が働いていた。


「そろそろ終わります」


 言い終わるのと同時に、どこからともなく雪に似た淡い光の欠片が出現する。

 それらはぼんやりとオレの全身を包み込み、明滅して、そしてすぐに消えた。

 どうやらこれで、簡単な治癒術とやらは終わったらしい。


「――――」


 ()()は、痛みに耐えた甲斐があったと思えるほどすぐに実感できた。

 身体が軽い。痛みを訴えていた全身から嫌な熱も寒気も引いて、普段通り、聖剣の支えがなくても真っすぐに地面に立てている。


「……おぉ……すげぇ……」


 さらに準備運動がてらに何度か跳び跳ねてみて、思わず漏れ出た感嘆の声。

 さすがに失われた魔力が丸々戻ったり、大きな戦闘をこなせるほどの回復具合ではないが、それでもこれなら充分、緋光の翼を形成してあの村まで飛んでいくことができそうだ。


 少しだけいつもの調子を取り戻したオレは、ぼうっと経過観察をしているっぽいユキノに向き直って、深く頭を下げた。


「マジで助かる。ありがとな」


「……いえ、別に。私は私のやるべきことをやっただけで――ってなんです、そのフユカイな顔は」


「や……なんだかんだ、やっぱ優しいじゃんと思って」


 親切なのに不器用。壁を感じるのに接しやすい。

 前はそんな印象をユキノに抱いたが、間違いじゃなかったなと改めて思う。

 今だって別に、それほど多く接したわけではないが、こんな状況だからか。

 言動はぶっきらぼうで、物腰も寝起きの獣みたいな鋭さがあるけど……でも、その裏に隠れた優しさを、はっきりと感じ取ることができる。


「そんなんじゃありませんよ。勘違いしちゃ、ダメですからね」


 当の本人は頑なに否定してるが……まあ、そこも含めてだ。


「わぁってるよ、うん」


「……本当に分かってるのかな、この人」


 マフラーで口元を隠しながらぼやくユキノだった。

 それを横目に、オレは早速魔力を背中に集約し、緋光の翼を作り出す。

 見据えるは西の空。高くそびえる八重城と、そのずっと向こうにある集落。


「それじゃオレ、行くよ」


「はい、また。妙な状況になっていますが聖戦は続きます。いずれ私の番が来るので、その時までにもっと、育っていてくださいね」


「おう……? またな!」


 なんだか妙な言い回しに首を傾げつつも、別れの挨拶ができたことにひっそり安堵しながら、オレは地面を蹴り飛ばした。

 翼をはためかせ、雪をかき分け、風を切る。

 そうして勢いよく中央都市の空に舞い上がったオレは、しかし眼下の広がる景色に小さく息を呑んで、ほんの少し動きを止めた。


「……そっか。ここって、騎士団の本部があった場所だったんだな……」


 そして気のせいだろうか。

 今一瞬、瓦礫の影に、白黒髪の少年と亜麻色の髪の女が見えたような――。


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